表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逢魔ヶ刻高校のちょっとオカしな七不思議  作者: 越谷さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/243

【039不思議】夏が始まる

 七月、太陽はこれ見よがしにカンカンと照りつけ、最高気温は三十度を優に超えていた。

 逢魔ヶ刻高校の体育館には全校生徒が密集しており、ただ立っているだけなのに汗が湧き出てくる。

 ステージには逢魔ヶ刻高校校長が立ち、朗らかな笑顔で口をマイクに近付けた。

『えぇ、いよいよ! 明日から皆さん心待ちにしていた夏休みが始まります。

 高校生、特に受験生である三年生の皆さんは、各教科課題は出ていると思いますが、夏休みだからと自分に甘えず、一日一日を大切に勉学に励んでください。

 しかし、夏休みというのは学生の特権。

 大人になってしまえば、夏休みなど早々お目見えできるものではありません。

 そんな夏休みを皆さん、大人になった時にふと思い出せるような素敵な思い出に出来るよう楽しんでください。

 かくいう私もですね、高校時代、夏休みに宿題もほったらかして旧友とよく遊びに行きました。

 私が学生だった時代は、今みたいに学生が遊べるような施設はありませんでしたが、川で水浴びをしたり、山で冒険したり、時には広場でドロケーなんかもしましたねぇ。

 特にドロケーは楽しかったです。

 旧友と日が暮れるまでひたすら追いかけあって、息をする間も無いくらいに夢中になってやっていました。

 流石に疲れて水を飲みに行こうとしても、「どこ行くんだよ」と肩を掴まれ、ドロケーを続行しました。

 その数時間後、私は脱水症状で倒れ、病院に搬送されました。

 ……皆さん、一生にあと数えきれる程しかない夏休み、十二分に楽しんでくれても構いません。

 ただし、どれだけ楽しんでいても、水分補給だけは忘れないでいただきたい。

 こんな炎天下では、人は簡単に熱暴走をしてしまいます。

 そうならない為に、たとえ喉が渇いていなかったとしても、こまめに水分を補給してください。

 この真夏という季節の中で、水分というのはとても大切な意味を持ちます。

 今でこそ欲しい時に簡単に摂取する事が出来ますが、私が学生だった時代には自動販売機など無かったので、水一つ手に入れるのに大変苦労しました。

 そう、あれは蝉がやけに五月蠅かった夏の昼下がり――』

 ――長ぇ――――――――!

 校長の話を黙って聞く生徒全員がそう思っているとも知らぬまま、校長は楽しそうに話を続ける。

 そんな蒸し暑い灼熱地獄の中、とうとう夏休みが幕を開いたのだった。


●○●○●○●


「長ぇよ!」

 終業式が終了し、各自解散したのちに集結していたオカルト研究部部室では、博士が溜まりに溜まったストレスをそこで吐き散らしていた。

「何で七百字も校長の話に費やしてんだよ! 大して中身詰まってなかったろ! 何であんな蒸し暑い中でつまんねぇ話聞かなきゃいけねぇんだよ! 校長が学生時代にドロケーに夢中になって脱水症状起こした話なんざ興味無ぇよ!」

「聞いてたんだ」

「読者も飛ばしてただろうに」

 怒れる博士とは裏腹に、西園と乃良はあの話を真面に聞いていたという事に少し感心していた。

 そんな博士にいつもよりどこか真面目な表情をした多々羅が口を開く。

「いや、校長の話はちゃんと心に留めておくべきだぜ」

「あ?」

 突然話に入ってきた多々羅に、博士は若干八つ当たり気味に言葉を返す。

「校長の言う通りに気をつけろって事だよ」

「何だ? こまめに水分補給しろとでも言いてぇのか?」

「そういう事だ。なんせ……」

 多々羅はそこで言葉を区切ると、口を大きく開き、ドンと構えた姿勢で自信満々に大声を上げた。

「校長を脱水症状にさせた旧友っていうのは、俺の事だからな!」

「犯人アンタかよ! そりゃ気を付けなきゃなんねぇわ!」

 思わぬ自白に、博士は思わず顎が外れるような勢いで口を開けた。

 二人のやり取りに、乃良は小さく「そういえばタタラ先輩と校長って友達なんでしたっけ?」と西園に確認している。

 まだ感情の抑えられていない様子の博士を置いて、多々羅が高らかに声を上げた。

「よっしゃー! そんじゃあ夏休みだし! 遊ぼうぜー!」

「年がら年中遊んでるだろ!」

 盛り上がる多々羅に水を差す様に、博士が頭を抱えた。

「大体! アンタ達受験生でしょ!? 何夏休み遊ぶ気満々なんですか!」

「だって俺受験しないし」

「アンタがよくても他の先輩達は違うでしょ!」

「私も斎藤君も今のとこ合格圏内だから、下手な事でも起こらなければ大丈夫だよ。毎日勉強もやってるし。ね、斎藤君?」

「うっ、うん……」

 西園にそこまで言われてしまうと、博士も何も言い返せなくなる。

 博士が口を閉じていると、その隙をついたように乃良が多々羅に話の続きを促した。

「それで! 何して遊ぶんですか!?」

「へへっ、よくぞ聞いてくれた!」

 多々羅は待ってましたと言わんばかりに鼻を鳴らし、そのゲームの名を口にした。

「しりとりだ!」

「子供か」

 そう零さずにはいられなかった。

 呆れ顔の博士に、多々羅が口の端を不気味に吊り上げる。

「勿論、ただのしりとりじゃないぜ? 今までにない、全く新しいしりとりだ。その名も……」

 多々羅はそう溜めて、溜めて溜めて、右手を掲げた。

「夏に関する言葉しりとりだ!」

「斬新!」

「よくあるだろ」

 昔ながらの古典的なゲームに、博士の期待が膨らむ事は無かった。

「んだテメェ! だったら自信あるんだろうなぁ!? ほれ! 『炎天下』の『か』からだ! おいハカセ! 言ってみろよ!」

「あぁ? なんで俺が」

 博士は不満そうに眉を顰めながらも、腕を組んで考えていく。

 答えは思ったより早く見つかった。

「『課題』」

「ちょっと待てやおらぁ!」

 開始早々ストップをかけざるを得ない言葉に、多々羅が急停止をかけた。

「何が課題だ! 夏に関する言葉だって言ってんだろ! お前の趣味嗜好持ってきてんじゃねぇよ!」

「あ? 夏といえば課題、学生の本分だろうが」

「そんな夏嫌だよ!」

 とは言いつつも、多々羅も心の中では納得してしまい、多々羅は次の相手を指名する。

「はい次! 優介!」

「えぇー僕?」

 斎藤は困ったような顔をしながらも、『い』から始まる夏を連想していく。

「い、い、……『磯』?」

 絞り出した斎藤の答えに、多々羅と博士は冷たい反応だった。

「……んー、何だかな」

「悪くはないんだけど……、磯って」

「海とかにしろよ」

「しりとりなんだから仕方ないでしょ!?」

 二人の辛辣な批評を何とか払いのけようとするも、斎藤の精神的ダメージは大きかった。

 次に口を開いたのは西園である。

「じゃあ次は『そ』ね」

 西園は自分から積極的に立候補すると、目を閉じて続く言葉を考える。

「……『空高く』」

「「「はぁ!?」」」

 理解しがたい言葉に、一同は思わず声を揃えて顔を歪ませた。

「何言ってんだお前!?」

「これしりとりっすよ!? 何文節で終わってんすか!」

「『ヒグラシの声 こだまする 君を探した あの白昼夢』」

「短歌!?」

 どこまでも自由な西園に、三人は食らいつくのに精一杯だった。

 当の本人の西園は、何でもないような微笑みで慌てる三人を楽しそうに眺めている。

「だーもういい! 次乃良! 『む』からな!」

「あれ良いんだ!?」

 やけくそになった多々羅は、半分投げやりに乃良を指差した。

 指名された乃良は、頭上に『む』から始まる言葉を浮かばせている。

「む……あっ、『麦わら帽子』とかどうっすか?」

 その答えに、一同は静まり返る。

「あれ……、ダメ?」

 上手く表情の読めない一同に、乃良が不安そうに顔色を窺う。

 すると見えたのは、一同の歓喜の表情だった。

「素晴らしい!」

「えっ?」

「うん! とっても夏らしいよ!」

「今年のベストオブサマーはお前のもんだ! 乃良!」

「えっ、えぇ!? そうっすかー?」

 巻き起こる賞賛の嵐に、乃良の鼻も段々高くなっていった。

 煽てられたまま、乃良は次の相手にバトンを渡す。

「ほらちひろん! 次『し』だよ!」

「『死ねばいいのに』」

「えぇ!?」

 突然の末恐ろしい単語に、乃良は全身の毛が一気に逆立つのを感じた。

 千尋の声には感情が無く、完全に闇落ちしているように見える。

 明らかに何かあったであろうその姿に、博士は顔を歪ませながら話しかけた。

「どうしたんだよ、お前」

「……楽しそうだね、皆」

「別に楽しくはねぇけど」

「私は明日から補習で、夏合宿にも行けないっていうのに皆は楽しそうでいいね!」

 どうやら何かというのは、補習の件だそうだ。

 かなり心が荒んだ千尋の目には涙すら見え、最早博士も何も言えなくなる。

「いいよ。私は花子ちゃんと一緒に仲良く補習受けてるから。私達『補習ズ』の事は気にしないで楽しんできなよ! バカ!」

「何だそのユニット」

 いつの間にか相方にされていた花子は、よく意味が解っていないようで茫然としていた。

 そんな荒れ狂う千尋に、斎藤は不思議そうに声をかける。

「え? 石神さんも合宿いけるよ?」

「「え?」」

 斎藤の思わぬ発言に、千尋だけでなく博士も反応して声を漏らしてしまった。

「でも斎藤先輩。私赤点取っちゃって……」

「うん。だから、補習は行かないといけないけど、終わった後でなら別に合流できるから、合宿に参加できない訳じゃないよ」

「?」

 いまいち話が噛み合わず、千尋は混乱状態に陥ってしまう。

 それを見かねた博士が、頭を掻き毟りながら代わって話を進めていった。

「つまり、合宿所が学校から近いから、補習が終わってから合宿所に行けるって事ですか?」

「え? ……あぁ、そんな感じ」

 少し曖昧な肯定ではあったが、千尋も段々と話の全貌を呑み込めてきたようで、少しずつ顔色を明るくさせていく。

「じゃ、じゃあ、私と花子ちゃんも合宿に参加できるって事ですか?」

「さっきからそう言ってんだろ」

 博士の答えに千尋は体を震わせ、それを解き放つかのように大きく万歳した。

「やったー! 合宿行けるー! 花子ちゃんやったよ! 私達合宿行けるって!」

 千尋はそう言って花子の手を掴み、ブンブンと腕を振った。

 振り回される花子の腕だったが、当の本人の表情が変わる様子は無く、完全な無表情である。

 千尋の興奮はそれでは収まらず、冷め切らないうちにと声を上げる。

「こうしちゃいられない! 外行こ! 外行って体動かそ!」

「はぁ? 嫌だよ。大体外行って何すんだよ」

「分かんない! 取り敢えずなんかして体動かしたい!」

「わんぱくか!」

「あっ! んじゃあドロケーするか!?」

「あんたそれ脱水症状にさせる気満々だろ!」

「バドミントンなんてどうですか!? 私こう見えて中学時代バドミントン部だったんですよ!」

「へぇそうだったんだ! いいじゃん! やろやろ!」

「そもそも道具なんて無ぇだろ」

「取り敢えずラケット四つと羽根二つでいいか?」

「あんのかよ! 本当なんでもあるなこの部室!」

「よし! それじゃあ皆さん、中庭に向かってしゅっぱーつ!」

 そう言った千尋の声を合図に、部員達はゾロゾロと中庭へと流れ込んでいった。

 最後まで部室に残っていた博士は面倒臭そうに顔を引きつっていたが、諦めたように溜息を吐くと、部屋の電気を消して部室を後にした。

 その後、部員達は中庭で和気藹々とバドミントンを楽しんだ。

 勿論、脱水症状にならないように、人数分のペットボトルを用意して。

いやなんか……、すみませんでした。

ここまで読んで下さり有難うございます! 越谷さんです!


今回は待望の夏休み!の前の箸休め回でした。

しかし、箸休めにも程がありましたねww

いつもは話を書く際は何かしらのテーマを決めて書くのですが、今回は全く決めてませんでした。

作成当初はもっと薄い内容でしたが、投稿直前に内容を変更して多少は話に色が付いたかなと思います。

これからはこんな事が無いように努めますので、今回のところはこのあたりでご勘弁ください。


しかしやはり自分で納得が出来ず、投稿から一年以上経った今、内容を大幅変更しました。

自分の満足の行く作品が作りたいんです、本当に申し訳ありません。


さて、ぐっだぐだの今回でしたが、次回から夏休み!

そして夏合宿です!

よかったら次回からの夏合宿編もよろしくお願いします! 本当にすみませんでした!


それでは最後にもう一度、ここまで読んで下さり有難うございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ