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異世界転生十番勝負  作者: ヨロヌ
異世界転生十番勝負:一番目 Bランクパーティー『コスモツリー』 対 無職『シンゲツ』
7/19

人間って大変だな


最初、肉体の方は普通に行動している風に感じた。

食事などの生理的処理も問題なく熟して、だけど一言も発する事なく、呆けていたのは精神的なショックなのだろう。

……しかし、食糧が底をつきて、いよいよ彼が何も行動へ移さないまま。

ベッドの上で寝たきりになった頃に、私も危機感を覚えた。


このままだと確実に、この男は死んでしまう。

何とかしなければ……一体どうすれば?

私が途方にくれていると、突然、虚空から謎の声が響き渡った。

アレンが意思で私を操った際とは異なる声だ。



――アレンのジョブスキル『テイム』が発動します。


――寄生位置を脳へ移行します。



テイム? スキル? この声は一体?

そんなことより……脳? いいのか、そんな所に寄生など……

私の困惑を他所に、勝手に私は動かされてしまい、別の場所に肉体の根を貼ったのを感じる。

全身の感覚が通じると私は、慣れない五感に戸惑った。


外は曇っているが、私には眩しい視界。

煩いほど聞こえる街の物音から人々の話し声、ホコリっぽい家の匂い。

ベッドの上にいるだけなのにシーツや衣服の感覚すら刺激的で、別の意味で身動きが取れない。


しばらくすると、喉の渇きと空腹を感じる。

今まで魔素を食していた私が、果たして人間の食べ物に馴れるだろうか。


…………………………


ちょっと待て。

私は、()()()()

ゆっくり起き上がり……起き、起こっ……お、起き上がれない?

足を動かそうとしたら腕が上がったり、体を起こそうとしたら腹筋だけ起こしてしまう。

これこそ、スキルとか支援があるべきじゃないのか……?


私が願っても、謎の声は響いてくれない。

試行錯誤し続けて、何とか起き上がって、床に足がついたのだが、まるでお相撲さんが四股を踏むような姿勢でがに股移動して。水場まで移動した。

……お相撲さんとは誰だ?

時折、思いつく謎の単語は前世の知識なんだろうか。


とにかく、水を飲もう……()()()()? ()()()()。無理なんじゃないか?

幸いにも割れやすい素材ではない、木製のコップだったので、訓練がてら私は何とか両手で抱え込む形でコップを手中に収めた。


水場には青い石から水が込み上げているのが、魔素の動きで分かる。

人間の視界でも、私自身の魔素感知能力は備わっていた。

これは水の魔石で、このように生活水を出している――と、どこからか知識が降って来る。

段々とだが、宿主であるシンゲツの知識を引き出せるようになった。


「おい! シンゲツ!! ギルドに顔を出さないつもりか!!!」


やっとの事でコップに水を汲み上げた瞬間。

乱暴に扉を開けられて、一人の男が怒鳴り込んで来た。

不味いと思った。

私は変な体勢過ぎる。相変わらずお相撲さんの姿勢のままだし、両手でコップを不自然に掲げていた。


でも、その男性は全く気にしなかったのは、良い事なんだろうか。

更に男性とは別にガタイのいい男が二人、私の両腕を掴んで、どこかに引きずられていく。

宇宙人の写真で、こんなのあったな。私は思う。

……宇宙人って何だ?





「話を聞いているんだろうなッ!」


ドン!と怒鳴り込んできた男が、机を叩いた。

人間ではないせいか、私は他人事のように彼から状況説明を聞いて、丁寧に教えてくれた事に感謝するべきかと思う。

なので、私が「ご説明頂きありがとうございます」と喋ろうとしたら。


「おひゃひあいおうおしゃいまひゅ」


しゃ、喋れない……?

そうか発音か。発声練習も必要なのか。慣れなれけばならない事が多すぎる……

大層お怒りだろう男性は「はぁ?」と更に苛立ちを増したようだった。

ガミガミと説教を更に増やした。

一応、内容を聞き流しているが、私――シンゲツの素行や悪行を咎める内容ばかりだった。


眼前の男性は、ギルドマスターと呼ばれるお偉いさん。

冒険者が社員なら彼は、部長の地位にいる。


どうやら、私――シンゲツは色々と悪い事をしたようで、賠償金を払わなければならないようだ。

アレンの告げた罪の償いは、これを示していた訳か。


シンゲツ()はダンジョンへ放り込まれる事になった。

一応、武器を持たされた。剣を一本。

私は剣を戦う為ではなく、体の支えにして移動し、ダンジョンの奥へ進む。

ここは最難関ダンジョンだったらしく、誰もシンゲツ()が戻ってくる事を望んでいなかったのだと、後々知った。





私はとにかく特訓をした。


普通に体を動かす特訓。喋る特訓。発声練習。

それから、魔素を動かす練習も。


体を動かすのは大変だった。

喋るのも息切れを幾度も繰り返し、勢い余って舌を噛んだ時があった。

剣を振るってみるけど、てんで駄目だった。


だけど、魔素を動かす事、そして魔法を産み出すのは得意だった。

シンゲツが持つ火の魔力を使った魔素操作で、全ての属性の魔素をコントロールし、全ての魔法を発動する事が可能となった。


……そして、奇妙な事だが。

一体どうして最難関ダンジョンで私がこんな人間の基礎特訓ができたかと言うと、何故か私は魔物に襲われなかったからだ。

不思議だが、私が攻撃してこなければ、どんな魔物も私を無視しまう。

理屈は分からない。

どんな理由であれ私には有難い事に変わらないので、全力で利用させて貰った。


少しずつ、シンゲツの知識が入って来ると何をするべきか理解した。

ダンジョンは高価なものを発見できる場所。

珍しい鉱石や、生活に使う魔石、魔物の角や毛皮などが高価で取引される。


私は、ダンジョンに生えていた不思議な木に実っていた果実をいくつか採って戻る事にした。

このダンジョンは地殻変動するようで、迷いやすくなり、全ての魔素が入り乱れるので、天変地異のような天候がダンジョン内で起きる。

でも、私はそういう魔素の流れも分かったので、全然苦にならず。

普通に戻る事が出来てしまった。


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