第4話
「キーンコーン……」
今日何度目かの、鐘の音が校内に響き渡った。6時間の授業を乗り越えた生徒たちは、開放感に溢れている。それは僕たちも例外では無かった。
「っしゃあ!授業終わりぃ!」
「魔の6限数学をよくぞ乗り越えた!ナイスファイトー!」
教室の後ろから綾寧たちの声がした。授業が全て終わった途端、小さな子供のようにはしゃぎあっている。なんか、微笑ましいな。
かく言う僕は、窓の外を眺めながら連休のことを考えていた。どんなことをしよう。
時間はたっぷりあるし、ある程度は向こうですることの目星は付けておかないとな。
「晴太、集合だ。」
どこからともなく翔が現れる。窓の外に気を取られていて、全く気が付かなかった。そのまま連れられて、いつもの5人が勢揃いする。
「よし、全員揃ったな!今日はこの後------」
「買い出しに行きます!拒否権はないからね〜?」
いきなり、放課後の予定が決定する。まあ今日は特に何も無かったから良いけど。
「さっきの授業中、やたら騒がしいと思ったら、そういうことだったのね。」
恭介と綾寧は隣の席同士だ。2人ともおしゃべりな奴で、さらに1番後ろの席という好立地。こうなるのも無理はないだろう。
「えへへ…ごめんごめん!それで、みんないける?」
ここで、悔しそうな顔をしている翔がふと目に入った。
「なぜ…今日に限ってッ…!」
「あー…。もしかして塾?」
「ぐぬぬ…。休みの連絡をっ…。」
「ちょっ、ダメダメ!ちゃんと行かないと!」
「いきなり決めて悪かったな。すまん。」
確かに突然決まったことだけど、出発は明後日に迫っている。どの道、行くとするなら今日くらいしか無かっただろう。
「ごめんなさい。私も今日はレッスンが…」
鏡花は昔からピアノを習っている。かなり規模の大きい演奏会に参加するほどの腕を持っているらしい。中学の合唱コンクールや卒業式の時も、演奏を任されていた。
「あちゃー。まあ仕方ないし、3人で行こっか。」
どうやら僕には予定がない前提らしい。実際そうなんだけど。
その後、駅まではみんなで歩いた。その間はずっと連休の話題で持ちきりだった。バーベキューにビーチバレー、肝試し…。みんなが思い思いの想像を膨らませていた。
やがて駅の到着すると、改札前で2人を見送る。何度も名残惜しそうにこっちを振り返る翔を見て、申し訳ないけど吹き出してしまった。10回は超えていたぞ…。