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ある男を殺して貰います


そうして、一年後。

なかなかどうして面白い結果となったので、神は少しばかり予定を変更した。

転生した『33』名に対し、神は呼び掛ける。


「どうも、お久しぶりですね。貴方たちが転生してから一年経過しました。ここから異世界に貢献し得る価値があるかどうかの審判を下す……つもりでしたが、事情が変わりました。貴方たちにはある男を殺して貰います。如何なる手段をとっても構いません」


神は転生者たちにのみ、(くだん)のある男のイメージを届けた。

眉間にしわ寄せ、険しい表情ながら、どこか虚ろな黒髪短髪で、中肉中背の、体格から冒険者をやっているであろう想像がつく成人男性。


顔立ちは、まあ悪くないのだが……

彼の顔面半分、そして肉体半分には妙な筋が張り巡らされるように浮かび上がっている。


神は淡々と説明する。


「彼の名は『シンゲツ』。元冒険者で、現在はどのギルドや組織にも所属していない……謂わば『無職』です。しかしながら、少々厄介な人物です。世界に貢献しない人間ながら規格外の強さを有する。どこかに囲われる機会があればいいのですが、不幸にもそれに恵まれません。つまり、処理に困る廃棄物です」


一旦、話を区切り、神はルールを告げた。


「期限はこれより一年間。彼を始末した者は世界に貢献しえる転生者として認定いたします。個人以外の力、国家機関などの権力を用いても構いません」


簡単に言えば。

シンゲツという男を殺さなければ、彼らが転生して得られたものは無意味になる。

伊達に彼らも異世界を生き残っていた訳ではない。

神からのプレッシャーを感じながらも、実力を磨いてきたのだ。


これにて異世界転生者による壮絶な戦いが始まる。





晴天の空の元、赤髪の少女が箒にまたがりB共和国とC公国の国境付近上空を移動していた。

姿恰好に相応しく『魔法使い』の職業(ジョブ)を持つ少女は、国境周辺にある森林地帯にある薬草目当てに訪れていた。


「ここも随分と落ち着いたものね」


少女がそんな独り言を言う通り。

この一帯は一時混乱状態に陥っていった。


国際的に安定した情勢のB共和国。

Sランクダンジョンの『モンスターの大量発生(スタンピード)』被害の傷跡が残るC公国。

ドワーフによる製鉄業が活発なD連邦。

近年、国際情勢に顔を見せるエルフ中心国家、E王国。


この四ヶ国の中心地に、大量生産重労働を突き詰めたブラック国家と称されたA帝国がほんの少し前まで存在していた。

だが、コストカット政策として導入された魔道具の不祥事を皮切りに、ドミノ倒しの如く情勢が崩壊。

平民たちの暴動により、瞬く間に王族の首が斬られたという。

あまりの手際よさから生粋の策士が潜んでいたとか、他国のスパイが誘導したとか陰謀論が囁かれているが真偽は不明である。


……つまり、崩壊した帝国。

その後の内乱が、つい最近まで続いており、周辺国にも影響を及ぼしていた。

ようやく、落ち着いた証拠が国境付近の静けさと穏やかな雰囲気になる訳である。


薬草を摘み終えた少女が自宅に戻ろうと箒を手にした時。


「あら……何かしら。あんなところで」


冒険者らしき男性衆が中途半端な位置で屯っていた。

少女は彼らが異様な事に気づく。

否、()()()()()()()、彼らが異様な事に気づいてしまっただけなのだが。


「は!? アイツらの魂……全員『()()()』じゃないの! 一体どういう事!? この世界で『転生者』なんて滅多にいないのに」


何故、少女が『転生者』を認知しているかはおいて置き。

彼女は異様な集団に注目する事にした。

彼らは何やら話し合っている。


「あの神も()()()()()()()っつってただろ? 俺達全員でやりゃ余裕だろ」


「でもよぉ。こういう場合、どうなるんだ? 俺達全員セーフになるのか??」


「転生者同士で手を組むのは禁止とか言われてねーじゃん。平気平気!」


「それよりターゲットがどこにいるかだよ。誰か情報持ってないのか?」


「『探偵』の俺のスキルで分かったぜ」


「おお! 流石ッレア職業(ジョブ)!! 優秀~!」


一般的な職業(ジョブ)は剣士、魔法使い、農民、漁師、鍛冶師、商人、治療師、鑑定士……という具合に、どこかで聞き覚えあるものを示すが。

ちょっと珍しい、あるいは聞き覚えない職業(ジョブ)は普通ではないと一目置かれる事がある。

『転生者』集団の一人が持つ『探偵』が、まさにソレだった。


「ターゲットの『シンゲツ』が元いたのはC公国。最近『モンスターの大量発生(スタンピード)』で荒れたあそこだよ。しっかしなぁ……一から話すとキリがないから止めとくけど、相当な屑野郎だぜ。殺されても文句ない位だ」


「ホント? ちょっと安心したわ~」


「いきなり人殺せって言われてビビったけど……そこまで酷い奴なら、まぁ……」


「そーいうのはいいんだよ。強さはどんなんだ。どんな技使うとか、事前情報を出せ」


せっかちな転生者が促すが、探偵の転生者は釈然としない物言いだった。


「ステータス情報は手に入らなかった。一応、職業(ジョブ)は剣士。魔法の属性は火。気になるのは、例のSランクダンジョンを周回してたって噂。そこでレアアイテム換金して借金返済したらしい」


「うっわー、借金とか~……」


「だったら遠距離の奴を主軸になるよう水属性の奴を前衛でサポートする陣形でいこう」


物騒な内容を淡々を交わし合い。

探偵の転生者が、ターゲットが潜んでいる場所を案内するようだった。

当然、その光景を黙って居られず少女は追跡する事にした。

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