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01

 失敗と成功は表裏一体である。


 数時間前、わたしは公園で弟と一緒にブランコで遊んでいた。

 背中を押して、スゴイ勢いを付けるヤツだ。


 その最中に、猫の声がしてよそ見をした結果、ブランコのカドが頭にガン! と直撃したのだ。

 何処かの少年が「だせぇ~!」と爆笑する声と、泣け叫ぶ弟の声を聞きながら意識を落としたのを覚えている。


 で。

 ブランコに衝撃を与えられた結果蘇ったのが、前世の記憶。

 走馬燈のように流れるそれは、サークルの飲み会に参加した帰り道でプッツリと途切れ――――


 ――今世のわたしの人生(ものがたり)へと繋がる。

 前世の”私”がオタク趣味を嗜んでいたため、『転生』という状況を混乱することなく冷静に受け入れることができたのは僥倖だ。


 テンションが上がりすぎて「やっぱり、小学生転生は最高だぜ!」とか叫びはしたが。

 なんせ、わたしこと、紅楳深紅(こうばい しんく)はお金持ちだ。カネの力で無双できるレベルのお金持ちだ。

 大切なコトなので何度でも言わせて貰う。お金持ちなのだ。

 イケメンの婚約者はいるし、親友もいるし、両親は優しいし恵まれている。


 何より恵まれているのは容姿だ。

 小学5年生現在には不釣り合いで、成長をすることを確約されたおっぱいに、愛嬌がある顔。

 成長したら、男性の理想的な”近所のお姉さん”風の女性となるだろう。

 前世で胸がないことはコンプレックスだったので、巨乳仕様なのは実に嬉しい。

 思わず揉んでしまう。こう、もみもみと。


 もう、テンション爆上げだった。「フヒヒ」と怪しい笑いが口から漏れてしまっていたし、興奮して鼻血も出た。

 大人知識で、学校の授業も楽になる! そう思ったけど、英才教育を施されている今現在のほうが英語や一般教養など、ジャンルによって前世よりも知識を累積している気がする。

 前世の”私”とは何だったのか、しっかり勉強しろよ大学生!


 ともかく、大人知識があるというのはそれだけでチート。

 生憎、今の時代は”私”の生きていた頃よりも未来――2041年であるために、前世の経験で知り得た特許などで大儲けしたりとか、そういったことはできない。

 小市民らしく、机に向かって勉強する時間は減らす程度に……ささやかに活用させて貰おう。


 あとは、今世の趣味である裁縫で、昔のアニメキャラのコスプレを作ったり。

 婚約者に王子様風のコーデを着せたい。

 弟は童顔なので、恥ずかしがるのを無理矢理女装させたい!


 それと、『お医者さんごっこ』もしないとなぁ。

 合法的にショタの肉体を隅々まで診察するチャンスだ。ち○ことか。


 止めどなく溢れる欲望。

 まるで悪魔に魅入られたようだ。ヤバイ。


 純粋無垢な数時間前のわたしは、大切に育てられた箱入りのお嬢様だった。

 それが、前世の趣味を覗いたことにより……人間の暗黒面を知り、淑女(へんたい)へと染まってしまった。


「わたし、退院したらBL本を入手しにメイトまで行くん――――」

「深紅ちゃん!」


 ガタン。と、扉を開けて可愛い女の子が入って来た。

 慌てているようで汗をかいて、呼吸が荒い。「はぁはぁ」している。

 白いシャツを着ている為に乳首まで若干透けているじゃないか。いかん、いかんぞ。我が親友。

 そんな無警戒では大きな狼に狙われてしまうぞ。


 急いで来てくれたのはすっごい嬉しいけど……

 思わず顔がニヤけてしまう。


「心配かけたね、蒼葉(あおば)。わたしなら大丈夫よ」

「ホントだよ。私、吃驚(びっくり)して心臓が止まると思った!」


 彼女は蒼咲蒼葉(あおざき あおば)

 わたしの幼稚園時代からの親友で、――――って。




 やばい。名前に既視感がある。

 激やばい。心臓がバクバクいってきた。


 蒼咲蒼葉、彼女は、前世で”私”がサークルの仲間と作成していた同人ゲームの主人公である。

 同姓同名の別人かと一瞬考えたが、それもない。


 彼女の周囲の環境と、本人が兼ね備えた要素がゲームと類似しすぎている。

 両親がゲーム会社を経営している、無警戒小動物系、左利き、可愛い、そしてなにより――――


 蒼葉には、霊感というオカルト要素が備わっている。

 現実(リアル)に存在しない、”私”の住んでいた日本とが違うと自覚させる要素。


 この合致する符合から導き出されることはひとつ。

 わたしが転生したのは『妖怪憑きと王子様』の世界。


 所謂、乙女ゲーの世界のようだ。




 わたし――――紅楳深紅はどのルートに分岐しても死亡確定なんですけど!

 過程や相手はともあれ、レ○プされてから死亡して未練から怨霊(おんりょう)になるのは既定路線です。本当にありがとうございました。


「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」

「どうしたの、深紅ちゃん、しっかり! しっかりして! 深紅ちゃん!」


 蒼葉が私の肩を揺する。

 だめだめ、出てる鼻血が飛び散ってる。

 頭がぐらぐらして、視界に星が見える。


 あはは、こりゃぁ駄目だわ。人生オワタ。

┌(┌^o^)┐「次は、BLゲームの世界に傍観者として転生したいなぁ」

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