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第2話 進学先での素晴らしい出会い(2)

この世界にはフラグとやらが存在している。


一例には、曲がり角でパンを咥えた女の子とぶつかる。

フラグが立つ。

その結果、学校で再開し、なんやかんやで恋に落ちる。


死地にいる際、「俺、無事に帰ったら結婚するんだ」、と宣言してしまったり、仲間を見捨てて逃げたりする。

フラグが立つ。

その結果、死ぬ。


そして、今回の僕と氷室憐のあの出来事。多分あれも、フラグが立つパターンの一つだったんだと思う。


あの後に、「何見てんのよっ、変態!」とか、「あっ、あんた!あの時の!」とかを経て、最終的に二人はくっつく。的な?


なのに氷室のあの反応、照れなど皆無、殺意オンリー。僕はどうやら、どこかで何かを間違えたらしかった。



「それじゃあ今日はこれでおしまいです。入寮者は先輩達が迎えに来てくれるから、この教室で待機していてください」


先生が教室から去り、いわゆる親睦を深めるための時間がやってきた。


ここでグループを作っておくことが、のちの生活に大きく影響するのだろう。だから、寮に入らない人も帰らずに教室にとどまっていた。


勿論僕だって例外ではない。


「どうしようかな。とりあえず僕の心の友(になる予定)の江口君のところに…」


同じ中学の人がクラスにいる連中はうまくやっているようだけど、知り合いがいない人はこの状況にかなり戸惑っている。


僕は江口君はどうなっているかと目を向けてみた。


「ねえ、君すごい可愛いね。この後遊びに行かない?二人っきりでさ」

「あの、ちょっと…」

「いいじゃん、君もまんざらでもないでしょ」

「いや…私は」


……ナンパしていた。なんかもう、うん、期待通りの奴だよな。彼。


ともあれ、今は声をかけるべきではないだろうし、放っておく。


(どうしよう。他の男子に声をかけようか)


見渡してみると、いつの間にかみんな誰かと一緒にいた。


氷室さんは?ハッと後ろを振り返ってみる。いない。帰っちゃった?


僕もどこかに混ざらないと孤立しちゃう。そう考えて少し焦っていると、


ちょんちょん


誰かが僕の左肩を突いた。


「ん?」

「やあやあ目覚めし男よ。僕と契約して、友達になってくれない?」


小柄な背丈に中性的な顔立ち、ニコッと笑いながら話しかけてきてくれた彼は、何という名前だったか。


「目覚めし男って、僕のこといってる?」

「そう!君のあだ名をつけてみた。どう?かっこいい!?」

「どうって、普通にダサいと思うけど」

「ダサい!?そんな…何の躊躇いも無く…」

「ああ、ごめん」


(目覚めし男って…目覚まし時計のくだりから考えたのか?)


「はぁ、ダサいかぁ、ちょっとぐらい気を使ってくれてもいいのに。まったくもう」

「申し訳ない…えっと、君の名前は?」

「ふぇ?ああ、直接は名乗ってなかったね。僕の名前は竜崎りゅうざきめ…わわっ!」

「ようっ、陽本君、さっきはナイスな挨拶だったね」

「重っ…あっ、江口君」

「おう、名前覚えてくれてんのか、嬉しいぜ」


竜崎君の自己紹介に乱入してきたのは、さっきまでナンパ中だった江口君だった。


頬が腫れている。拒否られた結果か。


「むぅ〜」

「うん?どうした竜崎君」

「陽本君は、僕の名前は知らなかったのに江口君の名前は覚えてたんだ。へぇ〜」

「えっと、竜崎君?」

「これからは竜崎って呼んで」

「えっ?」

「竜崎だよ、わかった?陽本」

「はい!んじゃさ、俺の事も江口って呼び捨てにしてくれていいぜ!なっ、陽本」


拒否権はなかった。まあ、別に嫌ってわけじゃないし、断る気も無いんだけれど。


ともかく、友達が二人できたって事で、良いんだよな?


「わかった。よろしく、竜崎、江口」

「おうよ」

「なんでこいつも呼び捨てなんだよ。ぶつぶつ」


竜崎が何かを呟いていたけど、ともあれこれで一安心。僕の学園生活は明るいぞ。


それから少し雑談を交えたところで、時間となった。


ガラッ

「おら新入りども!寮に向かうぞこらっ!」

「近藤、うるさい」


一組の男女が教室に入ってきた。男子寮の人と女子寮の人でそれぞれ案内するって事なのかな。


「いいか!俺はオメェらの先輩である二年の近藤こんどうだ!」

「同じく、二年の中澤なかざわよ」

「俺達はオメェら四組の担当となった!こいつは甘ちゃんだがな、俺が世話する男どもは覚悟しやがれよ!」

「こいつは口うるさいだけで害は無いわ。ビビらなくていいから」

「あんだとコラ!」


筋肉質な近藤先輩に、彼の恫喝にまったく動じない中澤先輩。


「ったく、そんじゃあついてこい!寮に入らない奴はさっさと帰れ!」


寮は、男子寮女子寮がそれぞれ学年別で三棟づつ存在している。僕らの一年男子寮は、名を『つづら荘』と言うらしい。


「よく聞け!こっからは男子エリアと女子エリアで別れる!このフェンスを見ろ、この境界線を越えれば退学も待ったなしだ!わかったな!わかったら男どもは俺に続け!」

「うへぇー、これじゃ夜中に侵入するのはやめておいて方がいいな」

「侵入する気だったのか江口」

「江口はいつか捕まるね」


ちなみに、江口も竜崎も寮を選択していた。


「それじゃあ行こうか」

「うん。じゃあまた明日、陽本。あと江口」


男達が近藤先輩について行く。僕らも行こうと僕は言ったつもりだった。けれど、竜崎がその場に突っ立ったまま動こうとしない。


「えっ?竜崎も寮なんだよな?」

「そだよ」

「なら…」

「んー?僕は竜崎りゅうざき女々(めめ)って名前で、一応女子なんだよ。こんな制服着てるけどさ。あっ、そうか、陽本は気づかなかったのか。へっへー、騙されてやんの」


………


「へ?……おい、江口。竜崎が変なことを言ってるぞ」

「うーん、どこかに待ち合わせする事にすれば…いけるか!?」


(だめだ、聞いてない!)


「ほら、早く行かないと。それじゃあね」

「あっ、ちょっ…」


高校生活での初めての友達、竜崎改め竜崎女々、彼女はどうやら男ではなく女だったらしく、その、なんだろう…全然飲み込めなかった。

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