1 不思議な格好をした女の子。門番編(2周年記念)
本編くまクマ熊ベアーの二周年記念として、書かせてもらいました。
3話投稿します。
よろしくお願いします。
俺の仕事は街の警備をすることだ。
仕事は交代制になっており、街の見回り、街の入り口の見張り、駐屯所での住人のトラブルなどが主な仕事だ。
今日は街の入り口の仕事だ。主に、犯罪者が入って来ないようにするのが仕事になる。と言っても、街に入る者や出て行く者のギルドカード、市民カードを水晶板にかざしたときに、水晶板が赤くなるのを確認するだけの仕事だ。
水晶板が赤くなるのは、犯罪者登録されている者になる。でも、赤くなることなんてほとんどない。ハッキリって一番暇な仕事だ
そんな暇な仕事でも、仕事はしっかりしないといけない。
「嬢ちゃん、街の外に行くのか?」
10歳ぐらいの女の子が1人で街の外に行くので注意だけはしておく。
近くの森は冒険者たちが魔物狩りを常にしているので比較的安全だ。でも、奥に行けば魔物もいる
「うん、ちょっと薬草を採りに」
「安全でも森の奥には行くんじゃないぞ」
「うん」
女の子は小さなリュックを背負って、街をでていく。
女の子が出て行ってから、数人が街に入っただけで、誰も街に入る者もいなく、出て行く者もいない。暇な時間ができあがる。
街の外を見ていると、なにか、黒い物が歩いてくる。
あれはなんだ?
その黒い物の隣には小さい女の子が歩いている。あれは少し前に出て行った女の子だ。
その女の子が変な格好した者と一緒に、こちらにやってくる。徐々に黒い格好が何かと理解できた。
クマ?
黒い正体はクマの格好をしている女の子だった。なぜ、そんな格好を?
とりあえず、小さい女の子の方に声をかける。
「薬草は見つかったかい?」
「はい」
少し心配だったが、無事に薬草が見つかったようだ。
そして、クマの格好をしていてる女の子に、そのクマの格好について尋ねる。すると、恥ずかしそうに聞かないで欲しいって頼まれる。
まあ、怪しい格好だけど、危険は感じられない。話したくないなら、犯罪者でなければ無理に聞くこともできない。とりあえず、身分証の提示をお願いする。犯罪者どうかは水晶板が判断してくれる。
でも、市民カードもギルドカードも持っていないようなので、魔力反応で調べる。
まあ、登録されていなければ、無反応になる。
予想通り、反応はなかったので、街の中に通す。
とりあえず、隊長に報告だけはしておくか。
そして、数日後、街の門にクマのお嬢ちゃんがやってきた。でも、よく見ると可愛らしい格好だ。なんと言うか、見ていると心が安らぐような感じを与えてくれる。
クマのお嬢ちゃんにどこに行くか尋ねると街の外に行くそうだ。ギルドカードを見ると無事に冒険者になったみたいだ。
とりあえず、気をつけるように言って見送る。
クマの嬢ちゃんの後ろ姿を見ていると、クマの尻尾が左右に揺れている。精密に作られているみたいだ。
しばらく、仕事をしているが、クマの嬢ちゃんが帰って来ない。
街の入口は東西南北に4ヶ所あるが、行き先によっては戻る入口が異なることもある。でも、少し不安になる。でも、そんな俺の心配をよそに、クマの嬢ちゃんは無事に戻ってきた。俺は戻って来たクマの嬢ちゃんの頭を撫でてしまう。
するとクマの嬢ちゃんには怒られてしまった。女の子の扱いは難しいぜ。
今日は駐屯所で仕事をしている。
駐屯所にいるとクマの噂を聞くようになった。
なんでも、冒険者ギルドに来た当日、他の冒険者に絡まれて、戦うことになったそうだ。その話を聞いた瞬間、心臓が早くなった。なんで、そんなことになる?
「それで、どうなったんだ?」
話をしてきた同僚に尋ねる。
すると、思っていない言葉が帰ってきた。
話を聞くと10人ほどの冒険者相手に戦ったそうだ。でも、全員倒したそうだ。
信じられない話だったけど、怪我をした冒険者がいるって話は広まっている。
とても、そんなに強そうには見えなかったんだけどな。
その後のクマの嬢ちゃんの情報が入ってくるが、どれも信じられないことばかりだ。
ゴブリンを100体倒したとか、ゴブリンキングを倒したとか、オークを倒したとか、さらにタイガーウルフまで倒した話が流れてくる。どれも信じられないことだったが、冒険者ギルドと繋がりがある警備兵には正確な情報が流れてくる。でも、どれも疑いたくなる話ばかりだ。
そして、なによりも信じられなかったのが、クマの家が建った話だ。
クマの家ってなんだ?
「そんなのクマの形をしているに決まっているだろう。おまえも見に行けばわかる」
同僚にそう言われたので、街の見回りの仕事のときにクマの家を見に行く。
結論から言おう、クマだった。どっからみてもクマだった。
ただ、怖いクマではなく、なんと言うか、可愛らしいクマの家だった。
話を聞いたときは禍々しいクマの家かと思ったら、あのクマのお嬢ちゃんがイメージ出来る可愛らしい家だった。
本当にあのクマの嬢ちゃんには驚かせられることばかりだ。