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【028不思議】修LOVE&PEACE

「零野さん……?」

 オレンジ色の夕日が差し込み、優しく揺れるカーテンがまるで踊っている様に見える教室。

 カーテンの靡く音しかしないそこで、花子と真鍋は目を合わせていた。

 しかし、二人は気付かなかった。

 教室を出てすぐの廊下、そこに観客がいるという事を。

「なんか心配でついてきちまったけど」

 窓からこっそりと二人を覗く博士はそう呟くと、隣にいる相手達に二人にばれないよう声を潜めて叫んだ。

「なんでアンタ達もついてきてんだよ!」

「だって気になるじゃねーかー」

 そう答えた多々羅を先頭に、そこには部員達が行列になって集まっていた。

「花子ちゃん、どうするんだろー!」

「あっ! あれが真鍋さんか!」

「まぁ俺は別に興味無いんだけど」

「じゃあ来なくていいだろ! わざわざここで本読むな!」

「まぁまぁ、今はそんな事より花子だろ?」

 どこまでも自由な部員達に文句を放つ博士だったが、多々羅の言葉に溜息一つ吐くと、それ以上口を挟むのを止めて教室の方へと目を向けた。

 博士達には全く気付いていないようで、こちらとは違う独特の時間の流れを感じた。

「……真鍋さん」

 花子はそう言って真鍋の顔を見つめる。

 顔を凝視してくる花子に真鍋は返事をする事が出来ず、ただ見つめ返している。

「……だよね?」

「えっ!? ……あぁ、うん」

 ーー自信無かったのかよ!

 今更ながらに名前を確認する花子に、博士はツッコみたくなったが何とか呑み込んだ。

 真鍋も驚いているようだったが、今度は真鍋から話を切り出す。

「どうしたの?」

 そう訊かれるが、花子はぼーっと見つめるだけである。

 初めて会った時からずっとこんな調子の為、真鍋も花子のマイペースな話のテンポには慣れていた。

 真鍋は特に表情を変える事なく、花子の返事を待つ。

「……ハカセの事」

「え?」

「ハカセの事、好きなの?」

 ーー直球ドストライクきたぁぁぁぁ!

 花子の必殺技とも言えるど真ん中の剛速球に、部員達は予測できない教室の景色に釘付けになる。

「……ハカセって箒屋君の事だよね?」

「……多分」

 ーーそこは自信持てよ!

 真鍋の質問にも曖昧に返す花子に、博士は心の中で声が枯れそうな程に叫んでいた。

 そんな本人をおいて、他の観客は実に盛り上がっている。

「さぁ! ここでどうなる!」

「花子ちゃんライバル登場で修羅場になっちゃうのか!」

「解説の百舌さんどう思いますか?」

「ちょっと今良いとこなんで邪魔しないでください」

「お前ら黙れ! んな大声出すとバレるだろうが!」

「いやお前も大概声デカいぞ!?」

 盛り上がる観客席の博士の心配だったが、二人がそれに気付く事は無く、その心配は杞憂に終わる。

 全員が待ち望む真鍋の答えだったが、真鍋はあっさりとその答えを口にした。

「ううん、別に好きでもなんでもないよ?」

「「「「「「「!」」」」」」」

 あまりにも簡単に出てきた答えに、博士達の騒いでいた声は止み、一斉に真鍋に注目する。

「勉強が出来るのは純粋に憧れるし、教えてもらってくうちに、あっ意外と優しいんだって思ったけど」

 急に流暢に喋り出した真鍋はそう言うと、最後に花子に向かって笑いかけた。

「恋人として好きかどうかって訊かれると……、無いかな」

 そのあまりにも優しい笑顔に、その場にいた全員の心になんだか不思議な感情が芽生えた。

 教室には沈黙が訪れ、その沈黙が廊下の部員達にも感染していく。

 そんな中で口を開いたのは、博士の肩に手をポンと置いた多々羅だった。

「大丈夫、良い事あるって」

「いや別に落ち込んでねぇけど」

 博士の温度の低い声は花子の耳に届いておらず、花子は真鍋の言った言葉を心に受け止める。

「……そっか」

 窓からの夕日のせいなのか、花子の顔色がさっきよりも明るくなっているように感じた。

「ありがと。……じゃあね」

 そう言って花子は真鍋の前をするりと抜け、教室を出ようとした。

「あっ、待って!」

「?」

 急に真鍋に呼び止められ、花子も博士達も真鍋へと目を向ける。

 椅子から立ち上がっていた真鍋は、さっきと同じ優しい笑顔を見せた。


「零野さんは、箒屋君の事が好きなんだね」


「「「「「「「!?」」」」」」」

 どういう言葉の真意か読み取れなかった部員達はザワザワとざわつきだした。

「どっ、どういう事?」

「さっぱり解んない」

「花子は一体なんて返すんだ?」

「こいつぁ目が離せなくなってきましたねー」

「………」

 その中で一人、博士だけが口も開かず、ただじっと花子の事を見つめていた。

 不自然にざわめく廊下に花子が気付く筈もなく、花子はハッキリとその答えを口にする。

「うん」

 花子の迷いなき答えに、ざわめいていた部員達の声は静まった。

 そんな事も知らず、花子は淡々と言葉を並べていく。

「ハカセは、何でかよく解んないけど私の事嫌いで」

「え?」

「いつも怒ってて、たまに無視されて、ハカセが楽しそうにしてるとこ一回も見た事ないけど」

 次々と発せられる花子の言葉に、真鍋は少しずつ顔を歪ませていく。

 博士を除いた部員達も苦笑いを浮かべており、その表情はもれなく全員引きつっていた。

「……でも」

 花子はそう前置くと、息する間もなく話を続けていった。

「どんな時も構ってくれて、優しくしてくれて、私が困ってたら助けてくれる」

 そこまで言うと、花子は息を吸い込んで力強く言葉を吐いた。


「そんなハカセが、大好き」


 その言葉に放心状態になっていた真鍋も段々といつもの表情が戻っていき、ニコッと笑顔を作る。

「箒屋君、優しいもんね」

「うん」

 そんな二人の会話に、廊下に居座る観客達も微笑ましいとばかりに笑顔を浮かべていた。

 ただ一人を除いて。

「……ハカセ、あんな事言われてますけど」

「五月蝿ぇ!」

 博士はそう言って真っ赤っかになった顔を俯かせて隠した。

 可愛らしい態度を見せる博士に、部員達はすぐさま朗らかな笑顔から粘つきのある笑顔に様変わりさせた。

 そんな部員達の表情の事情を知らず、真鍋は花子に話しかける。

「それじゃあ帰ろっか」

「うん」

「「「「「「「!」」」」」」」

 花子と真鍋が普通に会話をして教室を出ようとする中、博士達は緊急事態に陥った。

 ここからどうやって二人にバレずに脱出するかである。

「どうすんだよ! このままだったら見つかっちまうぞ!」

「脱出の事全く考えてなかった!」

「どうすんだよハカセ! 何とかしろよ!」

「知るか! お前らが勝手についてきたんだろうが! 俺は一人でヒッソリと隠れるつもりだったんだよ!」

「どうする!? 小銭探してたって事にする!?」

「小学生か!」

「野良猫探してたって事にする!?」

「ここ学校だぞ!?」

「あれ、箒屋君?」

「「「「「「「!」」」」」」」

 緊急会議をしていたせいで背後にまで近寄っていた足音に気付かず、会議はもれなく強制終了される。

 博士がゆっくり首を後ろに向けると、そこには案の定真鍋と花子がいた。

「ハカセ、皆も」

「どうしてここにいるの?」

「いやーそれはそのぅ……、野良猫探してて……」

「ここ学校だよ?」

「うん、そうだな」

 咄嗟に出た言い訳も真鍋の一言でバッサリと切られ、最早会議は無意味という結果に終わってしまう。

 明らかにたじろいでいる部員達の様子に、真鍋は何となく察したのか部員達に柔らかい笑顔を向けた。

「それじゃあ、箒屋君達も一緒に帰ろ」

「……あぁ、うん」

 博士の返事はどことなくぎこちなかったが、そう言うとのろりと立ち上がった。

 他の部員達も一斉に立ち上がり、真鍋、花子と一緒に廊下を歩き出す。

「……あっ、鞄部室だわ」

「あっ、俺も」

「あっ、私も」

「んじゃ部室で少しのんびりするか」

「真鍋さんもどう? いっぱいお菓子あるよ」

「良いんですか?」

「勿論」

「ハカセ、野良猫探さなくていいの?」

「お前はもう忘れろ!」

 そんな会話を弾ませながら、一同はオカルト研究部の部室へと向かっていった。

 窓からの夕日は未だ差し込み続け、廊下を歩く影を伸ばしていた。

修羅場かと思ったら、ただのノロケ話でした。

ここまで読んで下さり有難うございます! 越谷さんです!


という事で花子ちゃんが妬きもちする話が書きたいだけ編完結です!

まぁ、単なるノロケ話になっちゃったんですけどねww

この二人を三角関係にする気はなく、これからもこんな感じのゆるーいラブコメにしていきたいと思ってます。

真鍋さんは三つ編みメガネという点で気に入ってるのですがww

もしかしたら花子ちゃんの友達ポジションで出るかもなので、その時はよろしくお願いします!


話は変わるのですが、実はこの回、うちのPCが破損し、急遽スマホで打ち直す事になりました。

今までで最短の話というのが不幸中の幸いでしたが、かかった時間は一時間越え……。

二度としたくない! 早くPC買ってくれぇぇぇ!ww


それでは最後にもう一度、ここまで読んで下さり有難うございました!

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