第22話
「そういやさっきの話、綾寧たちにはするのか?無理に言う必要はねえと思うけど…」
「もちろん、僕の口から全部話すよ。」
途中の自販機でそれぞれジュースを買って、飲みながら3人で家の方に歩いていく。我ながら青春っぽいことしてるな…と感慨深い気持ちになる。
やがて家に着いて、残りの2人にもさっきの話をした。
彼女たちは涙を堪えながらも最後まで、真剣に話を聞いてくれた。
「ごめんなさい…、気づいてあげられなくって…。」
「正直に話してくれて…、ありがと、晴太。」
本当に自分のことみたいに受け止めてくれているんだな、と思った。
それと同時に、さっきまで抱えていた今後への不安とか、焦りみたいなものが軽くなったような気がする。
誰かに心の内を打ち明けるだけでも、こんなに気が楽になるものなのか。
「私たち、晴太の為ならなんだってするから!」
「うん…、本当に心強いよ、ありがとう。」
明日から、いやもう今日から忙しくなるだろうな。やらなくちゃいけないことは文字通り、山積みだ。でも、今の僕なら全部なんとかできる気がする。
さっきまでの僕は、もういない…!
「もう12時か…。」
確か買い出しに行くのに家を出たのが9時くらいだった気がする。
色んなことにひと段落がついた途端、急に空腹感を感じてきた。
ん…?ちょっと待てよ…?
「あ、買い出し行くの忘れてた」
すっかり忘れてしまっていた。そういえば帰り道に寄っていこうとしてたんだったな…。
「まあ、あんな事があったんだ、仕方ないさ。」
「今日のお昼はどんな感じ?」
「もう食材は残ってないし…。今から作ると遅くなっちゃうから、スーパーまで買いに行きましょう。」
「そのついでに買い出しもやっちゃおうぜー!」
そうして初日みたいに、みんなでスーパーまで歩いて行った。
なんだかようやく、日常が戻ってきたみたいな気がする。いつもみたいにみんなと他愛無い話で盛り上がって、自然と笑顔になる。行きも帰りも、あっという間に時間は過ぎて行った。
家に帰ってくるなり、すぐに昼食を食べ始めた。
「今日は昼メシ食ったら体育館行くぞー!」
「予約はもう済んでいるわ。とりあえず2時間分、取っておいたわよ。」
「ねぇねぇ!あたし、バスケやりた~い!」
「フフッ…。腕が鳴るな…!」
時間が迫って来ていたので、少し急いで昼食を取った。
ここから体育館まではバスでも20分くらいかかるので、乗り過ごしたら厄介なことになる。
なんとか間に合わせて、ギリギリのところでバスに乗り込んだ。
そこからはあっという間だった。
バスケ、サッカー、卓球…。向こうに置いてあった用具でできるスポーツはほとんどやり尽くした。2時間借りていたけど、体感では本当に一瞬だった気がする。
それから家に戻ってゴロゴロして、夜ご飯を作って食べて、お風呂に入って…。
気がつくともう、寝る時間になっていた。
「なんか今日、一瞬で終わった気がするよ。朝は色んな事があったのに。」
「時間を忘れるくらい楽しめていた、って事じゃないか?」
「もう明後日には帰っちまうんだよなー。ずっとここで暮らしてたいぜ!」
3人で寝転がりながら、雑談をしていた。ここでふと、恭介に話を振ってみる。
「それでさ、恭介の好きな人は誰なの?」
「ぶっ!いきなりなんだよ!」
明らかに動揺し始めた。ちょっと不意打ち過ぎたかな…。
「俺と晴太は正直に全部話したんだ。もっと詳しく話を聞こうか…。」
この流れに翔も便乗して来た。意外にも興味を示している様子。
「それを引き合いに出すのはズリーだろ…。まあ仕方ねえな…。でも“絶対に”誰にも言うんじゃねえぞ!?」
「当たり前だよ、そんなこと」
「さあ恭介、白状するんだッ…!」
僕と翔は目を輝かせながら、恭介の答えを待つ。
しばらくすると、どこかキリッとした表情で、ある人物の名前を口にした。
「俺が好きなのは……綾寧だ。」
『えええぇぇぇぇぇーーーーー!!?!?!?』
「おい!声でけえよお前ら!隣に聞こえたらどうすんだよ!?」
あまりに予想外の答えに、僕たちは思わず叫んでしまった。
「いやぁ…。ちょっとびっくりだよ…」
「いつから好きになったんだ?よくここまで隠して来れたものだな。」
「好きになったのは…?まあ、中学に入ったら頃くらいからだなー…。」
「なるほど…。3年も片想い中か。大変だな、恭介も…。」
これまでほとんどの時間を一緒に過ごして来たけど、全くそんな素振りは見せてなかった。
「なるほど。だから一度も付き合わなかったわけだな。」
前にも言ったが、恭介はかなりモテる奴だ。同級生からも後輩からも人気があったし、告白だって何回もされていた。
バレンタインデーなんかには、カバンいっぱいにチョコを貰っていたしな…。
「え、それじゃあ告白はいつする予定なの?」
「それが問題なんだよ。綾寧にはもう彼氏がいるかもしれねえしよ…」
「いやぁ…。いないと思うけどね、僕は。」
「でもよ、あいつって結構男子とも仲良く話してるじゃんか?」
「それはお前にも言える事だぞ、恭介。誰とでもフレンドリーに接しているだけじゃないのか?」
「それはそうだけどよ…。」
恭介も綾寧も、性別関係なく誰とでも仲良くなれるタイプだ。僕が言うのもなんだけど、かなりお似合いの2人だと思うけどな…。
「1番心配なのは、仮に告白したとして、今まで通りにできるかって話なんだ。」
「振られたら、ってこと?」
「ストレートに言うんじゃねえよ!デリカシーってモンがないのか!?」
「まあ多少は気まずくなるだろうが…。それで諦められるような恋じゃないだろう?気持ちはよく分かるぞ。」
なんか、妙に説得力があるな…。こう、言葉に重みがあるというか…。
「お前たちは、いつ告白するのがいいと思う?」
「やっぱり夏祭りで花火を見ながら…とか、クリスマスにイルミネーションを見ながら…とかじゃない?」
「うーん、実際にやるってなると緊張するな…」
「それだけ真剣な恋ってことだ。微力ながら、応援しているぞ!」
「僕も、気の利いたアドバイスはできないけど…。頑張って。」
難しいよな…、恋愛って。告白したら積み上げて来た関係が崩れてしまうかもしれない。
けど、想いを伝えないことには進展しない。少なくとも、僕にはそんな究極の2択を選択できるような勇気はない。同じ男として、ちょっと尊敬だな。
こんな恋バナで盛り上がったあと、みんな眠りについた。
今日はようやく、ぐっすり寝られそうだ…。




