第2話
「…!!」
目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋だった。すかさず時計に目をやると、18時。30分ほど時間が経っていた。
「夢を見ていた…のか?」
ついさっきまで、ある女の子と話していたことを、確かに覚えている。まるでこの世界とよく似た世界がもう一つあったような、そんな気がする。夢にしては鮮明すぎる記憶を、しばらく思い返していた。結局、あの子は誰だったんだろう。なんで全く違う場所にいたんだろう。でも、なんとなく、考えても無駄なような気がした。根拠なんてないけど、思い出す以前に、そもそも記憶を持っていないような。
「ご飯できたけど〜?寝てるの??」
ドアの向こうから、妹の声がする。とりあえず気持ちに区切りをつけて、リビングへ向かうことにした。
「すぐ行くよ。」
扉を開けると、母さんと妹が待っていた。父さんは基本的に仕事で帰りが遅いので、3人で食べることがほとんどだ。
「いただきます」
箸を進めながらも、さっきの夢のことが頭から離れない。
「晴にぃ、大丈夫?なんかぼーっとしてない?」
妹が心配そうに聞いてくる。他人から見ても分かるほど思い詰めた顔をしてしまっていたのか…。
「いや、寝起きなだけだから。大丈夫。」
正直、こう返すしかなかった。話せば長くなるだろうし、なんとなく家族に相談するのは恥ずかしい。
「そういえば来週の試合のことだけど———」
母さんが話題を変えた。その後はいつものように他愛ない話をしつつ、夕食を食べ終えた。ある程度食器の片付けをしてから、自分の部屋に戻り、なんとなくカレンダーを眺めてみる。
(今年の連休は5日か…。)
毎年、休みが始まるまでは待ち遠しく思えるけど、いざ始まってみるとあっという間に時間か過ぎていく。
これは休みに限った話じゃなくて、人生そのものにも言えるのかもしれない。中学の3年間だって終わってみれば一瞬だった。
高校も、その先も———。似たようなことの連続で、時間を消費していくのだろう。そう思うと、なんとなく不安な気持ちになる。僕には何も特技や長所と言えるものがない。今までもごく普通の、平凡な人生を歩んできた。それが悪い事だとは思ってないけど、なにか、自分らしさと呼べるものが欲しい。このまま何も変わらないと、きっと将来、後悔することになるだろう。
………。ついネガティブな思考に陥ってしまう。
とりあえず考え込むのはやめにして、学校で出された課題をこなしてから風呂に入り、今日はもう寝ることにした。
(夢、見るかな…。)
期待や不安、いろいろな感情を抱えたまま、意識は深くに落ちていく。