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シャイン・ガイザー 絶対絶命 前編

 今なお風化するように崩れる魔界の中心に位置する鏡の間には六人の魔人が黙して立ち並び、燃えるような目で鏡を睨み付けていた。その静寂へ大釜を下ろすような具足の音が鳴り響き、ひときわ大きな魔人が片手をこめかみへ当てるヴァザーゴへ歩み寄る。

「ヴァザーゴ殿、次なる一手はどうするつもりか。シャイン・ガイザーは最早ウヌヴァルでは無い。回復した奴に勝てる者はいるのか?」

艶の無いすね当てが五歩一同の前へ進み、ヴァザーゴは余裕げに振り返る。五人の魔人は頭目の言葉をひび割れた大地を踏みしめて静かに待った。ヴァザーゴの兜が五人の顔を流し見る。ヴァザーゴは胸を張り、朗々と彼らへ語りかけた。

「巨軀をすくめるな、神々しいノクラスよ。皆、落ち着け。シャイン・ガイザーはウヌヴァルだ。それ間違いようのない事実であり、我々の掌には勝利の武器が握られている。」

ヴァザーゴは拳を掲げ巨軀のノクラスへ近づく。彼は掲げられた拳をノクラスの厚い胴鎧へ当て、

「以前から取り組んでいた方策の目途がファオウルの協力で立った。次の満月には三人送り込める。」

石突きの音が魔界を木霊する。黄金を纏うザラガスが見事な槍を叩きつけたのだ。居丈高に具足を鳴らし、ザラガスはノクラスとヴァザーゴへ歩み寄る。

「必勝を期すのならば、当然の事ではあるが降下する光に黄金が混じるのだろうな。」

うんざりと首を振ったヴァザーゴは白い指でノクラス、続いて白青を纏うフロセス、最後にファオウルを順に指した。ザラガスが呆れて閉口する中、これに一人の魔人が怒り声を張り上げた。

「ヴァザーゴ殿。貴方は魔界を滅ぼしたいのか。このカリメギスの策をあれ程伝え、私を送るように伝えたにもかかわらず。今度こそ私を送ってもらおうか。」

腰に二本の鉞を下げた緑青色の鎧を纏うカリメギスは両の豪腕を唸らせ、足を踏み鳴らし魔界が揺れる。ザラガスは腕を組み静観を決め込むが視線はファオウルへ向いている。怒るカリメギスへノクラスが面と向かう。

「お前の策は知っている。あれはお前一人にしか恩恵が無い。諦めろ。」

ノクラスの言はカリメギスの怒気へ火を薪をくべ、舞い上がる怒りの目はザラガスへ向かう。

「お前もなんとか言え。あっさりと引き下がるとはその鎧がくすむぞ。」

カリメギスの怒気をザラガスはそよ風のように流しその視線すら変えない。怒り収まらぬカリメギスへヴァザーゴが具足を鳴らして近づくと彼の緑青色の肩へ白い手をのせ、沼のように抑揚無く語りかけた。

「よく聞けよ、カリメギス。シャイン・ガイザーを殺すことが我々の目的では無い。目的は地球をエネルギーにすることだ。シャイン・ガイザーのことなど暫くしたら良い思い出になる。落ち着くのだ。」

ヴァザーゴの言にカリメギスはその場で埃を立ててあぐらをかき、膝に手の平を置いて押し黙る。緑青の視線はノクラス、フロセス、ファオウルへ向く。ヴァザーゴは静かにきびすを返し、フロセスへの前で立ち止まりると懐から一本の水晶で作られた鍵をつまみ出した。魔界の暗黒においてもその鍵はどこからか射す光に照らされ、絶え間なく光を散乱させる。その輝きにカリメギスは驚嘆する。

「この鍵は突き刺した相手と共に強制的に魔界へ帰還する物だ。かつてはよく使っていた物だがこれが最後の一本になる。これを隙を見計らいシャイン・ガイザーへ刺し、奴を魔界へ引きずり込むのだ。我らが飛び出した狂人を袋だたきにする間に、地球の二人は鍵を刺し使命を果たせ。さあ、これを最も同胞を大切にするお主にやろう、壊れやすい故に失敗は許されないぞ。」

ザラガスとカリメギスは納得したように頷き、フロセスは鍵受け取ると慎重にその切り札を胸へ格納する。フロセスの様子を見届けたファオウルは一同に歩み寄る。

「皆に聞きたい。シャイン・ガイザーは何故戦うのだろうか。先のアルトラリスとの戦いを見た私には解らなくなってきた。何を残す。残る物は何だと思う。」

ファオウルの問いへ五人の魔人は狂人の戯言と言い放ち深くは考えなかった。目を伏せて小さく頷いたファオウルは失望の溜息をつき、足音荒く鏡の間から去って行った。


 僕たちの学校はあの馬の魔人が暴れても休みにはならなかった。但し、登校は親同伴になり帰りは近所のグループを作って五限切り上げにカリキュラム調整がされた。朝、鈴木くんはすっかり回復し昨日のテレビ放送について、興奮気味に鼻の穴を広げ僕の前に座る前田くんへ如何に自分が正しかったのかを蕩々と語っていた。鬱陶しそうな前田くんは文庫本を口元まであげると視線をこちらにやる。僕は黒板前で談笑する赤尾君へ顔を向けると前田くんは察し指を赤尾くんへ向けた。指先を鈴木くんの視線が辿り、説明したがりな視線は赤尾くんを向く。

「あいつにはこってり言ったから良いの。まあ、お前にも話したし次は佐々木か。」

彼は僕を見る。彼の後ろで前田くんがトンチキな表情を取り僕を煽った。近寄る鈴木君へ苦し紛れに言う。

「いや、もう前田君と話している内容を聞いたから大丈夫だよ。興味深い話だった。」

「じゃあどう思う。」

まずい。僕へかぶせるように鈴木くんが問いかけてきた。全く聞いていなくて意見が練れない。答えに窮する僕に鈴木くんは目を細め疑いの目を向け始めた。そうだ。

「僕には疑問がある。但しこれはきっと前田君も感じていた疑問のはず。先ずは前田君の意見から聞いて見ないか。」

突然の振りでひょっとこ顔になった前田君は彼の左つまり廊下側へ視線を向け、口は半開きになる。その間に鈴木くんが考えそうな説を考える。いくらかすると前田くんは舌を鳴らし僕たちを見た。

「やっぱり宇宙人説は飛躍しすぎかな。確かに僕もテレビで見てあの二体の力強さとカメラで捉えられない速さはよく解った。じゃあ何しに来ているのと言う話になる。ケンタウロスみたいな方は鈴木の言ったとおりの化け物だったけど。白い方は何か人を守っているみたいだった。実際別のクラスで助けられたと言っているやつも居る。それに加えて、二体が消えた後は誰も死んでないし。今解ることは化け物がこの街で敵対しているってことかな。」

宇宙人説か。合っている気がするが、兎に角僕も何か考えなくては。思わず視線をあげると立ちあがる鈴木くんと目が合った。彼は口角をあげ僕へウンと頷いた。ウンじゃない。

「前田君の意見は一々尤もだと思う。その勢力?についても考察、推測する必要あるね。一方は間違いなく人殺しに躊躇しないこともきっと事実なのだろうし。」

シャイン・ガイザーの許可を取らずに、彼らへ話すのは不義理と考えた僕は咄嗟にとぼけた。鈴木くんは絞り出した僕の返事を聞くと考え込み始め、そのままチャイムが鳴った。


 給食の時間、僕は黙々と牛乳をすすっていると鈴木くんに肩を叩かれる。振り向く僕の視界いっぱいに自信満々な彼が胸を張る。

「よし、あの浄水場に行ってみるよ。行こうと思っていた海岸は封鎖されちゃったし。」

「一人ではやめた方が良いよ。」

鈴木くん僕の意見に尤もだと頷き、

「それはそうだけど。どうして気になる、何か解るかも知れない。」

訴えかける様な目が僕を刺すがきっぱりと頭を振った。今日もシャイン・ガイザーの元へ行く予定なのだ。そんな僕の反応に鈴木くんは肩を落とし、肩と首を窄ませて湯がいた菜っ葉のように彼は小さくなった。そんな彼に僕の向かいに座る前田くんが牛乳を何とか嚥下し、身を乗り出すと。

「それなら僕が一緒に行こう。あのテレビ放送で少なからず興味があるからね。」

ムクムクと身を起こした鈴木くんは喜び勇み、満面の笑みへ戻るとスプーンでスープをすくい美味しそうに啜る。

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