JCと進学先
こんにちわ。
ここから本編に入ります。
去年、祖父の葬儀があった。
そこで凛ちゃんと久しぶりの再会をした。
「和真君、お久しぶりです」
「凛ちゃん、随分成長したね。初めて会った時は小さかったのに。すごく可愛くなった」
あの泣きじゃくる女の子がこんなにも可愛くなっていたなんてびっくりした。
そこらの雑誌に載っているアイドルすらも霞んでしまう可愛らしさだろう。
こんな可愛い子が親戚にいるだなんて未だに信じられない。
「ありがとうございます。和真君は今はどの辺りに住んでいるんですか?」
「ここからそんなに遠くはないよ?隣町だけど車で20分くらいのとこ。会社がその町にあるから今は一人暮らししてる」
「私、受験する高校がその辺りなんです。だから合格したら和真君の家に住まわせて下さい」
「はっ?なんで?」
驚いた。最近の中学生の間で流行っている冗談だろうか?でもこんな可愛い子が言っていい冗談じゃないだろうと軽く叱ってあげるのも優しさかと思っていると凛が口を開く。
「和真君が言ってくれたんじゃないですか。何でも俺を頼れって。しかも結婚の約束もしました。だから高校進学と同時に一緒に住みたいんです」
お母さんにも小さい頃から言い続けて来たから理解してくれていると続けて言う。
そこで凛の母親である広子さんが俺達の元にやってきた。
「和真君久しぶりね、凛から話は聞いた?先に春海さんには話は通してあるけど和真君も社会人だから最後は自分で決めてくれていいのよ?」
「お久しぶりです。ですが大事な娘さんをいきなり男と同居なんて普通は止めるべきなんじゃないですか?」
「でもね、和真君との約束があるからって泣かなくなったし、凛は今日までたくさん頑張ってきたの。どこの高校でも行けるように勉強して全国でも20位以内には入ってるし家事もなんでもこなせるようになった。小学3年生からそれだけを目標にしてきてきたんだから少しは考えてもらえないかしら?」
驚いた。小さい頃の約束なんて忘れられていると思ったのにそれを糧に頑張ってきたなんて…
しかもこんなに可愛い子がだ。
とりあえずもう一度本人に確認だ。
「凛ちゃんは本当に俺と住む気でいるの?」
「それは本当で本気です。久しぶりに会った和真君はすごく格好良くなってて誰にも取られたくないんです。結婚の約束を叶えたいんです。小さかった私なりに和真君の優しさに助けられてそれからずっとあなたの事を想っています」
俺を見つめる目を見るだけで本気なんだと言う事が痛いほど伝わってくる。
冗談や軽い気持ちで考えて良いことではない。部屋だって一人暮らしだからワンルームだしそこで2人で暮らす訳にもいかない。引っ越しも視野に入れなくてはいけなくなる。
近所の目も厳しくなる事もあるだろうし、学校で親ではない男と暮らしているなんてバレたらイメージも悪くなるだろう。
でも頭のいい子らしいのでそれも分かった上で言っているだろう。
だから後は俺の気持ちだけが問題だ。
未だにお互いの事をよく知らない。
知って離れて行けばそれでも良いし、知った上で一緒にいたいのならばそれは本物の気持ちという事だ。
考えすぎて変な間が開いてしまったが俺も本気で考えた結果を口にする。
「本気なのは分かった。でも今の俺の部屋じゃ一緒に暮らせない。だから引っ越しをしなきゃいけないんだけど高校が決まり次第一緒に部屋を探しに行くか?」
凛はずっと真剣な眼差しで俺を見ていたが話を聞き終わった途端に緊張が取れたかの様に顔が綻び笑顔になる。
やっぱり可愛い子には笑顔が似合っている。
「ありがとうございます。自分で言うのも自意識過剰の様で恥ずかしいですがこの周辺の学校ならどこでも受かるので明日から部屋探しでも構いません」
自意識過剰じゃなくて本当のことなんだろう。テストで全国レベルならほとんどの学校なら入れる。でもただ近いだけじゃなく進学も視野に入れたそれなりに学力が高い学校に通って欲しいと伝えた。
選択肢は広く無数にあるべきだと思うからだ。
そしてその気持ちまでも理解してくれた様で前向きな返事を貰えた。
「そんなに自信があるのなら10月頃から部屋探しを始めようか。2月から契約して受験が終わり次第家具を見に行こう。凛ちゃんが住むのは卒業式が終わってからがいいよね?」
「それで大丈夫です。ほとんどのお友達と別れる事になるので最後の挨拶もしたいですし。あと引っ越しにはお金がかかると思いますが私は全然出せません…」
「そんな事いいよ。一緒に暮らすって決めたのは俺だから気にしないで?」
「それと一緒に生活したいと言いましたが生活費も今はまだ払える状態ではありません…バイトして必ずお返ししますので待ってもらえませんか?」
「それも気にしないでいいよ。女の子1人養えない様じゃただの甲斐性なしだからね。家事が出来るならそっちをお願いしたいかな。大丈夫?」
「家事はお任せ下さい。健康管理までしっかり致します」
当たり前の話だった。今はまだ中学生だ。お金の事なんかどうにもならないのは知っている。でもあの真剣な眼差しを見たら断れない。全ては生活が始まってからじゃなきゃ分からない。
だがそんな事は些細な事でただ俺の事を想って今まで行動してくれた事が嬉しかった。
これからお互いの事をもっと知っていければ答えもでるだろうと和真は思ったのだった。
評価、レビューよろしくお願い致します。
もう一つ投稿作品がありますので良ければそちらも読んで頂ければ幸いです。