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シャイン・ガイザー 絶対絶命 中編

 放課後、近所の皆と家に帰った僕はリュックを背負って台所のあられを掴み、夕飯の支度をするお母さんへシャイン・ガイザーの元へ行く旨を伝え玄関へ駆け出すと。お母さんに呼び止められた。

「シャイン・ガイザーはもう公園にいないよ。東の古びた展望台にいる?らしいから、多分旧盈浜展望台だと思う。足元に気をつけて行ってきなさい。」

「了解。」

短く答えた僕は玄関から飛び出て青い自転車にまたがるとふくらはぎと背中に力を入れてペダルを力一杯に漕いだ。公園に繋がる橋を渡った僕は堤防沿いに東に向かって自転車を走らせる。まだまだ空から太陽に背中が照らされ空色のシャツが汗に濡れ襟元が濃紺色に染まる。電柱からは最近出てき始めたゼミの鳴き声がやおらなり始め、森から見える展望台がやたらと遠くに感じ思わず顎を前に突き出す。

「五月なのにもうセミか。」

暑さかを紛らわせるため思わず声が出る。森の入口に朽ちた駐輪場が設営されており、何となく白線に合わせて自転車を止めるとなだらかな傾斜のある山道を駆け上がる。一際、蝉の声が強く森を響く中ようやく開けた広場に到着した。広場には一部コンクリート製の展望台と剥がれかかったトタン屋根をかぶる休憩所がポツンと建っている。僕は先ずガタガタの足場を踏みしめ休憩所へ向かった、爪先を立てて窓が枠ごと外れた窓口からプレハブの中を覗き込んだ。中の様子が一望出来た。ほこりを被ったパントリーの水場は枯れており、ソファーには色の解らなくなったカバーと絨毯が掛けられ、床には木の葉と砂が散らばる。

「中には居ないか。」

閑散とした場所だと心細くなり思っていることが口に出てしまった。

「ようこそ。ササキ・セイヤ。」

シャイン・ガイザーの声が僕の背後それも上から降ってきた。振り返ると展望台壇上の展望デッキに彼は立っていた。僕は走り、展望デッキに登り彼をしげしげと見た。シャイン・ガイザーの鎧はやや黒ずみ、白磁のような白ではなく白百合色の鎧になっていた。

「私の居た公園に警察?が来てサオロスとの戦闘跡を調べ始めたので場所を移した。此処からでも魔界からの光は確認できる。」

成る程。

「じゃあお母さんにどうやって伝えたの?」

「私は昼間に偶然、串カツを食べるササキ・ヨシムネに出会いその旨を伝えた。きっと彼が連絡したのだな。」

以外だ、シャイン・ガイザーって街中をふらふらしてるんだ。そうだ、旅行雑誌を返さないと。リュックの雑誌を取り出してシャイン・ガイザーへ向ける。シャイン・ガイザーの視線が雑誌へ落ちる。

「預かっていた雑誌。行きたい場所はどこかある?折角ここに来たんだし楽しんだ方が良いよ。」

シャイン・ガイザーの白い手の平が雑誌を押し返すと、街を一望出来るデッキの手摺まで床を軋ませて歩いていった。僕はリュックを拾い上げて白い背を追いかけ彼に並んだ。黙り込んだ彼の顔を見上げてもどこを見ているのか解らない。そこで僕は近くのベンチに乗るため足元へ視線を落とすと手元の雑誌の角が気になった。柔らかい雑誌のページをどんどんめくっていくと角の折れたページが三ページ見つかった。折れた角は綺麗な二等辺三角形を描き、適当にページを折るお母さんのものではないことが解った。

「イカの博物館、紫陽花園に海水浴場。」

「戦いを乗り越えたご褒美にしようと思っていている。ササキ・セイヤ、君もどうかな。」

僕に背を向けたままシャイン・ガイザーが誘う。はっきり言って海水浴場以外興味は無い。それに、シャイン・ガイザーはどうやって入場するのだろうか。

「シャイン・ガイザー、僕も同行するけど紫陽花園はまずそうだね。古い座敷へ上がらないといけないし、食事は着席形式だしどうやって中へ入るの?」

「それに関しては目下検討中だ。」

僕の疑問に街を眺めていた彼は振り返り上を向いて考え込むような渋い声色で言って再び街を眺め始めた。


 彼は何を考えているのだろう。同じ視線で街を眺めても全く解らない。

「ササキ・セイヤよ。私はこの街、住む人々のことなどどうでも良いと思っている。今尚、欠片も興味は無い。だが、君や君の両親のような人間がいる限り私は戦う。彼らの生活と私の居場所を守るために。」

ああ。シャイン・ガイザーはやっぱり魔人だ、戦う生き物なんだ。でも、僕には彼に言わなくちゃいけないことがある。ベンチから飛び降りデッキの床を踏みしめて彼の背後に立って深呼吸をして口を開いた。

「君は、それで良いよ。魔人と人間は違うし、魔界を守ってきた君にとっては当たり前の考え方だよね。」

きっと彼は自分だけの、誰のものでもない居場所が欲しかったんだ。デッキの手摺から垂れる白い指はピクリと動き、人差し指が持ち上がると手摺を小さくなぞる。僕は言葉を続けた。

「でも、君に守られたと言っている子が僕の通っている学校にいる。僕はそれを聞いて嬉しかったよ。もう人間は君にとってどうでも良い存在じゃ無いんだ。君は魔人だけど人間なんだ。」

シャイン・ガイザーは僕へ振り替えるが何も言わず。僕は無言で聳える彼にリュックからあられが入った大袋を取り出して見せつけるとその場に座り込む。シャイン・ガイザーも僕に続いて鎧を鳴らしあぐらをかいた。シャイン・ガイザーは興味心身にあられを掴み少し割る。軽快な割れる音に頷く彼は次々にあられをエネルギーに変え取り込む。僕には彼が笑っているように感じた。


 一方、魔界では盾を背負ったフロセスが立ち去ったファオウルを追っていた。荒野が続く魔界は崩壊を続けており、既にサオロスの武具が転がっている峡谷は闇に飲まれている。大岩に座り込むファオウルの背を見つけたフロセスは具足を鳴らしその背へ寄っていった。

「ファオウルよ、一体お前に何が起きた。狂人の戯言について考えたと思えば足音荒く鏡の間を抜け、ここで黄昏る。覇気が無いようであればザラガス殿と換えるが?」

風を纏うファオウルは怒気に身体を膨張させフロセスへ対峙する。

「お前もこの魔界の今後を憂えるのであれば今回の件を見過ごすことは愚かだ。二度とこの様なことが起きぬよう、何故ウヌヴァルがシャイン・ガイザーとなったのかを考察必要がある。」

ファオウルの剣幕に呆れたフロセスは両腕を組んで言い返す。

「穀物へ生えるカビのように、狂人の戯言を理解すれば狂人になる。この一件はさっさとシャイン・ガイザーを抹殺して終わらせるべきなのだ。」

ファオウルの憤然とした気配は増すばかりで鋭い両目の眼光がフロセスの後方を睨み、一拍後ずれるようにフロセスの眼を突く。口を開き掛けたフロセスへ怒れるファオウルが叩きつけるように語りかけた。

「ヴァザーゴ殿の言にもお前も違和感は無かったのか。此処でシャイン・ガイザーを抹殺することの意味を。エネルギーの塊である魔界で戦うということは負った傷もたちどころに直るということ。魔界はただでは済まない。」

フロセスへ怒れるファオウルへ指を突きつけ、

「勇士と名高いファオウルよ、慎重さは美徳だがその体では臆病と言うほかない。お前も解っていると思うが地球をエネルギーへ変換することが出来れば状況は変わるのだ。地球の未利用エネルギーの量は解っているだろう。」

と語りかけるとファオウルは拳を握りしめフロセスへ詰め寄り、フロセスは大柄のファオウルを見あげる。

「今回だけの話をしているのでは無い。私は未来の話をしている。全くもってどうかしている。まともなのは私だけか。」

ファオウルはいきり立つ腕を堪え、フロセスを大回りし鏡の間へ向かっていった。ファオウルが鏡の間へ戻る道すがら、岩壁に寄りかかり彼らのやり取りを眺めていた金色に輝くザラガスが歩む彼を呼びとめた。

「ファオウルよ、お前の纏う風に掛かっている。健闘を祈る。」

ファオウルは足を止めたが返答は返さず、荒々しい足を整え冷静さを取り戻した足どりで再び鏡の間へ向かった。


 鏡の間にファオウルが戻るとカリメギスと話し込んでいたヴァザーゴが気配早くファオウルへ寄ると話しかけた。

「フロセスとは話したようだな?準備は整えておけ、決戦まで幾許もない。作戦があるのなら今のうちにノクラスとも共有を」

「いらん。シャイン・ガイザーも魔界にとっての敵だ、そうだろう。」

出鼻をくじくファオウルの言にヴァザーゴは肯定し、白い脛当てはカリメギスの元へ戻っていった。ヴァザーゴを見送ったファオウルは地球への門を見据え、彼の視線は鏡へ向かう。鏡には相も変わらず街が映し出されている。

「小さな墓所だ。世界を食らってきた魔界の魔人が四人もここに眠るとは。シャイン・ガイザーは地球で殺してやる。故郷の土で殺してなるものか。」

ファオウルの怒気は闘気となって肩から立ち上り、身体から鈍い音を立てる。ノクラスは勇壮なファオウルを横目に見あげる巨体を張り満月を待った。

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