第7話
2日後、いよいよ出発の日。さすがの僕も寝坊することなく、いやむしろ余裕をもって駅に到着しようとしていた。天気は快晴、気温もちょうどいい。荷物は少し重いけど、それを感じさせないくらいに、今日からの旅行を楽しみにしている自分がいる。
駅の改札口が目に入ると、そこには先客が待っていた。
「2人とも、おはよう。」
スーツケースを椅子代わりにしている綾寧と、やたらと荷物が多い翔。一体何が入っているんだろう。
「おはよう。寝坊しなかったな。偉いぞ!」
「まあ、当たり前のことなんだけどな…。」
そんなこんなで雑談していると、境果と恭介も続々とやってきた。
「よし、全員揃ったね。じゃあ行こうか。」
各々で切符を買って、改札を通り抜ける。
「3番乗り場だから、こっちかな。」
「わ、ホームに全然人いないねー。」
「私、こっちの方面に行くの初めてだわ。」
じいちゃんの家の最寄り駅は、この駅から大体2時間ほど。都心とは真反対に進んでいく路線ということもあり、本数も、使う人もとても少ない。いつもは車で行ってたから、電車で行くのは僕も初めてだ。
「あたし、部活の練習試合で一回だけ乗ったことあるよ!」
駅のホーム上で、ぽつん、と寂しそうに建てられている看板を見ながら、恭介がボヤく。
「スカスカじゃねえか、この時刻表!」
「あれじゃないか、俺たちが乗るのは」
翔が指差す方には、ホームの隅にこぢんまりと2両の電車が停車している。ぱっと見た感じ、乗っているのは数人しかいない。
「ほぼ貸切じゃーん!なんかテンション上がる~」
「でも、他の人の迷惑にならないようにね。」
そうして僕たち一行は、向かい合わせの4人席を2つ使って、座席についた。
「ここからどのくらい乗るんだ?」
「途中で一回乗り換えるんだけど…。そこまでは1時間くらいかな。」
「お菓子持ってきた!みんな、食べて食べて!」
そう言って手提げから引っ張り出したのは、チョコレート、スナック菓子…などなど。昔からかなり食いしん坊な奴だけど、全く太っていない。むしろ体型的にはスラっとしている方だ。
「ちょっと綾寧!こぼしてるじゃない…!」
すかさず鏡花がウエットティッシュで綺麗に拭き取る。
「えへへ…ごめんごめん!」
「もう、仕方ないんだから…。」
まるで姉妹みたいなやりとりだ。いや、お母さんと小さい子供…の方がしっくりくるかもしれない。
「お、出発するみたいだぞ」
ギシギシと軋む音を構内に響かせながら、電車はゆっくりと動きはじめた。
いよいよ始まる、僕たちのゴールデンウィーク。徐々に車窓を流れる景色も速度を上げていく。それに呼応するかのように、5人それぞれが期待を膨らませていった。




