第3話
(〜〜〜♪)
軽快なメロディが、意識をはっきりさせていく。
ぼやけた視界のままアラームの停止ボタンを押して、はっと気が付く。
(夢、見なかったな…。)
なぜ、夢を見れなかったのか。昨日との違いが分からない。もしかして、なにか条件でもあるのだろうか。
(とりあえず、準備するか。)
いつものように身支度を済ませ、学校へ向かう。今日は少しだけ早く起きられたので、昨日みたいに急ぐ必要は無い。
珍しく行き道にあるコンビニに寄って、コーヒーを買ってみた。なんか大人になった気分だ。
そうこうしている間に、教室にたどり着いた。
(みんなに昨日のこと、伝えないとな。)
そう思いながらドアを開けると、恭介以外の3人が輪になって話していた。
「おはよう。昨日の話の続きなんだけど…」
「おはよう!で、どうだった!?」
目をキラキラさせながら が聞いてきた。
「空き家、 使っても良いらしい。」
「よっしゃあああ!!」
僕が答えた途端、かなりの声量と共にガッツポーズをする。さすがにオーバーリアクションだろ。
「ちょっと 、声大きいって…」
全身で喜びを表現しているところを、境果がたしなめる。
「でも空き家になってかなり経ってるから、掃除からしないといけないぞ。」
「ノープロブレムだ!俺たちに不可能はない!」
まるで共鳴するかのように、翔もハイテンションになっている。全く賑やかな連中だ。
「恭介は…。朝練でも行ってるのか?」
「そうみたいね。私たちが来た時、グラウンドで走り込みをしていたわよ。」
「そうか。じゃあまた後で俺から伝えとくよ。」
朝から大変だな。もし僕が運動部に入っていたら……。1週間も持たなかっただろう。
「それで、集合場所と時間なんだけど。電車で2時間くらいかかるから、いつもの駅前に8時集合でみんな大丈夫か?」
天観駅はみんなの家の最寄り駅だ。
5人とも同じ中学に通っていたので、同じ駅から学校に通っている。
実を言うと入学してすぐの頃はみんなで登校していたのだが、恭介が部活の朝練に行くようになったり、僕が寝坊の常習犯だったり…。いろんな要因が重なって、バラバラに来るようになった背景がある。
「8時ね、おっけ〜!」
「電車の本数少ないから、寝坊は厳禁な。誰かさんみたいに」
ちょっと小ボケを挟んでみる。
「お前のことだろう!」
すかさずツッコミが入る。そして数秒間の沈黙の後…。
「「あははははっ」」
あっという間に僕たちの輪は、笑顔で満たされた。こんなところも、居心地が良い所以だったりする。
「本当に、くだらないんだから…。」
そんなことを言いながらも、口元の緩みが誤魔化せていない。
「よーっす!遅れたわ」
部活仕様のカバンを引っ提げて、恭介が堂々と教室に入ってくる。
「お疲れ〜。8時駅前ね〜」
有り得ないくらい雑な説明だ。これで理解できるはずがーーーー。
「了解!持って行った方がいいもんあるか?」
「いや、なんで今のだけで分かったんだよ」
思ったことがそのまま口に出てしまった。
「以心伝心ね。」
まあ、2人はなんとなく似ているところが多い気がする。似たもの同士、通じ合っているのだろうか。
「でもよー晴太、8時って起きて来れるのか?寝坊すんなよっ!」
軽く肩を叩かれる。
「大丈夫。この僕が、寝坊するわけない。」
「あははっ、またそのネタやるの?」
「2周目、いっとくか!」
そんなこんなで、授業前のひと時は過ぎてゆく。みんなと話したせいか、連休の予定が現実味を帯びてきた。実際、かなり楽しみだったりする。どのくらいかというと、遠足前日の小学生くらいだ。おかげで今日の授業中は、あまり眠気を感じなかった。