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一階のスナック


ハイリ「そう言えば私、にしまさんってさん付けで呼んでいないけどいいかな?♪いいよね?別に♪」


にしま「いいよ別に。友達っぽく呼び捨てにしてくれたほうが俺もやりやすいし」


ハイリ「やったー♪」



 それの何がそんなに嬉しいのでしょうか・・・・。



ハイリ「これゴバラに売ったらさ、二人でどっか行こうよ♪♪」

 ハイリは先程の時計を私に見せながら私の方を嬉しそうに見ます。



にしま「おっ、いいねぇー♪どこか行こう♪」

ハイリ「約束だよにしま♪」

 私の腕をギュッと掴んでいます。傍から見たら付き合っています。




 カランカラン・・・・・


 先程のビルに戻り、一階の扉を開けると音が鳴りました。



 薄暗い店内から声が聞こえます。



女性「いらっしゃいませ・・・・あら?ハイリかな??お疲れ様」



ハイリ「お疲れ様。ママ、今日はね私の雀荘の友達連れて来たよ。」



女性「あら、いらっしゃい」



 年齢はおおよそ50代くらいでしょうか。和服を着ていて、少しケバイ感じの女性でした。



ハイリ「にしま、この人がママだよ。スナック『つばめ』の『ナキさん』」



にしま「あぁどうも。初めましてナキさん」



ナキ「あっもしかして、ローズに入った人?さっきスーさんから聞いたけど」

ハイリ「そうそう、今日から入って貰って私に麻雀教えてくれてる、にしま」


ナキ「スーさんもなんか良さそうな人選んだわねぇ。えー-っと・・・・・みなみが居ない間の用心棒なのよね??」


にしま「違う違う(笑)ハイリに『麻雀教える為だけ』に雇われたんだよ。教育係として。一応代打ちくらいは出来るよ」



 先程の男も言っていましたが、そんなに用心棒に見えるの?俺って・・・・・・。


ナガレ「あっ、スーさんから聞きましたよぉ。私ナガレカワって言います。なのでナガレと読んで下さい。これから宜しくお願いします」


 清潔そうな黒髪で男前の彼はこの店のボーイをやっているとの事でした。このナガレにもハイリは手を出すんじゃないかという風貌・・・・・。私から言わせればそういう不安はどうしても尽きませんが・・・・。

 今日は平日で女の子も少なく申し訳ないと、このボーイのナガレから謝られましたが、別にそこまで求めてなく、私的にはどちらでも良かったです。

 今日はこれから末永く宜しくと、挨拶のつもりでスナックに来ました。




ナキ「あぁちょっと、これから戻れる?・・・・・スーさんとこにさ新しいのが入ったのよ・・・・。うん・・・・・あっいいかな??・・・・ちなみにどの位で出れそう??・・・・」



 ママが誰かに電話しています。私の為にキャストを呼んでくれているのでしょうか。電話の雰囲気だと今日さっきまで出勤していて客が来なかった為、一度帰らせた女の子をこちらに呼び戻している感じがしましたが・・・・。


 

ハイリ「私、ビール飲みたい。にしまは何にする」

にしま「俺は麦ソーダ割貰おうかな。さっきビール飲んだし」



 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・



ナガレ「お待たせしました」

 ナガレがお酒と氷を持って来てくれました。焼酎の他にソーダ水、ウーロン茶、ミネラルウォーターを持って来てくれました。どれでも割れるように気を遣ってくれていました。


にしま「ナガレも飲もう。一緒に飲もう。これから宜しくの意味を込めて」

ハイリ「そうだね、みんなで飲もう♪」


ナガレ「えっいいんすか?♪やった♪♪ありがとうございます!!♪」


 

 ・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・



三人「それじゃあ、私達の出会いに!!かんぱーい!♪」



 久しぶりになんだか学生の気分です。今日会った仲間達ばかりですが、それでも良いのです。他にも会いたい人は大勢居ますが、それは贅沢です、そんな贅沢はもういいのです。私自身もですが、この地元も何かが変わってしまっているように見えるからです。与えられた自分の目の前の事に集中し、そこで会った新しい仲間と、この地元での暮らしをしていこうと決めました。


 これまでずっと柔道をしており、正直な話、緊張しっぱなしでした。ここでようやく羽を伸ばすことが出来そうです。

 トイレに行った時に自分の顔を鏡で見ました。やはりどこか私の表情は緊張したままでした。スーさんに久しぶりの地元だから羽を伸ばしてこいとは言われたものの・・・どこかまだ緊張した顔つきでした・・・。


 緊張の糸は寮に帰っても、バイトをしていても、柔道以外の場所でも切れませんでした。考えれば考えるほど、他の人間からしたらバカバカしいことかもしれませんが、これが柔道家である私の本当の秘密です。そう腹を割って誰かに言ったとしてもきっと誰も分かってくれません。ようやくこれから人間らしいことが出来るような気がして・・・・私はじっと見ていたその鏡から目を逸らしました・・・。



 

ナガレ「・・・いやーにしまさん。ハイリが辞めちゃってですね、この店を」

ハイリ「なんでいきなりその話するぅ??(笑)」


にしま「それ面白いよなぁ、さっき聞いたわハイリの悪行を(笑)」

ハイリ「ちょっとガチで嫌なんだけど(笑)」


ナガレ「当時は笑えなかったんですけど、結局今は笑い話になってますよ」

にしま「おお、なんかネタにして貰える人が居て良かったな」


 ナガレの饒舌なトークに時折笑いながら、私達は今日という日を楽しみました。お酒を三人で飲み続けました。


 飲まされるお酒、そして自分から飲むお酒。

 この二種類があり、初めて心の底から自分から進んで飲む美味しいお酒を、このスナック『燕』で新しい仲間達と飲んだのです。

 自分の事を大事にしてくれた人、監督、先輩や後輩やコーチ、様々な部分でサポートして貰いましたが、それらの思い出に背を向ける事に決めました。


 過去は振り返らない。

 俺はもう戻ったんだ。辞めるって自分で決めたんだろ。この鏡の向こうの顔の緊張はまだ過去を持っている証拠なんだ。


 蘇るって決めただろ!にしま!男にしま!!

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