久方ぶりの地元
電車から降りたら、なんだか懐かしい、ノスタルジックな街に到着しました。
ここは、間違いなく私の地元です。幼い頃から何度も見た事がある街並でした。
久々に吸う地元の空気・・・・。あの改札に居る駅員さんも、駅内のうどん屋の大将も変わっていませんでした。なんだったら私が乗っていた電車内も顔を見た事ある人間が数人乗っていました。
みんな頑張って仕事してるんだな。俺も頑張らなきゃな・・・・。そうだ、せっかくだし大将のうどん屋で飯でも食うか。顔も見せたいし。大将は親父の友達だしな、ここで金を使おう。こういう所でお金を使わなきゃ・・・・。
ちょっと待て・・・・・金が無い・・・・・。
冗談じゃない、売って日銭にしようとしていた自慢のスクーターを盗まれ、中古屋で売れなかったせいでお金を持っていませんでした。のどが乾いたらどうするつもりなのでしょう。
如何せん帰郷した私にはお金がありませんでした。財布を開けると一切お金が無かったのです。自慢ではありませんが、その駅に居る人間の中で、誰よりもお金を持っていませんでした。
貧乏・・・・貧困・・・・・。
絶対いつか・・・・自分で稼いで・・・・稼いだお金で・・・・・ここのうどんを死ぬほど食ってやるぜ・・・・おやっさんの店の在庫空っぽにしてやる!!・・・とか思いましたが、現状たった200円の小盛り素うどんも食べられないのです。お金が無ければ何も出来ない、資本主義である以上それはもうわかりきったことでした。地元に着いてよし!これからだ!という時でしたが肩を落として駅を出ました。
バス賃がなくて乗れないので、徒歩で数十分、私は懐かしみながら大通りを歩きました。チェーン店が増えていたり、昔よく家族で行った店が無くなっていたり、店があった場所が完全に更地になっていたり・・・・。ここ数年で大きく街の姿は変わっていました。
少し遠回りをして、若い頃に悪さをしていた時に良く訪れていた汚い横丁を敢えて通ってみましたが、相変わらず汚い。これだけ汚くて掃除をしないなんて、感覚的にどうかしてます。少なくとも、周りは飲食店なのです・・・・。
スーツを着た強面の集団が横丁の隣筋の交差点で話しているのを見かけました。私の地元の人間は言葉が汚いですので、彼らの事を『カラス』と呼んで揶揄する者もいました。
ただその横丁の付近には私が知っている馴染みのお店が沢山残っていました。ここは懐かしい。顔を出そうかなぁ・・・・・ビックリされるかなぁ・・・・。
しかしどこもお店はシャッターが閉まっていて、唯一店前を掃除していた雀荘の髭面オーナーだけは帰って来た私に気付いて、向こうから手を振ってくれました。名前はスーさんです。
盗難届を出した交番以降、誰とも話さずに帰って来たので、いざ話すと痰が絡んで声が出ませんでした。地元に帰って第一声は「咳」でした。
スー「おぅ、久しぶり。なんやお前、帰郷かいな」
にしま「う・・・ゴホッ!・・・・まぁそんな感じ。ただいま」(痰が絡んでいる)
スー「ほうほう、ということは今から実家に帰る?」
にしま「そうだね。なんかスーさんの店まだやってるから安心したわ。色んなお店が出来てて、知ってるお店が消えているから、ここを通る時に少し不安ではあったんだよ」
スー「いやー、うちはそうそう潰れやしないよ。兄貴の自社ビルで経営しているからな。家賃はとりあえず無いし、この町じゃほら、娯楽もパチンコかスロットみたいなギャンブルしかないだろ?卓だけ置いて、良いショバ代で稼がせて貰ってる身よ」
久々にスーさんと世間話をして、また暇ならこの店まで来るように言われました。手を振って別れました。
次の次の筋を越えれば、私の実家があります。
親父・・・居るかなぁ・・・・。
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