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第21話

まだ時間的には昼だけど、今の時点で今日は激動の1日だった。

早くみんなのところに戻らないと…、とは思いつつも、今の状況とか、気持ちだったりの整理を付けたくて、何となく海岸の方に出てきていた。

昨日のように、ずっと遠くの水平線を眺めながら、さっき聞いたことを思い返していく。


「………くっ…。」


1人で静かな場所にいると、つい感傷に浸ってしまう。

涙を必死に堪えようと、上を向いて空を見上げてみる。

僕の気持ちとは対照的に、太陽は、とても目を開けていられないくらいの光を、容赦なく浴びせてくる。


ずっとこのまま、自分の殻に籠っていたいとさえ思う。悲しさや悔しさといった感情に打ちひしがれながら。

じいちゃんの前では強い自分を見せて来たけど…。

今だけは、あと少しだけ、こうしていたい。

こんな顔でみんなのところに戻るわけにもいかないし……。




「こんなところにいたのか。晴太。」

馴染みのある声が、背後から聞こえて来る。そこにいたのは、翔と恭介だった。

「全く、心配してあちこち探したんだ…ぜ…?」

僕の顔を見るや否や、言葉を詰まらせる恭介。まあ、こんな酷い顔してちゃ無理もないか…。

「あ…、ごめん。ちょっと色々あって。」

「色々って、一体何があったんだよ!?」

「はは…。長くなるけど、全部話すよ…。」

今更隠すようなことは何もない。

昨日から今まで、どんなことが僕の周りで起きていたのか、その全てを2人に話した。


破かれた僕の写真を見つけたこと。買い出しの途中で、叔父に会ったこと。その人は、ばあちゃんが亡くなって以来、精神を病んでしまっていたこと。ばあちゃんは病気でなくなったのではなく、行方不明のままだということ。


そしてその原因は…。僕にあるかもしれないということ。


かなり長い間、一方的に僕が話し続けることになった。でも彼らは真剣に、話を最後まで聞いてくれていた。

「信じられないよな、こんな話…。」

少し自虐気味感じで、2人に笑いかける。全部話し終わったけど、なんとも言えない雰囲気が僕らの間を漂っている。

そりゃそうだよな。こんな重い話をいきなりされたら誰だって、なんと返すべきか分からなくなるものだろう。

お互いに目線を合わせることもなく、気まずい沈黙がしばらく続く。


そんな均衡を破ったのは、翔だった。

「晴太。俺はこの前、医者になりたいと言ったな?あれは嘘だ。」

突然何を言い出すかと思えば、謎のカミングアウトをし始めた。かなり前から医者になると言っていた気がするけど、あれって嘘だったんだ…。

「俺の家系は、代々医者をやっていてな。父親も、総合病院で働いている。小さい頃から、おまえは医者になるんだと言われながら育って来た。俺自身も、両親を喜ばせてあげたいと思って、勉強を頑張ってきたんだ。」

翔の父さんは確かに医者だ。何回か会ったことがあるけど、いかにも白衣が似合いそうで、少しだけ頑固そうな人だったのを覚えている。

「いつだったか…。みんなに勉強を教えたことがあったな。」

僕も覚えている。おそらく中学の時の話だ。あの時は数学の授業が難しくて、みんな困っていた。そしてテストを直前に控えたある日、放課後の教室で勉強会をすることになった。

そこでの翔は、大活躍だった。みんなの質問に答えたり、対策問題を作ったり…。

結果として、その年だけ異常に平均点が高かったと、先生は言っていた。

「それ以来、俺は誰かに勉強を教えられるような仕事をしたいと思うようになった。教師でも、塾講師でも、なんだって良い。それが俺の…夢になったんだ。」

まさか、そんなことを思っていたとは…。神社で感じた違和感がようやくスッキリした。


でもどうしてもこのタイミングで、この話を…?

「俺が正直にこの話をしたのは、お前たちが最初だ。というか、お前たち以外にこの話をするつもりはない。……それくらい、信頼しているんだ。」


……。信頼、か。

僕は幼馴染のみんなのことを、信頼している。胸を張って言えるくらいには…。

でも今回の一件に関して、僕は壊れそうになるまで1人で抱え込み続けてしまった。

信頼できる仲間が、こんなにもすぐ近くに居たのにも関わらず。


「俺は、いつでもお前の力になる。できることなら…。いや、できそうにないことだって、お前の為ならなんだってできる。それにいつでもそばにいるのは、俺だけじゃない。」

そう言って翔は恭介の方に目をやる。

少し困ったような顔をしながら、恭介も話し始める。

「改めて言うと小っ恥ずかしいなぁ…。まあ細けえことは気にせずにさ、俺たちのことを頼ってくれよ!ダチなんだからさ!」


思わず、さっきみたいに目頭が熱くなった。


「ごめん…。…じゃなくて、ありがとう……!」


1人で悩みを抱え込まなくっても良い。辛い時には、感情を曝け出して泣いたって良い。

いつでも、何回でも、みんなに助けを求めたって良い。昨日までの僕はこんな簡単なことにさえ、気が付けずにいた。


「よし…!」

グッと右手に力を込めて、もう一度空を見上げる。

立ち向かうんだ。この現実に。

取り戻すんだ。過去に置いてきてしまった、たくさんの後悔を。


「さあ、家に戻ろう。もたもたしてると、あっという間に夜になるぞ。」

「明後日にはもう帰っちまうんだぜ?まだ来たばっかりなのになー」

本当に色々なことがあったけど、ここに来て今日で3日目。今でちょうど半分くらい、といったところだろうか。

まだまだやることはたくさんある。みんなとの時間は、1秒も無駄にはできない。




ここから、忙しくなるぞ…!

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