空を夢見るマットと少女
―これは―
―マットレスのマットレスによる―
―マットレスの活躍を描いたマットレスストーリー―
~第一話 マットレスは空の夢を見るか~
ここは、マットレスが人類以上の発展を遂げつつも人類との共存が上手く行った世界。「マッほくろトレス」という世界だ。マットレスの偉大な力に恐れず共存を英断した人間を称え、元々は「マットレス」という世界名に「ほくろ」を加えることでマットレス側も共存すると答えた。
そんな世界で一枚のマットレスは言った。
「空、飛びてぇなあ…」
そのマットレスの名は木綿という。まだ生まれて一か月も経ってない、世間知らずのマットレスである彼が「空を飛びたい」などという狂言を口走ったのには理由が有る。
木綿の家はよくある、人間と同じ家に住む方式を取っている。代々その人間の家族とは使い使われという関係だが、別段仲も悪くないのだ。
そういう家庭事情だから、勿論木綿と仲良しの人間が居る。彼女の名は小坂晴美5歳、それが木綿の友達であった。彼女は年相応に絵本が好きだ。その中でも一番好きだというのが、空飛ぶ絨毯の絵本である。毎日、彼女は言うのだ。
『いつか、きわたといっしょにお空にいきたい!ううん、いくんだ!!』
『俺と一緒に?絨毯の野郎が俺を乗せるとは思えないんだが…』
『たまにはなかよくしてあげなよ!とにかく、お空をじゆうにきわたと飛びたいんだよ!!!』
『あーハイハイ。いつになるか分かんねぇぞ?』
『それでもいいよ。いつまでもまってるからね!』
いつもそう言い終わると、ちょっと照れたような顔をして晴美は空を見る。いつか本当に行ってやると言わんばかりに…
「いつかじゃなくて、出来るならすぐに空に連れていってやりたいんだがなぁ…」
そう、マットレスが空を飛ぶということは出来ない話ではない。現に大人になったマットレスは自由に空を飛び回っている。ただ、大人になるまで10年はかかるのだ。10年というと晴美が15歳、高校一年生だ。今は空に行きたいなんて素直に言ってくれるが、その歳になると人間の女性は気難しくなる。心の中では俺と空に行きたいと思ってくれていても、晴美の周りの人間がそれを良しとしない者ばかりになれば…
そう考えると、せめて小学校を卒業するまでには空に連れていってやりたい。
「やっぱり伝説のマットレスを探すしかないか、幸いこの町に居るって話だしな。」
伝説のマットレスは生まれながらにして飛べた…わけではないが、生まれて半年で空を飛べるようになった。生きた伝説である。かのマットレスは、「独自の特訓方法」を編み出して飛べるようになったのだ。当然他のマットレス達は特訓方法の公開を、強く求めたが
「君たちでは耐えることは勿論、下手すれば命を落とす。それでも良いのかい?」
他のマットレス達が真っ青になるほどの無表情で言い放った彼は、その後姿をくらませることとなった。
最後に目撃されたのはこの町だと言われている。なら、彼がむやみに動いて噂されるようなヘマはしないはずだ。
そう考えた木綿は、颯爽と家から町へと飛び出した…