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シャイン・ガイザー 絶対絶命 後編

 街に甲高い声で鳴く蝉がやって来た。夏の暑さが強まりまだまだ日が高い放課後、僕は今日も今日とて手早く家に帰ろうと、勢い良く席から立ち上がろうと足に力を込めるが立ち上がる事が出来ない。両肩に手を置かれている。右手の人差し指第一関節に平坦な黒子がある。

「おい。」

赤尾くんだ。大分腹に据えかねたような声色だが。

「今日こそ俺達に付き合ってもらう。」

僕の前に鈴木くんがふんぞり返る。彼の隣には猫背の前田くんが立つ。

「鈴木君の説をかなり補足できたから是非。」

ぽかんとする僕へ前田くんが笑みを浮かべて手招きをする。僕の肩から手が離れ赤尾くんは教室を出て行く。彼を見送る僕の顔を鈴木くんが覗き込み、僕は驚いて顔をのけぞらせた。

「家に帰ったら陥没現場の近くで集合な。先のコンビニの方は花束まみれですぐ解る。集合後は俺の家に直行だ。よし、解散。」

鈴木くんはそう言い残し小走りで教室から出て行った。前田くんも彼に続き僕へ軽く手を振って教室を出て行く。僕もシャイン・ガイザーのことを言えないな。今日は彼らと遊ぼう。


 崩落現場のアスファルトは真っ黒な新品のアスファルトが張られ綺麗な白線がびったりと引かれていた。今度はもう一本の大通りが通行止めになったため、この大通りの通行量は非常に多い。道の隅に寄った僕は同じように隅に寄る前田くんを見つけた。彼は肩を回し、しきりに肩をほぐしている。僕は彼に歩み寄ると、

「よし、全員いたな。」

鈴木くんの声が背後から飛び込んで来る。前田くんは僕に気づきボーイスカウトの敬礼を取ると、僕の肩を組んで鈴木くんの声に向かって僕を引っ張って行く。合流した僕たちは早速、鈴木くんの家に向かった。彼の部屋は以前よりも散らかっており座椅子が人数分置かれ、ミニテーブルが部屋の端に置かれておりインスタントコーヒー、ケトル、コップがその上に並べてある。コルクボードが部屋の中央に二枚並べられて写真やピンがボード上の地図を埋めていた。

「これは、壮観だね。驚いた。」

「だろう。皆、先ずは座ってくれよ。」

鈴木くんは手慣れた動きでコーヒーを人数分入れ、砂糖はセルフサービスですと言って僕たちへ手渡す。赤尾君はそのまま飲み始め前田君は隅のスティック砂糖を取りに行く。

「佐々木君、何本いる?」

要らないと答えると彼は砂糖を二本持って席へ座った。コーヒーは熱く僕は息を吹きかけていると鈴木くんが立って説明を始めた。

「佐々木にも解るように先ずは浄水場の情報からだ。あそこの石畳とアスファルトは新しく敷き直されていた。次に丘の上の第三公園に警察が現場検証に入ったのを赤尾が見た。写真もある。」

うろうろと鈴木くんはコルクボードの前を歩く。前田くんがスプーンでコーヒーを混ぜながら立ち上がり鈴木くんへ疑問を呈する

「ちょっと待って欲しい。それと怪人との関係性が掴めない。それよりもケンタウロス型怪人にひき殺されそうになった人へのインタビューについてだろ。携帯で内容を送り合ったはずだけど。」

「解った。でもみんな同じだった。とんでもない速さで駆け回る青色の怪物と背に乗る白い怪人が殴り合っていたって。まあ、機動隊が一部重要施設の警護をしているし大事にならないと思うけどね。調査したい場所が封鎖されてる。本当にもどかしいね。」

結局、この後も情報の出し合いでこの日は終わった。また明日もと別れた僕は帰路に着いた。僕たちは放課後度々集まり魔人についての議論やゲーム等をして遊んでおり、シャイン・ガイザーとは日曜日に合う程度になっていた。


そして、いつものように鈴木くんの家でだべっていると光が街へ落ちた。

「何だ、何か墜ちたみたいだ。」

鈴木くんがブラインドを完全に引き上げて外を見る。暫くすると光の柱が西から再び立つ。きっと魔人が鍵を突き立てたんだ。

「よし、カメラを持って確認に行くぞ。」

僕は気になって外に出ようとする友達を押しとどめる。

「もし怪物がいたら危険だよ。明日行こう。」

迷う鈴木くんの肩を赤尾君が掴み、首を振る。鈴木くんは諦めて望遠鏡を押し入れから出すと光に向かって構えだす。その執念に僕以外の二人は溜息を着いた。僕は気が気では無かった。


 シャイン・ガイザーは背の魔剣を引き抜き西のマンション郡へ降り立った。慎重に、歩を進める彼の耳に呼吸音は聞こえず、ざわめく葉と虫の声がコの字状に並んだマンションに響く。シャイン・ガイザーが硬い具足の音を立てて止まった噴水の前まで歩を進める。マンションのエントランスはドアが内側に倒れ、茶色の石畳へガラスが散乱し日光がキラキラと光を反射している。シャイン・ガイザーが魔剣の切っ先をエントランスの暗闇へ向けると二つの足音がガラスを踏み砕く音が鳴り、マンションのエントランスから二人の魔人が歩み出た。太陽の光が歩み出る巨軀のノクラスと白青を纏うフロセスを照らす。フロセスは右腕で盾を構え、左手で短剣を引き抜くと猛然とシャイン・ガイザー目がけて突撃した。濃くなった自身の影を見たシャイン・ガイザーはフロセスの出足を蹴り飛ばし、振り下ろされる輝くノクラス拳を魔剣で打ち逸らす。間髪入れずフロセスは構えた短剣で白磁の兜目がけ突きを繰り出すが、逸らされたノクラスの腕に阻まれ切っ先が兜を掠める。シャイン・ガイザーは迫る両者から距離を取ろうと後退るが、その背をファオウルが風を纏った拳で打ち据えた。シャイン・ガイザーの背が陥没し、白磁の鎧が前へつんのめった。咳き込むシャイン・ガイザーへフロセスが盾を叩で殴りつけるが、身を翻したシャイン・ガイザーから放たれた青い残光がフロセスの盾腕を肘から切断する。ノクラスの輝く拳が唸り、ノクラスを避けてシャイン・ガイザーの胸部へ巨拳が吸い込まれる。拳は捻られた白磁の鎧を擦り、青い残光が煌めくとノクラスの巨軀の胴鎧を突く。銀の魔剣はノクラスの輝く鎧の表面を削る。切りつけた勢いのままシャイン・ガイザーはノクラスとフロセスの間を走り抜けた。ファオウルは地に落ちたフロセスの盾腕を悶絶するフロセスへ蹴り上げて渡すとノクラスと共にシャイン・ガイザーを挟み込むように走る。


 エントランスへ飛び込んだシャイン・ガイザーは長い廊下を幾何か走ると壁をぶち抜き追走してきたファオウルとノクラスに囲まれる。シャイン・ガイザーはノクラスの巨軀へ魔剣を両手で掲げ距離を詰める。ノクラスは鎧を輝かせ、ファオウルは風を纏った拳を唸らせシャイン・ガイザーへ向かう。拳を魔剣で打ち逸らしたシャイン・ガイザーへ回復したフロセスが盾を突き出す。シャイン・ガイザーは盾に腰を殴打され膝鎧が歪むが、白い小手が反撃とばかりにフロセスの顔面を強かに殴打する。ノクラスの巨軀は走りだす。巨大な身体を弓なりに引き絞り、矢のようにつがえられた拳が一際輝く。ノクラスは強く踏みこむが、その巨体の自重と強力な踏み込みで床が割れ、ノクラスの巨軀はマンションの受水槽のピットへ落ちた。這い出るノクラスの首を刎ねんと銀の魔剣が迫るがファオウルが追走する。シャイン・ガイザーはデモン・セイバーと呟き左手に黒い魔剣を握る。警戒したファオウルは足を緩め、ノクラスは何とか這い上がると満身の力を込め輝く拳をシャイン・ガイザーへ繰り出した。突撃する白い風はノクラスの拳を避けられず、巨大な岩のように固められた拳は狙い違わずシャイン・ガイザーの胴鎧を打ち据えた。シャイン・ガイザーは胸部を陥没させ、突撃に走る倍の速さで吹き飛ばされると。エントランスを抜け別棟の一室まで壁を破って吹き飛んだ。ファオウルは追撃に出るため目を崩れほこりが舞う別棟へこらすが背後で呻くノクラスに驚愕する。銀の魔剣は深々とノクラスの巨軀を貫き、胸からは見事な装飾の柄が覗く。ノクラスは両手で胸をかきむしり両膝を床へ打ちつけ。地響きを立ててうつ伏せに倒れ伏すと切っ先が背から更に飛び出す。鈍く輝く巨軀は塵になり、魔剣がその山へ転がり落ちた。


 崩落したマンションで仰向けに横たわるシャイン・ガイザーの背と胸の傷は修復されていたが、白磁の鎧は小刻みに震え黒色に変わる。息も絶え絶えに割れた浴槽タイルを力なく転がしながらうつ伏せに体勢を変え、シャイン・ガイザーは立ち上がるため洗面台を掴むが加重に耐えきれなくなった洗面台が外れ噴き出した水が鎧を濡らす。咳き込むシャイン・ガイザーは胸の鎧を畳むと、胸の穴から粉々になった鍵がこぼれ落ちた。痙攣する左手を抑え、シャイン・ガイザーは魔剣を拾い上げると何とか立ち上がり外へ飛び出す。


 鏡の間では満足そうにヴァザーゴは白い指を鏡へ向け腕を組み、槍を地に突き刺したザラガスへ語りかける。

「黄金を纏うザラガスよ、喜ぶべき事に切り札は必要なさそうだ。ノクラスが討ち取られた事は残念だったが最早シャイン・ガイザーは風前の灯火。あの黒い鎧ではどうやら鍵は壊れ、魔剣コントラ・ブレードはファオウルの手に。」

鏡にはファオウルの振るう銀の魔剣の刺突とフロセスの盾の殴打を必死に黒い魔剣で凌ぐシャイン・ガイザーが映る。目を細めたザラガスは鏡を凝視する。

「シャイン・ガイザーが負ける。未だかつて無い剣士であった。」

ザラガスの呟きにヴァザーゴが答える。

「惜しむ気持ちは解るが、いずれ魔界に轟く剣士は産まれよう。これも良い思い出になる。」

ヴァザーゴの言にザラガスはなんとも言えず眉をひそめた。カリメギスは両手の鉞を地へ寝かせ、ほこり立てて勢いよくあぐらをかいた。

「ヴァザーゴ殿にザラガスよ、次の戦いは儂が先頭を切るぞ。これでは我が鉞が泣いている。」

ヴァザーゴは快く頷き、

「カリメギスよ、お主の勇猛さは良く心得ている。次の降下はお前にしよう。ザラガスはその次だ。先ずはこの勝利を見届けよう。」

と朗らかに両者へ語りかけた。

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