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異世界転生十番勝負  作者: ヨロヌ
異世界転生十番勝負:二番目 人形使い『フランチェリナ』 対 無職『シンゲツ』
10/20

一難去ってまた一難


Bランクパーティー『コスモツリー』の壊滅をこの時点で把握しているのは、現場に居合わせた魔法使いのマーサ以外にもう一人。

シンゲツ――の中に潜む寄生虫――の捕捉能力から逃れたのは、一体の人形。


この人形は『人形使い』が操作しているものだった。

人形からは魔力などは感知されない。

職業(ジョブ)スキルの一部では、魔力とは別の能力、原理で発動されるものがある。

『人形使い』の『人形操作』がその一つに該当した。


人形を通して、現場を監視していた人物『フランチェリナ』という女性。

ウェーブのかかったブロンド髪に、碧眼。美しい顔立ちはまさしくビスク・ドールのよう。

彼女は呆れた風に溜息をつく。


「アイツら、ほんと馬鹿ね。()()から全然変わってないと思ってたけど……」


フランチェリナも転生した33名の一人である。

彼女は人形の特性を活かし、偵察と情報収集に徹底。

当然、前世由来の名称であった『コスモツリー』の存在も把握しており、今日まで監視を怠らなかった。

そして、ターゲットであるシンゲツの実力を測る事が叶う。


「あの『探偵』の情報と照らし合わせても、間違いなくシンゲツは『魔喰虫』を利用している……それとも乗っ取られてるのかしら。どちらにせよ(わたくし)の人形に気づかなかったのは僥倖ね。間違いなく私が優位に立てるわ。問題は……」


実質『コスモツリー』の妨害をした謎の少女。

魔法使いのマーサの事だが、彼女もある意味では異端存在(イレギュラー)

シンゲツが彼女に連れられて現場を離れて行くのを、人形を通して知ったフランチェリナは一先ず彼らの追跡を人形に命じた。


そして、フランチェリナは立ち上がる。

彼女がいるのは、彼女自身の潜伏先である自宅兼()()

この日の為、大量に用意しておいたお手製の人形を動かす。


無論、一度に大量の人形を操作できるかは『人形使い』の実力が問われる。

フランチェリナに関しては――『50』体。

彼女自身は100を目指そうとしていたものの、どう頑張っても、この一年間では50が限度だった。

それに、神から与えられし試練も、一個人の殺害とは想定外だった。


否、寄生虫に支配された人間という規格外を放置してはおけないからだろう。

と、フランチェリナは思う。


他の転生者の監視を行っていた人形の操作を解除。

現在、シンゲツたちを追跡する人形を除き、改めて49体の人形を起動。

新たな勝負が切って落とされた。





「詳しい事情は後で聞くわ。今はここから離れましょう! きっと他の()()()にも、貴方の居所がバレているかも」


マーサが提案し、言われるがまま『シンゲツ』が誘導された先は、C公国付近の渓谷から離れ、B共和国とC公国の国境付近の森林地帯。

ポツンと小屋が見えた。

周囲の木々には魔物除けの香り袋がつけられてあるここは、完全に人里を避けるような位置にある。

気まずそうにマーサが「私の家よ」と告げる。


中に入れば、本当、必要最小限の家具しかなく。

完全に一人暮らしの装いだった。

『シンゲツ』は色々と察する。


彼女はきっと冒険者ではない。

『ネグレクトスパイダー』の糸の対処法は冒険者であれば当然の知識だ。

事情があって、一目を避けている。

街にある品物など一切ない。シンゲツと同じ()()()なのだろう。

と判断し、『シンゲツ』はようやく喋り出す。


「君も私と同じ命を狙われている転生者なのか?」


道中、『シンゲツ』の身の上話を聞かされたマーサは難しい表情を浮かべた。


「あっ、あー……違う、違うの。私は転生者とか全然関係なくて……魔法使いだけど魂の事が分かるだけ」


「成程」


短い返事にマーサが拍子抜けしながら話を続けた。


「でもね。貴方を襲った転生者たちの話を聞く限り、()の命令を受けて動いていたみたい。間違いなく彼らを転生させた神の仕業よ」


「そうか」


「え……えっとね。そもそも余程の事情がなければ転生者自体、産み出さないものなのよ。余程の事情というのも、世界に確変とか……まあこれも神次第になるんだけど。それを踏まえたうえで転生者を使って貴方を始末するなんてコストに合ってないわ」


「そうだろうか」


「だって……貴方に関しては触れなければ無害。シンゲツ本人の罪状も世界規模的に大したものじゃないのよ」


「確かに」


「ひょっとしたら、何等かの試練として貴方を使っているかもしれないけど……ああ、もう! ちょっと危機感を持ちなさいよ!」


表情が動かない『シンゲツ』に、もどかしくなったマーサが叫ぶ。

だけど、彼は冷静に答えた。


「君は無関係なのに私の身を案じているのだろう。ありがとう」


「えっ。あ……うん。その」


「だけど、もう十分だ。君の話を聞く限り、これ以上、君が関わっては危険だ。私もここから離れる事にしよう」


淡々と、だけど的確に『シンゲツ』は告げる。

だが、既に次なる敵の魔の手が忍び寄っていた。

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