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約束事

 

 私は雀荘のスーさんと取引した通り、夕飯を食べていました。

 夕飯は大盛りのチャーハンと、ビールでした。


にしま「くああああ♪大学の時に読んだ漫画の誰かのセリフをそのまま使わせてもらうと、『悪魔的』に美味いわ!♪ビールは最高!!!人類最大の発明だ!!」


 周りを気にせずに食事を満喫していました。

 実家に入れるお金も無いので、今晩のご飯は本当に助かりました。



ハイリ「ねぇねぇ、にしまさんって独身なの?」

にしま「ああ、そうだよ。結婚してたら多分雀荘で働かないかも。もっと昼間の仕事してるんじゃないかと思うんだよな」

ハイリ「だよねぇ。いやにしまさんが履いてるサンダルがすり減ってて薄いから、ホテルのアメニティーのサンダルかと思ったわ(笑)」


 確かに・・・・この今履いているサンダルはここ何年も履いており、完全にすり減ってしまい買った当初よりも大きさが随分小さくなっていました。元々のソールの半分くらいの厚みになっていました。


にしま「だなー、これは使い込んどるわ。鰹節みたいに削れてやがる(笑)アメニティーは言いすぎだろ(笑)まだ歩くと痛くなるほどにはなってないからまだ使います」


 これからは食事だけでなく、身の回りの衣類もちゃんと買わなければなりません。要は人間の衣食住を自分で考えていかなければなりません。


ハイリ「ここで働かないの?仕事ないんでしょ?」

にしま「うーん、どうだろうなー、人数は足りてるんでしょ?仕事の流れさえ教えて貰えれば、ピンチヒッターくらいにはなれそうだけどな・・・・・代打ちとか・・・掃除とか・・・出来ない事もないけどなぁ・・・・」

ハイリ「今はスーさん、私、シュンの3人で回してるような感じかな。今日はスーさんとシュンが閉店までで、私はもうすぐアガリ。この後二人でどっか飲み行く?」

にしま「あっいいよ、じゃあそのハイリが居たっていうこのビル一階のスナックでも行ってみるか(笑)」

ハイリ「えっいいよ」

にしま「は?(笑)ちょっと笑いを取るつもりで一階って言ったんだけど、全然向こうとは今気まずくないんだ?」

ハイリ「全く問題なしだよ。私なんか福利厚生か知らないけど滅茶苦茶安く飲めるからそこがいいわ。にしまも従業員になったって嘘ついて安く飲んじゃおうよ」

にしま「従業員かどうかなんて確認したらすぐバレるだろ(笑)元々三人しかいない会社なんだろ?」



 ガタンッ!!


 私達が打っている二つ隣の卓で、大きく何かを叩く音が聞こえます。



青年「はぁ?!・・・・・金が無い!?どういうことだ!?」

おっさん「ショバ代だけは払えるんだけど・・・・・」

※ ショバ代 = 場所借り代金



青年「舐めてんじゃねぇぞ、このジジイ!!」

 青年はおっさんの胸ぐらを掴みます。


にしま「・・・なんだなんだ?・・・・」

ハイリ「・・・・あー、お金が無いのに打ちに来る人が居るのよ」

にしま「そういうことか・・・・・」



おっさん「誰か助けてくれぇ・・・・」

 直ぐに奥から青年がやってきました。


ハイリ「シュン!またあの人だよ!」

 ハイリが胸ぐらを掴まれているおっさんに向かって指を刺します。


シュン「フリー打ちなんだからさぁ・・・・・手持ちがあるかどうかは確認してから打ってくんねぇかなぁ。」

 シュンは呆れた顔でその光景を眺めています。

 

青年「はぁ?・・・あるって言ったじゃねぇか!じじい!!」

おっさん「だからショバ代だけ・・・こんなに負けると思わなかったんだよぉ・・・・・・」


 私はスクっと立ち上がって卓の方に行きました。



にしま「常連さん?・・・」


おっさん「そ・・・そうだよ・・・・」

にしま「なら、尚更しっかりしとかないと出禁になるぜ。兄ちゃん、離してやって」

青年「はぁ?・・・・あんたが代わりに払うのかよ。」


にしま「暴力だけはやめて欲しい。別の事件になっちまうぞ。それでもいいのか?」



 ググッ・・・・・


 私は青年の腕を掴みました。


青年「・・・・な・・・・・この店は用心棒なんか雇ってんだな!!!」

にしま「はぁ?用心棒じゃねぇってば、本当にこれ以上は駄目だ。もし手を出して話を済ませるって言うならショバ代払って、ここから外出て、ビルの外出て、ここの従業員が見えない所でやってくれないか」


 青年はおっさんから慌てて手を放します。


おっさん「ひいぃぃ・・・ありがとうございます・・・」

 おっさんは私の方に逃げるように駆け寄ってきました。


にしま「ハイリ、このおっさんに一筆書かせろ」


ハイリ「一筆??・・・何をさせるの?・・・・・」


にしま「いいから・・・・」



 常習犯・・・・・店を出入り禁止にしようと前々からスーさんは検討していたそうですが、長年の付き合いで勤め先も分かっている間柄でもあり、そういう信頼関係はあると判断していた為、これまで目を瞑っていました。


にしま「これまでのツケも・・・・・」

 私は口約束になるのは良くないと考えた為、返済を必ずするという念書のようなものを書かせようとしていました。


スー「あら?!・・・・またぁ?!」


 騒ぎに気付いたスーさんも奥のVIPルームからやってきました。

おっさん「スーさん・・・・・」


 どうやらこのおっさん・・・ここでたまに人数が足りないと入るバイトのような事もしているそうでした・・・。


スー「この人ゴバラさんって言ってさ、勤め先がいいとこなんだよ。半分公務員みたいな仕事してる人でさ。しかも独身で麻雀以外にお金を使う事がないからさ。いつかは回収できるかな・・・なんつってね。俺は甘いか?にしま」

にしま「甘いとかそういうレベルじゃない。スーさん、良い機会だ。口約束はやめとこう。書面だ」


 シュンが慌ててこちらにやってきます。



シュン「にしまさん、すいません。俺が間に入らないといけないのに。」

にしま「いや、良いんだよ。困った時はお互い様。・・・チャーハン作ってくれてありがとう、美味しかったよ」

シュン「すいません、あれチンです。レンジでチン・・・・。調理師免許がないので。」

にしま「いや・・・・いい温かさのチャーハンだった(笑)」


 さっきの殺伐とした雰囲気が一気になごみました。



にしま「ゴバラさん、定年いつだい??」

ゴバラ「2年後だよ・・・」

にしま「この店のツケや、常連へのツケ、飯代、ショバ代も含め全てのツケは退職金で支払いますと書いてください。これからは退職金担保で麻雀して下さい。ここに拇印して・・・・・」


青年「はぁ?!このクソボケがぁ!!俺は今すぐ金が欲しいんだよ!なんでこいつの退職後・・・2年も待たないといけねぇんだよ!!」


 青年はご立腹です。たまたま立ち寄ったフリー打ちで勝ったのに金が貰えない・・・一見でもう来ないかもしれないのに、回収が今すぐじゃないと話が纏まらないというのです。


にしま「あぁ・・・ゴバラさん残念・・・・その腕時計を青年に渡してください。それでチャラにしましょう・・・・。」


ゴバラ「これは・・・・・父の形見の・・・・・ロータックス・・・・」


スー「形見がどうとか・・・そんなもん知らん。なんだったら靴もスーツも全部脱げ」



 渋々、腕時計を渡すゴバラ・・・・。


にしま「この通りに俺が知ってる『ハネフ』っていう質屋があります。そこだと割とこっちの言い値で買い取ってくれます。多分今日の勝ち分以上にはなるでしょう。にしまからの紹介で来たと言っておいてください」


青年「なるほどね・・・・・まぁそうさして貰うわ!ショバ代はこのおっさんのツケで宜しく!!」


 そういうと青年は颯爽と出ていきました。


 ガチャン!!・・・・・



にしま「ゴバラさん・・・・給料出たら直ぐ『ハネフ』行って形見の腕時計買い戻して下さいね。他の人に買われないうちに行って下さい」

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