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第32話 教えてよ

 身体が火照っていて、先生の声が全く頭に入ってこない。


 ……まあ、高校の授業内容はほとんど頭に入ってるし、いいんだけど。


 今度こそ渚を自分のものにする……ということばかりに意識が向いているけれど、他の事柄に関しても、高校生に戻れたという利点は多い。


 勉強に関しては忘れている部分が多いとはいえ、教科書や参考書を少し見ただけで、かなり思い出した。


 大学受験をもう一回やらなきゃいけないっていうのは、厄介だけど。


 前の人生では、渚と草壁が付き合いだしてから、私は現実から逃げるように勉強に打ち込んだものだ。


 ……渚、本当に何考えてるんだろう?

 さっき、もし誰かがきていたら、どうなってたんだろう。


 想像するだけで心臓がうるさくなる。

 でもそれは焦りだけじゃなくて、どきどきも混じっているのは確かだ。


「桃華ちゃん、桃華ちゃん」


 草壁にシャーペンで腕を軽くつつかれ、はっとして顔を上げる。


「次、たぶん桃華ちゃんあてられるよ」

「わ……ありがとう」


 危ないところだった。

 ほっとしつつ周囲を見回すと、渚と目が合う。

 渚は私を見て、くすっと笑った。


『さっきのこと、思い出しちゃった?』


 口だけで渚がそう言った。私をからかうような笑顔が狡いくらいに可愛くて、私は両手で顔を覆うハメになったのだった。





「桃華、帰ろ」


 ホームルームが終わると、渚が笑顔で近づいてきた。


「あれ? 今日、応援団の練習だよね?」


 当たり前のように、草壁が私たちの会話に割り込んでくる。


「桃華がまだ本調子じゃないから休むって、伝えといてよ」

「桃華ちゃんはいいとして、藤宮さんも?」

「桃華が一人じゃ寂しいって言うんだもん。ね、桃華?」

「そんなこと……」


 言ってない、と言うよりも先に、渚が私の手をぎゅっと握った。


「……うん。そうなの」

「じゃあ、そういうわけだから。連絡事項とかあったら教えてね」


 渚はそう言って私の手を引っ張った。

 今から私たちは渚の家へ行く。

 そしてそこで、私はまた渚とキスをするんだろうか。





「飲み物持ってくる。コーラと烏龍茶、どっちがいい?」

「じゃあ、コーラで」

「オッケー、ちょっと待ってて」


 渚が部屋から出て、ドタバタと階段を下りていった。

 今日も今は、この家にいるのは私と渚の二人だけ。


 今日は、どういう流れでキスするんだろう?

 そして今日のキスには、どんな理由があるの?


 頭がこんがらがって、あぁ、と変な呻き声が口からもれる。

 両手で頭を抱えていると、二人分のコップを持った渚が戻ってきた。


「ついでにポテチもあったから持ってきたよ。コーラにぴったりでしょ」

「ありがとう」


 私の隣に座った渚が、ポテトチップスの袋を大胆に開ける。

 ポテトチップスを口に運ぶ渚をじっと見ていると、渚に笑われた。


「そんなに私のこと見て、もうキスしたいの?」

「……渚はなんで、私とキスしてくれるの?」


 質問に質問で返してしまったけれど、うーん、と頭を抱えて渚は考え始めてくれた。


「桃華がしてほしそうだし」

「じゃあ、私がしてほしいって言ったら、キス以上のこともしてくれるの?」


 じっと渚の目を見つめる。なんだか、前と逆の立場になったみたいだ。


「桃華」


 いつもより少し高い声で私の名前を呼んで、渚は私の手を引いた。

 そのままベッドに連れていかれて、呆気なく押し倒される。


「キス以上のことって、なに?」

「それは……」

「教えてよ、桃華」

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