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異世界転生十番勝負  作者: ヨロヌ
異世界転生十番勝負:二番目 人形使い『フランチェリナ』 対 無職『シンゲツ』
11/20

害虫は駆除だぁ~~~~!!!


B共和国にて。

帰還しない『コスモツリー』の安否を不安視する以前に、ある事態で国内に警報が、ギルド内の職員が慌ただしくなる。


「不味いぞ! 至急、各所ギルドに通達!!」


一部地域の市民は避難。

国家騎士団が出動するまでに発展している。

B共和国中心部にある城より、国王が状況の悲惨さを目視した。


「あの規模は数日では鎮火できまい。周辺国に通達をするのだ」


控えていた側近が頭を下げ、手元の魔導書を広げる。

近頃、魔導書や魔法陣の性能が見直され、各国は緊急事態に備えた連絡網を確立する事に成功した。

側近が発動させた魔導書は、使い魔の魔法『ファミリアー』に様々な情報を組み込んだもの。

薄緑色の鳥の使い魔が魔導書から複数飛び立つ。


現在、時刻は早朝にも関わらずB共和国国内は国境付近で発生した()()()に警戒していた。

幸いにもまだ、国内に被害は及んでいない。

しかしそれも時間の問題だろう。


未曾有の大火災を発生させた元凶、フランチェリナは平静を保っている。

ここまでは計画通りだからだ。


「徐々に逃げ場を封じる。手始めに周辺からよ」


フランチェリナはシンゲツ達の居場所を捕捉しているが、直接攻め込まない。

周囲の森林を燃やす。

やり方は幾らでもあるが、重要なのはシンゲツに寄生している『魔喰虫』。

魔素感知に加え、魔素操作。この二つを持ち合わせている事を、フランチェリナは『探偵』の転生者の言動から推測していた。


であれば、手数は限られてしまう。

幸いだったのはフランチェリナの能力は、基本魔法を行使しないもの。

人形操作のような職業スキルは、魔力ではなく魂の精神力で発動しているとされていた。

詳しい理屈は分からないが、とにかくフランチェリナは有利な状況にある。


まずは逃げ場封じであり、魔素感知封じの火災を発生。

相手側に警戒されないよう人形を使った発火を使う。

念の為、植物油と火打石のギミックを組み合わせた発火装置付きの人形を各所に配置。

点火した人形は、燃え尽きるまで駆け回る。


一気に畳みかけるように風の動きも利用して、シンゲツ達がいる小屋周辺を火の海に。

少なくとも相手の手立ては、広範囲の魔法を発動させるか。上空へ逃げるか。

二択になると予測し、フランチェリナは火の海でも平気な耐熱性の人形を派遣し、相手の出方を伺う。


彼女には余裕があった。

最悪、作戦に失敗しても挽回のチャンスが残っている。

先程の『コスモツリー』とは異なり、シンゲツ達はフランチェリナを捕捉できない。彼女本体はここにいないのだから……





『シンゲツ』の言葉はもっともだったが、マーサは釈然としなかった。

仮に神が転生者に与えた試練の一環だとしても、あの転生者たちの態度を見るに転生しえる人間に思えなかったのである。


「でも、これからどうするつもりなの? 離れると言っても、彼らは貴方をどこまでも追いかけるわ」


ふと『シンゲツ』はある事実に衝突し、マーサに尋ねた。


「地図。地図はあるか。私はC公国以外の国を知らない」


こんな事になるとは思わなかった為、『シンゲツ』は世界の事を学んでいなかった。

シンゲツ本人の知識も、C公国より外のものは全く浮かんで来ない。

元より、普通は自分の生まれた国から出ることが皆無なのだから、仕方ないと『シンゲツ』は思う。

マーサは「ちょっと待って」と棚の中を漁る。


その時、外が妙に明るい事に気づくマーサ。

何かが突撃する音と共に、火花が散り熱を感じた。

もしかしなくても――マーサが慌てて外に出ようとしたのを『シンゲツ』は制した。


「落ち着きなさい。地図はあったか」


「い、今はそんな状況じゃないわ! もう他の転生者が仕掛けて来てる!! 早く逃げないと――」


「この小屋には隠し通路がある」


「………へ?」


恐ろしい程、冷静で鉄仮面を保ったままの『シンゲツ』は、ついさっきマーサが漁っていた棚を動かした。

動かしても何も見当たらないが、棚が配置されていた床板を指さす『シンゲツ』。


「ここに『迷彩(カモフラージュ)』の魔法が施されている」


『シンゲツ』が魔素で魔法の解除を行うと、重厚な鉄扉が出現。

マーサは呆然とする傍ら、『シンゲツ』が扉を持ち上げると下に続く階段が伸びていた。

彼は光の魔素を集め明かりをつくりながら言う。


「恐らく、避難経路の一種だろう。小屋の内装といい、地下の作りといい、ひょっとすれば王族か貴族専用の避難経路かもしれない」


「嘘……気づかなかった……」


「相当の技量を持つ魔術師による『迷彩(カモフラージュ)』だ。それは恥ずべき事ではない」


「いえ……よくよく考えたら、こんな所に家具が揃ってる小屋があったのが不自然だったのに。全然気にしなかったのが……」


当時のマーサは、とにかく人目から離れたい一心だったので。

小屋を発見した時は、既に誰かが使っているのでは、なんて想像すらせずに安堵を抱いていた程だった。

謎に落ち込みながらマーサは『シンゲツ』と共に階段を下りていく。

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