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二人の戦士 中編

 剣を倒して構えたシャイン・ガイザーへサオロスは足を交互に繰り出し、二人の魔人は互いに間合いへ入る。縁に厚い盾がサオロスの感情を覆い隠し、太陽を覆う雲が晴れシャイン・ガイザーの面へ光が差し込んだ。サオロスはその時を待ち受けていたように猛然と魔剣が盾を滑る。繰り出される銀の切っ先が青い残光を残しシャイン・ガイザーの目玉へ目掛け飛び出した。シャイン・ガイザーは腰をひねりその一撃へ刀身を強く打ちつけ後方へ打ち流した。流し崩されたサオロスの剣を持つ手首へ、シャイン・ガイザーは胴を正面へ引き戻しつつ黒鉄色の刀身を振り下ろすが、構えられた盾が灰色の肩当てへ叩きつけられる。肩当てが千切れ飛んだシャイン・ガイザーは後方へよろけ、手首への一撃は銀の魔剣へ叩きつけられた。弾かれた魔剣はサオロスの背へ打ち流されるが、彼は銀の魔剣を唸らせシャイン・ガイザーの首を狙い切り上げる。シャイン・ガイザーは緩慢なサオロスの盾を蹴りつけたが、蹴りは盾で容易く受け止められ、サオロスは盾の縁でシャイン・ガイザーの胸を打ち陥没させる。シャイン・ガイザーの背は砂利をまき散らし地面へ叩きつけられた。サオロスは盾を素早く胴鎧の前へ引き戻しその縁へ銀の魔剣を滑らせる。油断なく構えるサオロスは切っ先を下げ、前のめりに姿勢を変えた。横たわるシャイン・ガイザーの砕けた鎧からは鍵が覗き、崩壊した鎧の破片が土に汚れ塵になる。シャイン・ガイザーは砂に汚れた身体を軋ませ立ちあがる。鎧の隙間から砂利がこぼれ落ち、石が打ち合い乾いた音を立てる。黒鉄色の切っ先がサオロスへ向けられる。


 シャイン・ガイザーの持つ黒鉄色の魔剣が輝き始め、サオロスは盾を引き銀の魔剣をやや前方に倒し正面へ向けた。シャイン・ガイザーは輝く魔剣を振り上げ、後ろ足で地面を蹴り飛ばし、満身の力を腕から剣先へ巡らせてサオロスの脳天へ振り下ろした。跳ね飛ばされる土が靖弥の臍へかかり、彼は思わずよろめく。サオロスを両断する一撃は彼の持つ魔剣によってけたたましい音を立てて受け止められるが、シャイン・ガイザーの輝く刃は蛇のようにうねり魔剣コントラ・ブレードの優美なガードを避けてサオロスの小指を刎ね、その輝きを失った。反撃とばかりにシャイン・ガイザーの頭部目がけて振り下ろされた銀の一閃は、彼がサオロスの盾に詰め寄ったため、彼の兜を掠め左腕を肩口から切断した。シャイン・ガイザーは落ちる腕をものともせず剣を盾に突き立てた。剣は再び輝き、縁の厚い丸盾と腕を貫き昆虫標本のようにサオロスの胸へ突き立つと内部の鍵を破壊する。貫抜かれたサオロスの盾腕が痙攣し、五指がばらばらに芋虫のように蠢く。シャイン・ガイザーは光を失った黒鉄色剣を藻掻く魔人の胸から捻り抜いた。片腕を失ったシャイン・ガイザーは力が抜け、踏ん張りが効かず仰向けに土を跳ね上げて倒れる。一方、穴の空いた盾は音を立てて転がり、風化するようにばらばらに割れ、えぐられたサオロスの胸からはヒビが広がり、その鋭利な傷口は腐植するように丸くなると徐々に塵となってこぼれ落ちる。サオロスは苦しげに胸を掻くと魔剣を取り落とし、膝を折るとうつ伏せに倒れ伏し砂利に顔面を埋めた。


 魔界では七人の魔人が鏡の間に集まり、シャイン・ガイザーとサオロスの戦いを見守っていた。倒れる二人を見たヴァザーゴは小手を確認するアルトラリスへ語りかけた。

「駿足のアルトラリスよ、間もなく道が開ける、道の前へ出るのだ。あの一撃で魔剣士サオロスの鍵が壊れていれば満月を浴びたところで禄に回復など出来ない。急げよ。」

頷くアルトラリスを尻目にファオウルは鏡に見入っており、ザラガスがその背へ悦を含んだ声をかけた。

「シャイン・ガイザーの剣はどうやらサオロスを超えていたようだな。」

「正気かザラガス。お前は何故サオロスを憎んでいる。」

ファオウルは苛立ちザラガスに振り返った。槍の石突きは地面へ突き立てられザラガスは腕を組み、鏡を見上げている。

「憎んではいない。あれ程優れた武具を身に纏い死にかけのシャイン・ガイザーに殺されかけるアホウに呆れているだけだ。」

苛立ちを吐き捨てるザラガスは黄金色の鎧を煌めかせて身じろぎをする。ザラガスの言はファオウルを不愉快にさせた。ザラガスは具足を鳴らしファオウルを追い抜かすと、鏡向かい言葉を続ける。

「お前はどのように感じた。何故サオロスは胸に穴を開けて横たわり土に濡れている。鏡を見続けていたお前に説明が出来るか!」

ザラガスの怒鳴り声に地が割れ、つき立つ彼の槍が倒れる。沈黙を保っている魔人達がザラガスへ一斉に目をやる。アルトラリスの側に立っていたヴァザーゴはザラガスへ歩み寄るがファオウルの言葉に足を止める。

「サオロスはシャイン・ガイザーの余力を見誤っていたのだ。だが、ザラガスよ、サオロスは負けてない。」

ファオウルは鏡を指差すとサウロスは起き上がり剣を拾い上げていた。覚束無い足取りで猛獣の上顎犬歯のように魔剣を逆手に持ち、未だ倒れるシャイン・ガイザーへ近づく。


 靖弥は倒れるシャイン・ガイザーへ近づくサオロスを見つめることしか出来なかった。立ち竦む彼の足は言うことを聞かず、喉が張り付いたように緊張のあまり声一つ発することが出来なかった。それでも何か出来ないかとキョロキョロ動く彼の目は月明かりに照らされたサオロスの影、それから南の空へ向けられた。

靖弥の目は魔界の怪しい光が月の表面を撫でその光が一面を覆いつつある光景を捉えると、彼は気がついたら声を張り上げていた。

「シャイン・ガイザー!君が勝った!」

サオロスは突然大声を出した靖弥を睨みつけると、彼は恐怖で叫んだ口を開けたまま固まった。これを好機とシャイン・ガイザーは飛び起きサオロスへ横凪に剣を振るう。黒い刀身をサオロスはよろめきながらも受け止め、シャイン・ガイザーの胸奥の鍵を狙い、突きを放つ。繰り出される青い残光をシャイン・ガイザーは跳ね飛ばす。サオロスは全身から光を噴き出し、肘と腰を軋ませて狂ったように突きを繰り出し続ける。執拗な突きへシャイン・ガイザーは受け流し切れなくなり、遂には剣の腹で刺突を受け止めざるを得なくなる。刺突の衝撃がシャイン・ガイザーの身体を軋ませ鎧の表面が剥離し、所々の裂傷から塵が漏れ出す。このままではサオロスの刺突がシャイン・ガイザーの鍵を貫く前に彼は力尽きるだろう。


 だが、耐えるシャイン・ガイザーに力が溢れ出す。色を失った鎧が再び白磁の輝きを取り戻し、魔剣を握る白い小手がサオロスの刺突を押し返し始めた。魔界のエネルギーが月を通し街へ降り注いだのだ。更に月から一本の光が街へ降り、降下したアルトラリスは全力で地を蹴りシャイン・ガイザーの元へ向かう。塵が集まるようにシャイン・ガイザーの失われた左腕が再形成され魔剣デモン・セイバーの柄を握り締める。魔剣は三度輝き突き出される銀の魔剣を、刃を立てて打ち逸らしサオロスの胴を両断した。サオロスの上半身は受け流された姿勢のまま後方へ飛び、手にした魔剣は刀身を地面へ突き立て、上半身は地面へ激突し塵になると四散した。残された下半身はとぼとぼと歩くと、シャイン・ガイザーへ寄りかかるように倒れ込み鞘を残して塵になった。シャイン・ガイザーは靖弥へ振り返ると、

「私たちの方が強かったな。」

と語りかけた。靖弥は思わず走り出す。

「今日はご馳走だね!」

シャイン・ガイザーは駆け寄ってきた靖弥と握手をする。

「君のお陰であの二撃目を繰り出すことが出来た。助かった。」

シャイン・ガイザーは彼の手を握ったまま感謝を告げた。靖弥は照れくさくなりシャイン・ガイザーから離れ、興奮のあまり砂利をかき鳴らして走り回る。

 走る靖弥を見て笑いながら剣を納めようとしたシャイン・ガイザーの背へ突然、蹄が迫る。咄嗟に魔剣の腹で蹄を受け止めるが飛来する矢が彼の手を打ち、剣を奪う。剣を失ったシャイン・ガイザーの背を丸盾が打ち、彼の身体を眼下に広がる街へ放った。靖弥の目からシャイン・ガイザーが白い軌跡を描いて落下し、それを色のついた風が追う。突然の事で放心し靖弥は立ち尽くすばかりであった。

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