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後閑、抹茶をぶちまけた

 日常話題です。

 抹茶話題は3話の予定ですが、ふと抹茶菓子もあると思ったりしつつ……4話まであるかもしれません。

 なお、キャラクターの名前「橘根」は「きつね」、「後閑」は「こうもり」と読みます。

 よろしくお願いします。

 とある地域に、女二人が住む家がある。

 別に女性二人がシェアハウスしているだけなんだから珍しくもなんともない。

 この地域、各駅停車は止まる駅まで歩いて十分くらい、利便性高い。ちょっと丘になっているせいか、意外と面倒という話もある。上り坂という面倒。

 でも、結構よい住宅地。

 そんなところに一軒家があり、庭もあり優雅に暮らしている謎の女性二人。

 話題になるかならないか。

 結構前から住んでいるし、意外と話題にならない。普通にご近所さんで終わり。問題を起こすわけではないからね。


 さて、住人の詳細を記載すると――。

 一人は家主、後閑。小柄でちょっとぽっちゃり型。

 そして、ちょっとわがままだけど物分かりがいい娘。意外と御しやすいという説もなくはないが、わがまま部分で疲弊すると関係は終わる。

 もう一人は、エコと茶と雑学を愛する、器用貧乏な娘・橘根。

 背丈は後閑よりあるけど中肉中背。ハイネックにロングスカートが好みという露出は低い。庭にハーブ植えて、試行錯誤する娘。


 暦の上では春を超え、新年度を迎えたある日。

 橘根はいつものように外出し、普通に帰宅した。

 一応、おやつ用に草餅を買ってはいる。

 草餅――それは年中食べられるらしいが、一番春が美味しい気がするおやつ。


 草というがヨモギと餅をまぜ、あんこを入れる物体。

 あんこは基本粒。

 が、橘根は老舗の店員さんから聞いた話で驚愕する。

「最近の若い人はこしじゃないと食べられないというのよ」

 なんですとおお、と橘根は驚天動地したことがある。

 橘根はどっちでも食べられる。

 後閑もなんだかんだ言ってあんこ食べる。

 二人の中での問題は程よい甘さか激甘かということだろうか?

 だから、その「粒あん嫌い」という理由がさっぱりわからなかった。

 おいしいのに、何をわがままな! 上品ぶって! 庶民の食べ物よ! とまで橘根は思ったり思わなかったり。


 でもまあ、その粒あんこしあん問題をあるとき橘根も体験する。

 小豆の出来が悪かったのか、よく通う甘味処屋が材料の高騰についていけなかったのか、たまたま失敗したのか知らないが、粒あんにある、小豆の餡の皮がすごく口に残ったのだ。

 これが嫌いな人にはたまらず嫌ななんだろうなぁと、なんとなく思った。

 でも、甘味処やは人がいっぱいだ。

 ……もう一つ思ったのが「話題性」かということ、かな。おいしいまずいとともに。

 その時、橘根はその甘味屋で「茶がまずい」と思っていたのだった。ただ、係の人が下手だったのかもって思ったけど、足が自然と遠のいた。

 甘味屋でレモン風水も結構えぐいと橘根は思う。


 粒あんこしあん騒動……和菓子だけでなくいろんなお菓子がある。

 お菓子というとダサいか――スイーツと言えばいいのか。

 スイーツがかっこいいかはわきに置く。スイーツはスイーツであってデザートはデザートだし、菓子は菓子だ。


 さて、だんだん地の文が何を言い始めたのかわからなくなってきているため、話は戻ろう。


 草餅が売れなくなったと嘆いた和菓子屋は偉いのだ。

 若い人にも、こしあん大好きな人にも来てもらいたいと、粒あんだけでなくこしあんの草餅を作ったのだった。

 その上、今までなかったような和菓子も作り出していた。おいしいのだ! 橘根はワクワクして底を覗く、懐に余裕があれば、買う。


 そう、企業努力。

 すごいなぁ……。

 橘根は考える。

 が、今日のおやつは別のお店の草餅だ。

 そのお店はお店でなかなかすごいのだ。


 草餅の旬はない!


 なんだって、と橘根は驚いた。

 春ではないのかと。

 そのお店が言うには、春は春の、冬は冬のおいしさがあるというのだ。

 なんということだ! と橘根は思ったのだが、それが判断できるほどその草餅を食べていない。

 おいしいものはおいしいで終わった。


 で草餅付きで帰宅した橘根が、台所で見たのはあちこちに散らばる緑の点々だった。

「後閑……さん、何をやらかしてくださったのですか?」

 すごく丁寧かつ腹が立っていることがわかる口調で橘根はソファーに伏せて狸寝入り娘に声をかける。


「あたしはねています」

「いや、寝てないでしょ!」

 橘根がびしりという。

 さすがに後閑は起き上がる。

「抹茶がいけないのよ! 大体、何、跳ぶの? それに、混ざらないし! 大体、苦いよ!」

 抹茶に八つ当たりを始めた。


 橘根が見ると、台所に缶がある。

 それは、お手軽、何でもそろうスーパーで販売している有機栽培抹茶だった。最近、抹茶撤退しているということもあるため、どこのスーパーかなとまで橘根は考え始めた。

「……えとさ、どうして冒険したの?」

「有機、よ? 有機なのよ!」

「いや、うん……全国区のメーカーのさ、抹茶にすればよかったんじゃない?」

 後閑が茶道をやっているとか、橘根が茶道をやっているとか……というわけではない。

 それでもスーパーに行って「抹茶気になる」となると、まず目につくのが、わからないなら大手メーカーのものを手にするのではないだろうか?

 いきなり有機抹茶や個人の店のなどハードル高いような気がする。

 橘根が考えるだけか?

 後閑の返答を待つ。

「有機なら、体にいいでしょ! 抹茶、体にいいんでしょ! なら、もっと体にいいじゃない!」

 橘根はひとまず黙った。

 黙った後、目をそらした。

 台付近を用意し、散らばっている抹茶たちを拭き始めた。


 橘根はここで一つ気づいた。

「茶筅持ってるの?」

「泡立て器で十分でしょ!」

 橘根は頭を抱えた。

「卵とかのこれね」

 流しの盥の中の水に浮かぶ撹拌機の道具をとる。

「そうよ!」

 力強い後閑の返答。

「無理」

「は?」

「抹茶、泡だて器だとかなりハードル高い……私からすると」

「なんでよ! 大体、何でも混ざるでしょ」

 橘根はどこから説明したものかと考える。橘根も茶道はしていない。していないが、抹茶は飲むときは飲む。

「ちょっと待ってね」

 橘根は片づけを先にした。

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