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異世界転生十番勝負  作者: ヨロヌ
異世界転生十番勝負:二番目 人形使い『フランチェリナ』 対 無職『シンゲツ』
14/20

知らない天井だ


『シンゲツ』――もとい『ニノマエ』が目を覚ました時は、ベッドの上だった。

知らない天井に、記憶にない部屋。

隣ではマーサが()()()()()()()()


生活用途や、都市の施設などで魔石は必要とされていた。

魔力があったうえで、マーサのような魔力に長けた職業の者は、綿から糸を紡ぐように、魔力を編んで魔石を作る。

そうして日銭を稼いでいる。


何気ない知識が降って来たのをニノマエが嗜んでいると、マーサが声を上げた。


「起きてたの!? もうっ、声くらいかけなさいよっ! ……だ、大丈夫?」


「何がどうなった」


「えーとね……まず、ここは教会よ。私達が使ってたのは教会に繋がる避難経路だったの」


突然、倒れたニノマエを担いでマーサは避難経路を通って、教会まで到着したという。

成人男性を少女が担ぐとは想像できないが、ここは魔法のある異世界。

マーサは光魔法で身体を強化したのだ。


それから、教会に到着して、なんやかんやあって教会の関係者に助けて貰ったようだ。

変な所から現れたのに、不自然に思われなかったのかとニノマエが疑問を抱いたものの。

マーサは「ちょっと魂をね」と曖昧にしていた。


魂。

ニノマエは自然とステータスを確認してみる。



魔喰虫 Lv.10


HP:3/3

MP:-


物理攻撃:1

魔法攻撃:-

防御:1

筋力:1

俊敏:50


<スキル>

魔素感知

魔素操作

栄養変換


<状態>

『動物使い』アレンの職業スキル『テイム』

『剣士』シンゲツに対する寄生



ステータスは変わった様子がない。レベルもギルドから去った日と同じまま。

ニノマエにとって少し心に響いたのは、名前だ。

折角、記憶が戻ったのに『魔喰虫』という生物学上の名称。ニノマエのニの字もない。

しかし……他にも気になる点がある。


「魂が……見えるスキルは」


そう、意識を取り戻したニノマエは魂を目視できるようになった。

マーサと同じように。

けれども、ステータスには表示されていない。

急にステータスを出したニノマエに驚いていたマーサだが、彼の呟きで察した。


「貴方や私が持つ力は、この世界にはない力。この世界を管理する神々の領域外のもの。だからステータスには表示されないの……当然、前世の事も」


「そうか……」


ニノマエは酷く納得してしまった。

もう一つ、ニノマエは確認する。


「人形使いは?」


気まずそうにマーサが言う。


「貴方から発せられた神気に当てられて……混乱していると思うわ。しばらくは追って来ない筈……」


神気(シンキ)?」


「あ! それはね。ええっと、貴方。会った筈よね? ()()()()()。あれは貴方の根源になっている()なの」


「つまり……親?」


「違う!? う、ううん、違わなくないんだけどっ。ああもう、とにかく貴方自身の奥底に眠っていた力は神の力ってこと! 貴方は私と同じ――『落とし子』よ」





数日後。

B共和国周辺で発生した山火事は、周辺各国の協力の元、鎮火された。

それから被害の規模が明らかになると共に、Bランクパーティー『コスモツリー』が任務から帰還していない事態が発覚し、ギルドは捜索をかける。


当初『コスモツリー』は山火事に巻き込まれた前提で捜索され、肝心の遺体発見に遅れが生じる事となる。

だが、これもまた奇妙な事で。

『コスモツリー』は何故か任務先の国境付近ではなく、C公国の渓谷で遺体となって発見されたのだ。


何等かの事情で遺体を移動した可能性も否めなかったが、状況証拠的に、どう考えても『コスモツリー』が任務を放棄し、C公国の渓谷まで移動したとしか判断できない。


更に、犯人の証拠も残されておらず。

明らかに魔法で殺害したにもかかわらず『魔力痕』が採取されなかった。


『魔力痕』とは個人の魔力。

別にたとえれば、指紋やDNAのように証拠となりうる魔力のパターンである。


他にも個人を特定しえるものを発見できなかった。

これらはニノマエが立ち去る前に、処理した為である。


『コスモツリー』が何故、任務を放棄したのか。

『コスモツリー』は任務に対しては忠実であったからこそ、彼らの行動の意図が掴めなかった。

ましてや、一個人を殺害する為などとは想像しえないだろう。


だが、過去の行いは必ず帰って来る。

『コスモツリー』の一件を利用し、ニノマエを追い詰めるものが現れるが、それはまた、しばらく後の事……





もう一つ、B共和国の一角で()()()が発見された。

有名な情報屋『フランチェリナ』に依頼をしようと尋ねた者が、それを発見した。

あまりの惨状に発見者や、現場に駆け付けた騎士団の兵士も顔色を変えて、吐き気を催したという。


「い……一体どうしたんだ、彼女は。何故こんな……」


「調べた所……フランチェリナの職業は『人形使い』………だからか? ()()()()()()()()()()??」


「どうかしている……」


彼女は、人形のようになっていた。

自身の肉体を自ら削ぎ落して、人形になろうとして、死に絶えていた。

死因は大量出血によるショック死。


書き残されていた遺書のようなものには『ずっとこっちを見られている』『眠ると海をいしきを引きずり込まれる』『にんぎょうになれば夢は見なくて済む』……などなど。

悪夢か幻覚に魘されていたなら、医師へ相談すれば良かったのにと普通は思う。


だけど、彼女は一人だった。

自立する人間は立派だろうが、今回はそれが敗因となってしまった。

彼女が一人でなければ、こんな結末にはならなかっただろう……

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