ハイリの事情
私は、ハイリと暫く麻雀をしていました。あの・・・決して若い娘と遊んでいるわけではございやせん。・・・・彼女にしっかりとガチンコ麻雀道を教えているのです。
ハイリは基本的なルールはスーさんから聞いて知っているようですが、先ヅモしたり、牌をこぼすチョンボを毎回毎回、局の度に繰り返していました。
※ 先ヅモ=こっちがまだ捨て牌を切ってないのに、先に山から牌をとること
※ チョンボ=反則のようなもの(失敗を含める)。厳しい場所や致命的なものは罰符
にしま「まだ牌を触るのに慣れてないな。・・・あと自分の『手』が強いと『強打』するのはやめた方がいい。バレるぞ、当然意識的にしてるわけではないだろうけど」
ハイリ「えっそうなの?・・・・どうしてバレてんの?・・・・」
にしま「今の状況だと、萬子が場に出てない=場況を読まないといけない。ハイリが強打して俺が捨てる牌を『萬子』かどうかジロジロジロジロ見てる感じだよね・・・今。恐らく、良くて九蓮宝燈でも狙ってる?強打してる所見ると一気通貫ではなさそうだね。」
※ 萬子=一萬~九萬の牌
※ 場況=その一局一局の状況。捨て牌状況など
※ 九蓮宝燈=萬子の役満
※ 強打=捨て牌を強く場に叩きつけるように置く事
※ 一気通貫=1~9を揃える事(役としてはそんなに強くない)
ハイリ「にしまさん・・・・なんでバレてんの・・・・」
にしま「いや(笑)・・・これまで何局かやってハイリの癖なんかとっくに掴んだわ(笑)言っとくけど2人打ちだからあれだけど、ヨンマだと九蓮宝燈なんかそうそう作れる手じゃないからな。いけるなら狙っても良いんだけど、手が強いから強打みたいなあからさまな変なクセだけはマジでやめたほうがいい。いつも同じ感じでふんわりと置くんだ」
ハイリ「ふわっと・・・」
にしま「そうそう・・・・ふわっと・・・・」
ハイリ「ふわぁっ・・・」
にしま「ふわ・・・・」
2人「・・・・はっはっはっは!!」
ハイリ「言い方だけでしょう!(笑)」
※ ヨンマ=4人麻雀
大体の流れはこれで教える事ができたので、とりあえず簡単なやつを一つ教えておこう。
にしま「それじゃあ別の事を教えるぜ・えー--っと・・・・・・・・この何も書いてない牌がハク、この緑色で『発』と書いてあるのがハツ、赤色で『中』と書いてあるのがチュンだ」
ハイリ「ハク、ハツ、チュン・・・・」
にしま「そう、これは三元牌といって他の牌とは格が違うんだ。」
三元牌=ハク・ハツ・チュンの三種類
ハイリ「・・・字牌の東南西北とはどう違うの?」
にしま「細かい種類としては三元牌と風牌の2つに分かれる。」
風牌=東・南・西・北の4種類
にしま「三元牌はハク・ハツ・チュンのうちどれか1つを3個揃えるだけで一つの役として換算される。これが一番・・・とまで言わないけど簡単な役。早上がりとかする時に好んで使う人間も居る。役としては弱いけど親流しとかで早打ちでこれをわざとやったりもする。親からしたら安い1000点で上がられても流れるから結構嫌がられるけどな。ツイてる奴が親の時にやったりする戦法でもある。」
親流し=相手の親を終わらせる
ハイリ「・・・・・にしまさん滅茶苦茶詳しいじゃん」
にしま「いや、これは初歩中の初歩だ。・・・というかここまで一緒に麻雀やって思ったけど、ハイリは何故雀荘で働いてる?麻雀好きだから雀荘に入ったんじゃないの?あと、多少は麻雀知ってるとかで」
ハイリ「それが違うのよ。麻雀なんか全然やったことなかったのよ。・・・あっでも当然雀荘に来るお客さんにお酒とかチンして、頼まれた料理くらいは出せるんだけどね。・・・・私元々はこのビルの1階のスナックで働いてたんだよね。ボーイと付き合っちゃってボーイはクビ、私はそのまま3階雀荘に行かされたんだよ。」
なるほどな・・・・
にしま「あー・・・・その・・・あれか・・・・ご法度をおかしたってこと?んで男の方を悪くしたのか、そういうことか」
ハイリ「そうそう、そういうこと。でもこれ最終的に全部みなみさんが決めたんだよ。ボーイが辞めさすなら裁判起こすとか怖い人呼ぶとか言い出して、始末がつかなくてオーナーが直ぐにみなみさん呼んだ。」
にしま「みなみが間入ったの?・・・あいつそこまでこのビルの内情に入り込んでんの?」
ハイリ「そうだよ。だってそもそも私みなみさんの紹介でスナック勤めたもん。この町働き口がなかなか無くてさ、途方に暮れてたんだよ。家賃滞納して・・・・電気も停まって・・・・水道も止まりかけて・・・・ホームレスになりかけてた時に、駅で優しく声をかけられた」
にしま「はぁ・・・そういうことか・・・・大変だったな・・・。」(まぁ、今の俺も似たようなもんだ・・・・。)
ハイリ「友達のにしまさんに言うのもおかしいけど、みなみさんって何考えてるかよくわかんないよね。私ここだけの話、あまり心から信用はしてないんだ。・・・次の職業こうやって探してくれたのはいいんだけどさ、なんかね」
にしま「そういう接し方で良いと思う。向こうはハイリの事何も気にしてないからな。なんだったら心配もしてない。『最近ハイリちゃんどうですか?』の一言もオーナーに言ってないと思うよ。ここ(雀荘)でダメならゴミ積んで捨てる車と一緒に捨てて下さいって言ってると思う」
ハイリ「え!!!酷い!!みなみさん!!」
にしま「いや、予想だ予想!!でも多分ピンサロとかソープランドとかあっちの方に」
ハイリ「にしまさん!そこまでの借金、私してないから!!(笑)全部普通の仕事して働いて滞納全部返せた・・・・筈だし!!」
みなみはこのハイリとスナック間のトラブルにも顔を出していたそうです。丸く収まったそうですが・・・そのボーイはどこに消えた?
・・・それだけ気がかりでした。まぁ今は人の心配をしている暇はない。
そんなことに構っている場合ではありません。
ハイリの麻雀の腕は悪く、まだまだ教える必要がありそうです。
よーし、俺も仕事だと思ってしっかり頑張るぞ。今晩の飯にはありついているんだからな。
この作品が面白いと思ったらブックマークと感想をお願い致します。
広告下の☆☆☆☆☆→★★★★★評価を宜しくお願い致します。
作者のモチベーションアップになります。
作者のエイルはブログもやっております。
是非、立ち寄ってみて下さい。
https://eirblog.com/