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はじまりと終わり


 一度何かが始まるといつか必ず終わりがやってきます。何が原因になるのかわかりませんが、やはりどこかでそれを辞めないといけない日がやってきます。


 それが仮にスポーツであれば、加齢なのか、或いは怪我なのか、別のことに切り替えるのか、単純にその競技自体がつまらなくなったのか、根性が無くなったのか、家の事情なのか、プレイヤーではなくコーチや監督に転身するのか。もっと具体的な部分は私達の知る所ではありませんが、必ずどこかでプレイヤーとして続ける事を諦めないといけなくなる日がやってくるのです。1つの事を一生やり続けるというのはとても難しい事なのです。

 『初志貫徹』という言葉、これを通した人間は一体この世の中で何人居るのでしょうか。


 私は父の勧めもあり、幼き頃から柔道をやっていました。楽しい事もあり、厳しい事もありましたが、どうにかこうにかやめる事はなく続けていました。

 強い相手を倒す為ではなく、柔道を通して相手に負けない強さが欲しかったんです。実はあまり知られていませんが、『強くなれ』という教えは柔道という競技に於いては一切ありません。これはどこの道場に行っても共通して言える事です。


 それでも私は柔道という競技が向いていたらしく、かなり早い段階で才能が開花しました。早熟タイプであったようです。

 自慢ではありませんが学生時代にかなりの成績を残して、高校も大学も柔道推薦で進学しました。そのまま実業団・・・・・当然目指していました。もうそれは目と鼻の先でしたから。

 日々の練習を一切手を抜くことはなく、先輩のシゴキやかなりきつい部の役割や雑用にも耐えて、歯を食いしばってここまでやってきました。


 辞めた人間も居ます。幼い頃から一緒に柔道を志して残ったのはほんの僅か。厳しい監督や先輩に耐える事が出来ずに寮から逃げた者も中には居ました。


 それでも私は辞めませんでした。一度志した事やお世話になった人間に対して背を向けるという事は柔道家の恥だと教わりました。人から尊敬される人間を目指さないといけない。黒帯を締めて、今日も朝から晩まで練習。自分の不始末で一日中走らされることもありましたが、監督に自分が走っている事を忘れられるまで走り込んだこともありました。しかも雪の日に・・・・。


 頑張って取り組んでいる人間を馬鹿にする奴らも居ます。それでもいいんです。そんな事してまで続ける事ないだろうと言われます。

 柔道家は馬鹿にされても、揶揄されても、本音だけは正直じゃないといけないんです。

 それじゃあお前は出来るのか・・・・俺や他の皆さんのように馬鹿になって柔道でも何でも出来るのか。人生で一度でいいから馬鹿になって何でもやってみろよ!!・・・今しかねぇだろ!!私はたった一度だけそう言って、親しい友人に激怒した事がありました。


 自分のルールを決めてそれを実行。それを逸脱する事は絶対にありません。


 あとこれは寮独自ルールで、基本的には先輩に自分から声をかけてはいけません。用事が有る時だけ先輩から下の者に声をかけられます。そういう風潮がとても馴染めず、言葉を喋る人間として許せなかったこともあり、自分は敢えて自分を慕ってくれている後輩達にはフレンドリーに接しました。


 その私の考え方やスタイル、これまでの伝統を壊すのが許せなかったのでしょう。私は先輩に練習中に、思い切り腕を折られました。

 怪我はしょっちゅうの事でしたが、この怪我だけは私の選手生命を揺るがしました。この怪我をおったまま、試合に出たこともあった為、怪我が更に悪化してしまいました。

 それからは今までの私の柔道のスタイルを別のスタイルにシフトしていく方向に練習方法を変えて、トレーナーと検討していました。


 しかし、今回だけは簡単には治りませんでした。折れた左腕が本来の動きに戻るのはまだ数年かかりそうです。仮に元々の自分のスタイルを取り戻すのに、更に数年。痛み止めが切れた時、握力が急激に落ち込む為、長期的なリハビリ期間も必要でした。


 そう考えた時、私はもう限界なのかもしれません。これ以上迷惑はかけられません。これまで自分に携わってくれた人達、向き合ってくれた人達の事を考えるとお礼の言葉しか出ませんでした。その他の言葉・・・・なんとも言葉に出来ない。これまで不屈に戦ってきた私の柔道人生は終わりなのかと思うと、私は決して一人で柔道をしていたのではなかった事が分かりました。応援やサポートをしてくれた仲間の力がいつも私の不屈を呼び覚ましてくれていたのでした。


 私は今までの人生を振り返りながら、寮で身支度をしていました。

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作者のエイルはブログもやっております。

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