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第6話 委員会決め

「ねえ桃華、委員会、なにがいい?」


 楽しそうな顔で渚が笑う。次の時間、クラスで委員会決めを行うのだ。


 絶対、渚と同じ委員を勝ち取らなきゃ。


 委員会によっては活動が多いため、同じ委員会になった子と仲良くなるのはよくある話だ。


「渚と一緒なら、なんでもいいけど……」


 人気の委員会を選んでしまったら、じゃんけんになる可能性がある。

 そうなったら、渚と一緒になれない。


「じゃあ、図書委員とかは? 桃華、本好きじゃん」

「いいの?」


 確かに私は本が好きだけど、渚はそうじゃない。

 それなのに、うん、と渚は笑顔で頷いてくれた。


「私も桃華と一緒なら、正直なんでもいいし」


 一生独り占めしたい、この笑顔。


 あまりの可愛さに身悶えしていると、チャイムが鳴った。

 慌てて自分の席へ戻ると、草壁と目が合う。


 睨みつけてやりたい気持ちを抑え、にっこりと笑ってみせる。

 今のところ、草壁と渚が仲良くなる気配はない。


 このまま、二人の距離が縮まりませんように。


 何度目かも分からないけれど、私は心の中でそう祈った。





「……なんで」


 なんで、なんでこうなったの!?


 身体の奥から沸々と湧き上がってくる怒りを鎮めるために、何度も深呼吸を繰り返す。

 それでも黒板に記された文字を見るたびにむかついてしょうがない。


 図書委員 五十嵐・草壁


 最悪なことに、私は草壁と同じ委員会になってしまったのだ。


 図書委員は、あまり人気のある委員会ではなかった。

 だからじゃんけんをせずに渚と一緒になれるかと思ったのに、この男が邪魔をしてきたのである。


 仲良い二人が希望してるんだから、ちょっとは空気読めないの?

 それにこの人、本なんて全然読まないでしょ。


 渚からいろいろと話は聞いていたから、草壁の趣味嗜好はひと通り分かる。

 草壁に興味はなかったけれど、渚の話はちゃんと聞いていたから。


 それとも、今の草壁は本を読むの?


 はあ、と草壁にバレないように溜息を吐く。

 渚と一緒に環境美化委員をやるのが女子なのが、せめてもの救いだ。





「あのさ、桃華ちゃん」


 授業が終わるとすぐ、草壁に声をかけられた。

 むかつきつつも、それを顔に出さずに視線を向ける。


「どうかした?」

「さっきの委員会決めのことなんだけど……ごめんね」

「え?」

藤宮ふじみやさんと一緒にやりたかったでしょ」


 藤宮さん、というのは渚のことだ。

 この世界ではまだ、草壁は渚のことを苗字で呼んでいる。


 といっても前の人生でも、この時点では草壁はまだ藤宮さん呼びだったんだけどね。


「……まあ」

「ごめんね」

「ううん、じゃんけんなんだから、仕方ないし」


 それに、渚と草壁が二人で図書委員をする、という最悪の結果にならずに済んだ。


「俺、桃華ちゃんと一緒の委員会になりたくて」


 はは、と照れたように草壁が笑う。


 口説いてるつもりなの?


 そういえば渚が、草壁は気持ちをよく言葉にしてくれるタイプだと言っていた。

 だからつい、喧嘩をしても何度も許してしまうのだと。


「……ありがとう」


 そう言って下を向く。

 照れたからじゃなくて、罪悪感を覚えてしまったからだ。


 なんで草壁って、すごく嫌な奴じゃないんだろう。

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