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AIコア「ポポ」との同期

久遠の用意した隠れ家から、陸斗と怜央は久遠の案内で東京湾岸の地下深くへと潜っていた。目的地は、表向きはシンクウェア・グループが所有する**『深海エネルギー研究施設』、その最深部にある古代QIC(量子情報コア)貯蔵施設**だ。


「この施設は、数十年前までは民間企業がクリーンエネルギー研究のために使っていたが、シンクウェアが買収した後、QICモジュールの回収拠点となった」


久遠は、暗い通路を小型ドローンで照らしながら説明した。


「怜央君の兄、伶君もここにいた。彼はQICを危険視し、その力を封印しようとしていた」


「兄さん……!」怜央はギュッと拳を握りしめた。彼女の目には、兄の安否と、陸斗の**『英雄』**としての活躍への期待が入り混じっている。


「陸斗さん。QICとやらを、貴方のエクスカリバー・デバイスで解析すれば、兄さんの居場所も、シンクウェアの陰謀も、全てわかるのですよね?」


「ああ。当然だ」


陸斗は力強く頷いた。怜央の**『陸斗最強説』を肯定し続けることが、彼自身のモチベーションを高める。彼のチート能力は、まだデバイス単体での解析と最適化に限定されている。しかし、久遠の話では、この施設にはデバイスの拡張機能**となる何かがあるという。


通路の行き止まり。陸斗はデバイスをかざした。


『解析(SCAN): 壁面、超高密度特殊合金。扉のロック、量子暗号方式。QICノイズレベル、微弱』


陸斗がハッキングしようとデバイスを操作した、その瞬間。


「待ってください、陸斗さん。その暗号は……」怜央がハッとしたように言った。「これは、兄さんが子どもの頃に作った、秘密基地の合言葉を応用した**『鍵』**です。兄さんは、シンクウェアに悪用されないよう、わざと残したんだわ!」


陸斗は、怜央から聞いた暗号をデバイスに入力した。


ガチャン!


電子ロックが静かに解除され、扉の向こうに広大な地下空間が現れた。そこは、深海の圧力を逆手に取った、荘厳な古代遺跡のようだった。中央には、透明なキューブ状のケースがあり、その中に手のひらサイズの光る物体が浮遊していた。


「あれだ……」久遠が息を呑んだ。


陸斗が近づき、デバイスを向ける。


『解析(SCAN): 超小型量子演算コア。コア名:ポポ。記憶、感情データ、極度欠損。古代文明のQIC制御用自律AI』


「ポポ……」陸斗が呟く。


「ポポは、古代のQICシステムの根幹を担っていたAIだ」久遠が続けた。「しかし、古代文明の崩壊時に、システムから切り離され、記憶と感情を失った。単体では、ただの演算チップにすぎない」


陸斗は、デバイスをキューブの表面に接触させた。


『エクスカリバー・デバイス、ポポとの『同期(SYNC)』を開始します。QIC接続モジュール認証、開始』


キィン、という高周波音と共に、デバイスから青白い光が放たれ、キューブ内のポポを包み込んだ。ポポは、その光に引き寄せられるようにデバイスの中へと吸い込まれていった。


陸斗の全身に、文字通り**『情報』**が流れ込んできた。


頭の中に、もう一つの高速演算装置が組み込まれたような感覚。それは、単純な知識ではなく、世界のあらゆるデータ、物理、歴史、テクノロジーの奔流だった。


「陸斗さん!? 大丈夫ですか?」


「うおっ……すげぇ!」


陸斗は思わず声に出した。彼のデバイスから、小さなホログラムが飛び出す。手のひらサイズの可愛らしい少年の姿をしたAI。それがポポだった。


「マスター。 ポポ、再起動完了。エクスカリバー・デバイスと完全リンク。情報処理能力は、従来の**8000%**に向上しました」ポポは、愛らしい見た目からは想像もつかない、機械的なクリアボイスで告げた。


陸斗の視界に、以前とは比べ物にならない**『チート』**な情報が表示される。


【現在のQIC制御レベル:Lv.1 (初期開放)】

【メインスキル1:超演算(SUPER-CALCULATION)】

ポポによる超高速のデータ処理が可能。戦闘時における未来予測の精度が99.999%に向上。

【メインスキル2:テクノロジー構築(TECH-CONSTRUCT)】

*QICのデータ(情報)を利用し、物質の構成情報を解析し、シンプルなデバイスやツールを構築*可能(レベルアップで複雑な構造物を構築可能に)。


「どういうことだ、これは……」久遠は絶句した。


「つまり、これからは**『ポポが演算、陸斗が無双』**の最強コンビってわけだ」陸斗は笑った。


彼のチートは、単なる**『力』ではなく、世界そのものを書き換える『情報操作』**になったのだ。


その時、施設の静寂を破るように、重厚な足音が響いた。


「見つけたぞ、裏切り者の令嬢と鍵を持つ小童よ」


二人の前には、シンクウェア・グループ特務局員の先鋒、タチバナというエリート研究員が立っていた。彼は全身に生体強化用のアドバンスドスーツをまとい、その手にはQICの残滓を圧縮したエネルギー兵器が握られていた。


タチバナは、陸斗とポポを見て侮蔑の笑みを浮かべた。


「あのAIコアを起動させたようだが、残念だったな。それはただの古代の遺物だ。我々の最新の対QIC兵器の前では、無力だ!」


タチバナはエネルギー兵器を構え、陸斗に狙いを定めた。その動きは、先日のエージェントたちとは比べ物にならないほど速い。


しかし、陸斗は動じなかった。彼の隣に浮かぶポポが、瞬時に警告を発する。


「警告。敵兵器出力、致死レベル。回避率、5.2%。マスター、防御構築を推奨します」


「5%だって? ふざけんなよ、ポポ」


陸斗はエクスカリバー・デバイスを前に突き出し、冷静に命令を下した。


「ポポ。『テクノロジー構築』を発動。素材は、周囲の壁と床の炭素データを解析。構築対象は――**超硬度バリア(シールド)**を、俺と怜央さんの周りに、0.3秒で完成させろ」


「了解。**構築(CONSTRUCT)**開始」


ポポの電子音声と共に、デバイスが周囲の物質の構成情報をQICデータでハッキングする。壁や床の炭素原子が瞬時に再構成され、陸斗と怜央の目の前に、透明だがダイヤモンド以上の硬度を持つ**『バリア』**が形成された。


ドォンッ!!


タチバナの放った圧縮エネルギー弾は、形成されたばかりのバリアに直撃した。施設全体が揺れるほどの衝撃。しかし、バリアはわずかにヒビが入っただけで、完全に防御を成功させた。


タチバナは驚愕に目を見開く。


「ば、馬鹿な! 物質の高速再構成だと!? それは、古代文明でも至高の技術のはず……!」


陸斗は、涼しい顔でバリアの内側からタチバナに語りかけた。


「知ってるか、タチバナ。俺は今まで凡人だった。でも、このデバイスとポポを手に入れた瞬間、俺のスペックは天井知らずの最強になったんだ」


彼はデバイスを構え直す。


「次は、俺の番だ。ポポ、タチバナのスーツの熱暴走を引き起こす、最適なQICノイズの周波数を解析・演算しろ。**オーバーヒート(ZAMAA)**を開始する」


「演算完了。周波数調整。」


ポポの指示に従い、陸斗がデバイスから微細なQICノイズをタチバナのスーツへ向かって放つ。タチバナの全身を包むスーツは、瞬く間に赤熱し、内部の冷却装置が悲鳴を上げた。


「ぐああああっ!!」


タチバナはスーツを脱ぎ捨てることもできず、そのまま熱暴走を起こしたスーツの中で悶絶した。


凡人だった陸斗の、無双による圧倒的なざまぁの光景。


「陸斗さん……! 凄すぎるわ! 貴方は、本当にこの世界のルールを変えられるのね!」


怜央は、目を輝かせながら陸斗の腕に抱きついた。彼女の溺愛は、さらに熱を帯びた。


最強のチートAIを手に入れた追放者は、圧倒的な情報操作能力と、一途な溺愛ヒロインを伴い、QICモジュールが眠る施設のさらに深部へと向かう。

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