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第3話 2回目の人生

 どうして? なんて考えても意味はない。

 だって、考えたって分からないだろうから。


 とにかく、死んだはずの私は高校生に戻ったのだ。


「じゃあ、未来も、変えられるってこと……?」


 渚が他人のものになって、それに耐えられずに自殺した。

 きっとお母さんのこともお父さんのことも、すごく悲しませてしまった。


 そんな未来を、今なら変えられるのだろうか。


「渚が幸せならそれでいいなんて、絶対もう言わない」


 渚を幸せにするのは私だ。


「絶対、渚を私のものにしてみせる……!」





「じゃあ、行ってくるね」


 家を出て、少しだけ歩く。

 渚の家は、うちから徒歩1分のところにあるのだ。


 インターフォンを押す。どたばたと騒がしい音がして、玄関の扉が開いた。


「ごめん桃華、ちょっと準備に時間かかっちゃって! って、桃華、メイクしてきたの!?」

「うん。渚が言ったんでしょ、高校からはメイクして学校行こうねって」


 高校受験が終わってすぐ、渚と一緒にコスメを買いにいった。

 だけど当時の私は化粧品に興味なんてなかったし、結局、面倒で高校にはほとんどメイクをしていかなかったのだ。


「それはそうだけど! 桃華あんまりやる気なかったじゃん。でも嬉しいな、それにめっちゃ似合ってるし! 可愛い!」


 満面の笑みで近づいてきて、渚が私の顔を覗き込む。

 くりっとした丸い瞳に見つめられてどきっとした。


 高校時代の渚も、やっぱり最高に可愛い。


 ブレザーがよく似合っているし、やたらとラメを使ったメイクも渚の顔には合っている。

 髪は染めていないけどちょっと明るくて、肩より少し長いくらい。


 あの男と付き合い始めてから、渚は髪を伸ばすのよね。


 むかつく男だ。渚にはどんな髪型だって似合うのに、わざわざ自分の好みに合わせさせるなんて。


「ありがとう、渚。渚もすごく可愛いよ」

「え!? なに、もう、照れるじゃん!」


 照れ隠しに渚が私の背中をばしばしと叩く。


 高校生の私は恥ずかしくて、心の中で思うほどには渚を褒めることができなかった。

 でも、今の私は違う。


 渚を落とすって決めたんだもの。

 これからは全力で、渚を口説いてみせるわ。


「クラス、一緒だといいね」


 歩きながら渚がそう言った。


「絶対一緒のクラスだと思う」

「なんで?」

「だって私たち、運命の赤い糸で結ばれてるから」

「ちょっと! なにそれ、真顔で冗談言わないでよ」


 もう、と言いながら渚は笑顔だ。


 確かに、私が言ったことは事実ではないのかもしれない。

 渚は私ではなく、あの男と結ばれたのだから。


 でも、神様は私にもう一度チャンスをくれた。

 赤い糸なんていくらでも自分で結ぶし、渚とあいつが赤い糸で結ばれているのなら、何度だってその糸をズタボロにしてやる。


「渚、高校でもよろしくね」

「当たり前じゃん! クラス離れても、絶対登下校は一緒にしようね」

「うん、約束」


 今度は二度と、渚と離れたりしない。

 渚と二人で最期まで生きて、同じ墓に入ってやるんだから。

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