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転生魔王の出戻り日本グルメ  作者: 生姜寧也


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18/25

17:レバニラ炒め

 今日はブレイナーくんが呼んでいるということで、エネルギー貯蔵施設を訪れていた。彼の居る水槽へ挨拶すると、大層驚かれた。なんでも「時間がある時に来てくれれば」という話だったらしく、まさか即日来るとは思わなかったらしい。


「申し訳ありません。本来、魔王様をお呼び立てするなど。しかも、こんなに早く来ていただけるなんて……重ねて恐縮です」


「気にしないで良いよ。キミ、移動できないからね。そして俺……暇だからさ」


 戦時は忙しかったんだけどねえ、メチャクチャ。けどそれが終わるとさ。まあ軍の総帥が暇なのは、平和を取り戻した証でもあるから喜ぶべきか。


「それで、一体どうしたの? また麻婆豆腐が食べたくなった?」


「ああ、いえ。まだ辛い水分が残っていますので、チビチビ味わっております」


 まだあの時の麻婆が溶け込んだ分、残ってるんだ。人間の感覚からすると、そんなの食って大丈夫なのかと心配になるけど、まあ魔族だからな。


「今回は私事ではなく……スカルマンA」


 呼びつけたのは骸骨に白衣を着た低級魔族。ガランド率いるアンデッド軍団の末端だろう。

 彼(?)が持ってきた紙を受け取る。どうも消費フィアー量が羅列されてるみたいだけど……使用者の名前は全部ダンジョン内勤務者か。


「これはオールドファミリアのダンジョン内勤者か?」


「そうです。よく名前まで覚えてらっしゃいますね」


 それは当然だろう。オールドファミリア。代々の魔王に仕え、俺という異端の魔王からも離れなかった忠義者。こういう面子は、なるべく覚えておくべきだ。義理人情の面から言っても、組織運営の面から言っても。


「それで……ええっと」


「名前の欄に赤線を引いている者が居ると思うのですが、その者の消費量を見てください」


「ああ、これか。ザコーイ。確かファストルア低級ダンジョンで中ボスをやってる男だな」


「はい。ケンタウロス族ですが、一族の中ではちょっと……」


 雑魚い感じか。ザコーイだもんな。

 彼の欄をよくよく見ると、討伐されて復活する際の、いわゆる「蘇生コスト」が高すぎる。何度も死んでいるということだ。


「オールドファミリアは全員、定額死に放題プランに加入していますので彼本人の負担にはなっていませんが」


 ニューファミリア、つまり最初は俺につかずにいたものの、戦況がこちら有利になった後に傘下に入った連中は加入できない制度だ。彼らはヘマで死んだら、自己負担で蘇生してもらってる。

 要するに忠臣優遇のシステムだな。


「とはいえ……今月だけで810回死んでますからね」


 逝きすぎィ!

 連戦連敗の域だ。


「……流石にそこまで弱くはなかっただろう?」


 最初からその体たらくなら、そもそも中ボスは任せてないハズだ。もはやスライムとかゴブリンとかのコモン雑兵に近いレベルだし。


「先月末を境に急激に弱くなってますね。それまで被討伐率は10%程度だったのですが」


「何かあったのかねえ」


「召喚して事情を聞きたいのですが……ダンジョンを止める許可と、代役の手配が……」


 それくらいならガランドの裁量でも良いハズだけど。というのが顔に出ていたのか、ブレイナーくんは申し訳なさそうに、


「出来れば、その……僕を救ってくださった時のように、ルイ様に」


 なるほど。日本に連れて行くことも視野に入れてという話か。


「やはり不遜でしょうか? けどザコーイも僕も格的には大した違いはありません。僕をあの聖域に連れて行って大丈夫だったなら」


「いやいや。それほど大層なモンじゃないよ、日本は」


 ていうか魔王が聖域ってのも、なんかアレだ。


「……まあとにかく。話を聞いてからのことだな」


 飯で解決できる問題なのかすら分からないし。ていうか過大評価されても、日本の飯は魔法じゃないんだよな。


「それで……ザコーイに招聘をかけたら、どれくらいで来るの?」


「3日くらいでしょうか」


「そんなにかかるの?」


「ゲート魔法なんて超上級魔法、ザコーイは扱えませんから」


 まあそれもそうか。となると、ダンジョンから歩きで来るワケだ。ケンタウロスだし走るかも知れないけど。

 本当は俺が迎えに行ったら一瞬なんだけど、ダメなんだよな。中の下くらいのランクの魔族を、魔王自ら迎えに行くなんて。別に驕り高ぶってるワケじゃなくて、面子というのが非常に大事な立場だからな。同様の理由で、ガランドに迎えに行かせるのもアウトかなあ。


「仕方ない。ザコーイに魔鳩を飛ばそう。そして代役が到着するまでの間は、当該ダンジョンは臨時休業とする」


 魔王としての決定だ。

 まあもしかしたら、ダンジョンを休業にしなくても、代役がすぐに見つかれば入れ替わりで、そのまま稼働できるかもだけど。


「ありがとうございます。ルイ様」


「うん。ブレイナーくんは引き続きよろしくね」


「はい」


 そうして施設を出ると、俺は城へと戻った。

 ガランドを訪ねて、相談する。彼も当然ブレイナーくんから報告は受けているので、魔鳩の手筈は整えてくれていた。


「代役ノ方は……いかがイたしましょウ」


「そうだねえ」


「ウチの部隊かラ、誰か見繕イましょうカ?」


「いやあ。出来れば似た系統の方が良いかな。中級以下の冒険者が多い街だし、アンデッドの倒し方は心得てないだろう」


 それも数日のことなら良いんだけど、ザコーイのスランプ(?)の原因が分からないからな。もし長期の代役となっても務められそうなヤツ。


「とナると、ドクターに頼むのガ良さそうデス」


 最後の四天王、ドクター・モロ。モンスター生成における比類なき天才。本人も強いけど、彼が作り出すモンスターはガチで強い。しかも弱いモンスターも作れる。なんでも作れる。なので今回の状況に応じた個体もオーダーメイドすることが出来るだろう。

 ただ自分の作業を邪魔されるのを極端に嫌うので、いきなり行っても俺ですら追い返される可能性がある。


「ワタクシが、下交渉をシておきましょウ」


「悪いな。頼むよ」

 

 ガランドとモロは比較的仲が良いんだよな。ガランドは彼の()()にも寛容だからな。


「それじゃあ俺は栄養補給でも行ってくるかな」


「パンを、何カ良さげなパンを、お願いしたク」


「ああ、うん。それくらいお安い御用だ」


 甘い菓子パンにハマってるからな、彼は。ただホーリー成分が入ってないか事前チェックは必要となるが、それくらいの手間はなんてことも無い。


 俺は自室へと戻り、昼時を待って日本へと旅立った。

 ビジネス街に降り立つと、なんだか周囲の人たちの表情が明るいことに気付く。なんだろう。クリスマスというイベントも終わったし……ああ、そうか。仕事納めだ。場所柄ホワイトカラーが多いから、暦通り、つまり明日から長期休暇。もちろん例外は居るだろうけど、大多数がそんな感じなんだろう。


「良いなあ」


 俺はむしろ明日から色々と面倒くさいことになりそうなんだよな。まあ普段は逆(俺が自由人で、彼らが仕事中の昼休憩)だから、あまり身勝手なことは言えないけど。

 ただ街が浮足立ってる中で飯食うのは少しダルいのも事実。クリスマスの時は、とびきりの美少女(美少年かも)と一緒だったから、そんな疎外感は無かったけど。


 まあなんにせよ、彼らは今日は年来最後のランチということで割と奮発した所に行くような気がするから……俺は真逆の選択肢だな。

 プラプラと歩き出す。12時前には店に入っておきたいところだけど……


「お」


 いつぞや行列で断念した中華チェーン店『餃子の王朝』がガラ空きだ。どうもバズり期間は終わったらしい。

 ササッと店内へ入った。カウンターには俺と同じようなショボクレオジサンが沢山居た。きっと明日も仕事組だろう。満席なので、2人掛けのテーブル席を使わせてもらう。

 席に着いて、メニューをパラパラと捲る。何か目を引くのは無いかな……と。


「レバニラかあ」


 良いね。ちょうど明日からのことを考えたら力つく飯が欲しかったし。

 ……なんか毎回、変な魔族と会う時はこんな感じだな。気兼ねなく会えるのはガランドぐらいか。

 まあとにかく。注文は決まったので、ベルを押す。すぐにアルバイト店員がやってきたので、レバニラ定食を頼んだ。

 待つこと5~6分ほど。


「……お待たせしました。レバニラ定食です」


 来た来た。店員がお盆をテーブルに置いてくれる。

 中華スープに、レバニラ、ご飯。シンプルな構成、こういうので良いんだよな。

 割り箸を取って、まずは中華スープを軽く掻き混ぜてから飲む。『佐竹飯店』より少し辛めかな。溶き卵がフンワリと喉を通っていく。

 続いてはメイン。レバーとニラを同時にいただく。


「うん」


 美味い。

 レバーは臭みがほとんどなく、噛めば滋味が溢れ出す。醤油ベースのニンニクダレは、甘辛く、沢山の食材の味が複雑に絡み合っている。酒やコチュジャン、生姜、鶏ガラ。絶妙なバランスだ。

 ニラはシャキシャキの歯応えを残しつつ、しかし青臭くない。グニュッとしたレバーと合わせて噛むと、良いアクセントとして機能してくれる。


 細切りニンジンとモヤシもいただく。やはりタレがよく染みている表面。だけど噛むとニンジンは本来の甘みも滲み出し、モヤシは水分を吐き出して瑞々しい喉越しを与えてくれる。


 皿として全体の調和がバッチリ取れている。単純な料理だからこそ、過不足なく仕上げられるのは、料理人の腕が良い証拠か。

 カウンターのアクリル板越しに、中華鍋を振るう店長らしきオッサンを見やる。非常に手際が良い。今また、ノールックで後ろのカゴから野菜を適量取って鍋に放り込んだ。

 ランチ激戦区で生き残るために、他の店舗より美味いという噂。その一端を垣間見たような気がする。


「いらっしゃいませー。3名様ですね。テーブル席どうぞ」


 おっと。余所見してる場合じゃないな。12時を回って客がどんどん入って来てる。バズりブーストが無くなっても、仕事納めの日だろうと、堅実な客入りがある様子だ。味がシッカリしてれば、一過性のモンに振り回されないんだよな。チェーンなのに街中華の雄『佐竹飯店』と同じような地盤の硬さを感じるわ。


 黙々と食べて席を立つ。会計は780円。安いなあ。スタンプカードも貰ってしまったけど、貯めれるほどは来ないだろうな。

 外に出た。行列は出来てないけど、待ちは3人ほど。

 すれ違って、今度はパン屋を目指す。


 そこでもОLたちが沢山並んでて、連れ合い同士、明日からの長期休みについてキャイキャイ話していた。ここのパンを明日リベイクして朝ご飯にするんだそうだ。

 そんな楽しそうな会話を尻目に、淡々とクリームパンを買って魔界へと戻った。ガランドはキチンと仕事をして、明日のアポイントをゲットしてくれてたのは良いんだけど。


「見返リを要求されまシたので、日本の話をシてしまいまシた」


 とのことで。

 サーシャクラスの問題児である、あのドクターを日本に連れて行かなくてはならなくなった。

 仕事納め後のビジネス街で、特級難物のお守りかあ。明日が来なければ良いのになあ。

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