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【111不思議】くる年

 グループトーク・マガ高オカルト研究部

『あけましておめでとうございます!』

『おー! 明けたな! おめでと!』

『明けましておめでとー、今年もよろしくね』

『今年もよろしくお願いします!』

『あけおめことよろっす!』

『明けましておめでと、今年もよろしくって私達は卒業しちゃうけどね』

『そんな寂しい事言わないでくださいよー!』

『あけましておめでと、今年もよろしく』

『皆さん! 明日一緒に初詣行きませんか!?』

『もう今日だけど!』

『いいな! 初詣行こうぜ!』

『斎藤先輩と西園先輩もどうですか!?』

『うん、元日はゆっくり休もうと思ってたし、大丈夫だよ』

『やったー!』

『どこの神社行くの?』

『私ん家の近く!』

『いやちひろん家の場所知らないんだけどw』

『初詣?』

『場所はあとでURL張っときます!』

『時間は朝の十時ぐらいで!』

『俺は行かねぇからな』

『じゃあ神社の前集合でー!』


●○●○●○●


 街全体にひんやりとした空気が漂う。

 初日の出をとっくに迎えた元日の神社は、たくさんの人で埋め尽くされていた。

 一年最初の日はみんな家でゆっくりと過ごすものだと思っていたが、やはり初詣は欠かせない行事らしい。

 面倒そうに白い息を吐いた博士も、神社の前へと足を運んだ。

「あっ! ハカセー!」

 こちらに気付いた千尋が、年始早々元気に手を振る。

 どうやら千尋の家に近いという神社は、ここで間違いないそうだ。

「明けましておめでと! 今年もよろしくね!」

 すぐ傍にまで来ると、千尋は正月に浮かれた声で挨拶した。

 日付を跨いでから眠りにつくのに慣れていない博士にとって、朝から千尋のテンションは大分きつい。

「明けましておめでと」

「何その顔! よろしくするの嫌なの!?」

 耳障りそうに顔を顰めた博士に、千尋が頬を膨らます。

 今年初めての初喧嘩を披露する二人に、斎藤が苦笑いを浮かべた。

 他に見える影はエレガントなコートを羽織った西園と、年始から本に夢中な百舌。

「……明けましておめでとうございます」

「うん、おめでと」

「今年もよろしくね」

 先輩達は博士の一瞥に、朗らかに笑ってくれた。

「ちょっと! 何で先輩達にはちゃんと挨拶するのに私にはしないの!?」

 それを見ていた千尋は、どこか不服そうだ。

「何でって、ちゃんと挨拶しただろ」

「あんなの建前じゃん! もっとちゃんと気持ち込めて!」

「朝からそんなはしゃがれたら気持ちなんて込めれねぇっつーの。別に先輩達にも気持ち込めてねぇよ」

「込めてないの!?」

 衝撃の告白に、斎藤は思わず割って入ってしまう。

 続いて今まで笑って静観していた西園が、腕時計を気にして口を開いた。

「それにしても遅いね」

「ほんとだ!」

 我に返って、千尋もスマホで時計を確認した。

 約束の時間になってもまだ姿を現さないのは、花子、乃良、多々羅。

「何してんだ、オカルト組が」

 苛立ちをたっぷり込めて博士が呟くと、どこからか声がした。

「おーい!」

 噂をすれば何とやら、というヤツである。

 遠くから聞こえてきた声に目を向けると、案の定そこにはオカルト組が勢揃いしていた。

「明けましておめでたらぶれぇい!」

 乃良の能天気な挨拶を粉々に砕く様に、顔面に博士の拳が飛び込んできた。

 為す術もなく乃良は地面に倒れ、年始早々痙攣している。

「こここ今年もよろしく……」

「あぁ、よろしく」

 博士は昨日の鬱憤が晴らせたようで、乃良を見下していた。

「ちょっ、ちょっとハカセ君!?」

 今年初めての初パンチを見届けた斎藤が、今更ながら慌てて仲裁に入る。

「どうしたの年始早々殴ったりして!」

「すみません、どうしてもこいつに一発入れなきゃならない理由がありまして」

「何があったの!?」

「イライラしました」

「それどうしてもなの!?」

 細かい理由を述べるのも面倒臭くて、博士はそれ以上耳を貸さなかった。

 未だ地面に野垂れる乃良を放って、千尋が花子に抱き着く。

「花子ちゃん久し振りー! 明けましておめでと! 今年もよろしくね!」

「……あけましておめでと、今年もよろしく」

 千尋のハイテンションな挨拶とは正反対な、囁くような挨拶で花子が返す。

 後ろで「明けましておめでとー! 今年もよろしくなー!」と多々羅が精一杯アピールしていたが、それには目もくれない。

 ふと花子が博士に目を向ける。

 丁度博士も花子を見ていて、二人の視線がぶつかった。

「………」

「……よぉ」

 特に反応する事も無く、二人を独特な空気が包む。

「ちょっとハカセ! 花子ちゃんに新年の挨拶しなさいよ!」

「いいよ別に。もう済んだし」

「?」

 博士の放った言葉の意味が分からず、千尋は首を傾げた。

 後ろで「おーい! 俺にも挨拶しろー!」と多々羅が挫けずアピールしていたが、誰も反応してはくれなかった。

 すると千尋が、疑問なんて吹っ飛ばして、思い出したように手を鳴らす。

「そうだ!」

 千尋はごそごそと鞄の中を漁り出した。

 何を取り出すのかと注目していると、千尋が取り出したのは数枚のハガキだった。

「はい! 花子ちゃん! 明けましておめでと! 年賀状ちゃんと全員分ありますから!」

「お前年賀状の使い方知ってんのか」

 手で渡した方が手っ取り早いという千尋の言い分だったが、じゃあいらないだろと博士は次に言った。


●○●○●○●


 千尋から貰った年賀状は懐に忍ばせ、全員揃った事でようやく一同は鳥居をくぐった。

 どこかしこにも人の姿が見える。

 歩くのも窮屈な程ではないが、それでも本堂の前には長蛇の列が出来ていた。

「いやー、並んでますねー」

「もうちょっと空いてから並ぶ?」

「そうしましょ!」

 という事で一行は、列が長蛇でなくなってから並ぶ事にした。

「あっ、あそこお守り売ってる!」

 乃良が指差した方に目を向けると、確かにお守りを販売する巫女の姿が見える。

「お守りかー。斎藤君、合格祈願のお守り、お互いに買わない?」

「えっ!?」

「何か自分で買ったのより、人から貰った方がご利益ありそうでしょ?」

「あー……うん、そうだね」

 斎藤と西園はそんな会話を織り交ぜて、乃良と千尋、多々羅が駆けていったお守り売り場へと向かう。

 売り場には数多の種類のお守りがあった。

 流石八百万の神がいるこの国である。

「えーっと、合格祈願はと……」

「あったぞ優介!」

 お目当ての商品を探していると、先に多々羅が見つけてこちらに差し出してきた。

「あぁ、ありがと多々羅」

 よく見ると、お守りには『安産祈願』と記されていた。

「いや何で!?」

 お守りに代わりないが、斎藤は神をも畏れぬ態度でツッコむ。

「合格祈願探してたんだけど! 何で安産祈願!? この八百万のお守りの中で一番意味無いよ!」

「あっ、斎藤君あったよ。これ買いましょ」

 三年生のそんなじゃれ合いを、博士は淡々と眺めていた。

 ふと隣に目を向けると、花子が興味深そうにお守りを凝視している。

「……ハカセ、これは?」

「お守り、これ持ってると神様が助けてくれるんだよ」

 博士の解説が伝わったのか、花子はもう一度お守りに目を落とす。

 すると一つのお守りに手を伸ばした。

 書いてあったご利益は『健康祈願』である。

「いやお前それ必要ねぇからな」

 幽霊が健康を祈るとは、何とも笑えるジョークである。

 花子がお守りを元の位置に戻すのを確認しながら、博士は溜息を零した。

「まぁ、何買ったところで、所詮神なんていねぇんだけどな」

「はぁ!?」

 突然飛び込んできた巨大な声に、思わず博士は体を反る。

 巫女も驚いたような大声の正体である千尋は、博士に指を突き差す。

「アンタ、神様も信じてないの!?」

「当たり前だろ。神なんている筈ない」

「じゃあ神社に何しに来たの!」

「お前に呼ばれたんだよ。そもそも神社っていう場所自体俺は好きじゃねぇんだよ」

 毎年初詣に行くには行くが、それは家族の付き添いだ。

 自分から進んで行ったのは、もうかれこれ純粋無垢な小学生の頃くらいである。

 やはりオカルトの敵である博士に、千尋は唇をキュッと噛んだ。

「いい!? 神様がいなかったら何も無いの! 私達が生きてるのも! 美味しいご飯が食べれるのも! この星でさえ! 神様がいるから回ってるの! 神様がいなかったらこの世界だって無いんだよ!? それなのに、神なんていないだってぇ!? 呼び捨てにしてる事さえおこがましい! せめてさん付けしなさい!」

「いやさん付けの方がおかしいだろ。嫁か」

 千尋は相当腹が立ったようで、怒りで息が荒くなっていた。

「もう知らない! 花子ちゃん! 一緒に甘酒飲みに行こ!」

「甘酒?」

 さっぱり意味の分かってない花子を引いて、千尋は早足に行ってしまった。

 堂々と参道を歩く二人に、博士が背中めがけて声を飛ばす。


「おーい! 参道の真ん中は神の通り道だから歩くんじゃねぇぞー!」


「神様いないんじゃないの!?」

 先程の論争とは百八十度返した事を綽々と口にした博士に、思わず斎藤が声を出してしまった。

「えっ、だって常識でしょ?」

「えー……」

 当然の様に答える博士に、言い返す言葉が無くなる。

 ――僕、もうハカセ君の考えてる事が分かんないよ……。

 今年に入っても、博士のオカルトに対する考え方が変わる事は無さそうだ。

明けましたおめでとうございます!

ここまで読んで下さり有難うございます! 越谷さんです!


年も明けた事だし、今回はみんなで初詣回になりました!

これも随分前から何となーくは考えていた話ですね。

最初のグループラインの辺りとかは、ずーっと前から考えてました。


しかし最初の部分以外は、特にこれといって描いていたシーンはありませんでした。

その為『神社 礼儀』などでネタを検索しました。

たまにネタを求めてググったりするのですが、普通にタメになりますよね。

僕も初詣は家族と行く派ですが、思いっきり参道の真ん中を通ってる気がしますww

知識としては知ってるんですが……、ちゃんとしよww


さて、みんなと初詣編ですが、次回に続きます!

それでは最後にもう一度、ここまで読んで下さり有難うございました!

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