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【百合】二度目の人生は、全力で貴女を落とす〜最愛の幼馴染はもう誰にも渡さない〜  作者: 八星 こはく


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第63話(渚視点)その日は

 最近、桃華の様子が変わった。

 おかしい……というわけじゃない。ただ、前に比べると桃華はかなり穏やかな顔をするようになった気がする。


「渚、そこ間違ってる」


 シャーペンで桃華が私のノートを指す。つい先程解いたばかりの数式だ。


「えっ、本当?」

「うん。たぶんケアレスミス。もう一回計算だけやり直してみて」


 言われた通りの計算をやり直す。桃華の指摘通り、私は計算ミスをしてしまっていた。


 今日は近所の図書館の自習スペースで桃華と一緒に夏休みの課題をやっている。夏休み終了までもう2週間もないというのに、ほとんど課題は終わっていない。

 夏休み明けにはテストもあるし、勉強しなきゃいけないのは確かだ。


 だけど……。

 本当にずっと、勉強してるだけなんだけど!?


 勉強するふりをしながら、そっと桃華を盗み見る。今日の桃華はラフな格好で、いかにも勉強をするためだけに家を出ました、という感じだ。

 図書館にきたのは13時で、もうすぐ17時にある。その間、私たちは一回も休憩をしていない。


 てっきり休憩中に人気のない場所で手を繋いだり、キスしたり、そういうことがあると思っていたのに。


 今朝、パックをしながらリップスクラブをした自分を思い出すと恥ずかしくなる。デートかな、なんて考えていたのは私だけだったのだろうか。


 桃華の態度が変わったのは、お泊りの後からだ。


「渚。ぼーっとしてるけど、疲れちゃった?」

「あっ、うん。結構時間経ったし」

「それもそうね。一回、休憩がてらコンビニでも行く?」

「行く!」


 あまりの大声で、周りから視線を集めてしまった。

 いくら会話オッケーな自習スペースとはいえ、図書館内では静かに……というのは基本だ。

 慌てて周りに頭を下げる。手早く貴重品だけをまとめて席を立った。





 図書館正面の横断歩道を渡ったところに、イートインスペースのついたコンビニがある。

 私たちはアイスを一個ずつ買ってイートインスペースに移動した。


「渚、あとどれくらいで宿題終わりそう?」

「……うーん。まあ、夏休み中には。桃華は?」

「私はもう終わってる」

「さすがだよね、桃華は」


 宿題は終わっているのに、こうして私と一緒に勉強してくれる。もちろん宿題以外の勉強もあるからだろうが、それだけが理由じゃないだろう。


 理由をつけてでも私と一緒にいたいから……なんていうのは、ちょっと私に都合がよすぎる考えかもしれないけど。


「ねえ、渚。せっかく夏休みだし、もう1回くらいどこかに出かけられたらって思ってるんだけど」


 アイスを食べ終わると、桃華が少しだけ緊張した顔で口を開いた。

 私を遊びに誘うのになんて、慣れているはずなのに。


「うん、行こうよ。行きたいところある?」

「行きたいところはまだなんだけど、行きたい日が……」


 ぴこっ、と桃華のスマホのが鳴った。メッセージアプリの通知音だ。


「……誰から?」


 桃華がスマホを確認する。私は身を乗り出して、桃華のスマホの画面を覗き込んだ。


『来週の25日、2人で会えない? 桃華ちゃんに話したいことがあるんだ』


 草壁からのメッセージだ。

 急いで桃華の表情を確認する。なんとも言えない顔で、桃華は画面を見つめていた。


「……会うの?」

「うん。話があるらしいから、ちゃんと聞かないと」


 行かないで、なんて言えない。

 この機会を逃したって、どうせ草壁は桃華に告白するんだから。


「でもその後、渚に会いに行っていい?」

「え?」

「どうしてもその日、渚に会いたいの」

「いいけど……」


 草壁と会った後の桃華に話を聞きたい。

 だから私としてはありがたい誘いだ。でも、桃華がその日にこだわるのはどうしてだろう。


 8月25日って、なにかあったっけ?


「ありがとう。その日のデートプランは、私に考えさせてくれる?」


 デート、という言葉にどきっとした。

 8月25日。

 桃華がやけにこだわっているその日は、私たちにとってどんな一日になるんだろう。

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