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目が合う瞬間、

作者: 瑠歌


ガタンゴトン

カダンゴトンガタンゴトン


毎朝同じ時間同じ場所に乗り、その人を見つめることが日常となった。


背は少し高め

がっしりとした背中

耳にはイヤホンをかけ、好きな音楽なのか時々首をコクコクと振るその仕草を見るだけで、癒される。

ラッキーな日は背中ではなく顔が見れる日もある。

穏やかな瞳を宿しながら、携帯を触る大きな指。


その穏やかな瞳をもっと近くで見たいような、

このままずっと遠くで見ていたいような。

そんな、恋なのか羨望なのかどうかも分からない甘酸っぱい気持ちをかれこれ1ヶ月ほど抱いている。


変質者と間違われても可笑しくない。


そう思いながら気がついたらいつもの定位置に立ち、彼の姿を目で追う生活が続いている。


とうに成人なんて超えて、こんな甘酸っぱい気持ちを抱くとは思わなかった。だけど今は声をかける等とてもじゃないが出来ない。

だから今のままで十分満足。


そんな些細なルーティンをこなす様に、

今日も電車に乗る。

いつもの定位置に立ちひとつ呼吸


そして彼がいつもいる場所に目を向ける。


今日はいなかった。

仕事に行く時は必ず居たから少なからずショックが大きい。

いつかは終わる可能性も分かってたけど、どうしても心が沈んでしまった。


頭が真っ白になりながらもいつもの駅で降り、慣れた道を歩きながら会社に向かう。


都心の人通りももう慣れたものだ。

人波に逆らわず、会社へ入りエレベーターに乗り込もうとすると、前から見慣れた人影。


目を細め緩く手を振り、彼女を出迎える


「七瀬さん、おはよう。」


「人見さんおはよー!」


同じ部署の同期の七瀬 華さん。

黒髪ロングのツヤツヤな髪が自慢の我が会社の出世頭である。

人当たりがよく、表裏のない彼女の性格は皆交換を持っている。

私も彼女と比べられて苦しい時期もあったが、持ち前の負けん気の強さを生かし、今ではライバルと胸を張って言えるほどに張り合えてはいる。



「今日も一日頑張らないとねー。てか人見さん聞いた?今日から新しい課長が来るみたいよ。」


「波多野課長の後任だよね?もうすぐ産休に入るから。」

「そうそう。今度は男性みたいよー!!イケメンだったらどうしよう!」


キャーと言いながら、顔を抑える七瀬さんに思わず苦笑いをする。

こんな彼女でも絶賛婚活中で、連敗中みたいだ。

彼女の理想が高く、こっぴどく振っているそうだ。


「ちょっとやめてよー。七瀬さんに限ってないとは思うけど、仕事やりにくなるのは嫌よ。」


「私がそんなことするわけないでしょ!そこら辺は上手くするから」


にっこり笑いウィンクを決める彼女に、思わず笑いがこぼれる。

彼女のこういう所が憎めない部分でもあるのだ。


「まぁ、人見さんは電車の彼がいるもんねー。さっさと話しかけなよ」

「彼はそういうのじゃないから!!しかももう、会えないだろし」


チーん

エレベーターが目的に到着した音が鳴る


七瀬さんは話の続きを聞きたそうにしてたけど、

自部署の扉に手をかける。



開いたその先には、

ずっと見ていた彼がそこにいた。


思わず目を見開き固まる私


そんな私にどうしたの?と声をかけてくれてる七瀬さんには悪いけど、胸の鼓動の高鳴りとまさかの事態にオーバーヒートになりつつある私。



扉の開ける音に気がついたのか、彼がこちらを向いたその瞬間


初めて目が合った。


ニコッと笑う顔も

綺麗な目も

全てに魅せられて、胸の鼓動が止まらない。


そんな私を他所に彼はこちらに歩み寄ってくる。



「はじめまして。本日から配属になりました。

田島です。よろしくお願いします。」


「は、はじめまして!人見と申します、、!こちらこそよろしくお願いします。」


「一応君たちの上司になるけど、分からないことばかりだから、頼らせてもらうよ?」


へにゃっと垂れる眉が可愛くて、何も言葉が出ない。

頭の中はバニックでいっぱいとなった。

そんな、まさかと頭の中で発狂してるが

事実は至極簡単




目が合う瞬間、恋に落ちた




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