プロローグ
「黑い暗い、苦しい位、狂い喰らい、殘酷な叫びを……」
――危機。
彼女は二度死ぬ――
嗚呼、そうさ。俺が殺るんだ。それしかないさ。
だって、そうだろ?
俺以外のいったい誰が……
でも、さ。生きているんだ。嗚呼、俺の中で。
否、――
……その“内”に。
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皇紀2700年代初頭、世界は特異點爆發(Singularity Explosion)の厄災に包まれた。
人工知能は尋常ならざる暴走を、神話は信じ難くも漏れ出し、白晝夢は白日の下現實に、物理法則は濫りに亂れ、歷史を穿ち迂闊な上書きを强いられた。
腐り狂った鎖から苦し紛れに軛を逃れた百鬼夜行は人々の苦樂と云う漁り火に誘われ集まり、吹き溜まりとなって諍いの楔を打ち込む。
然りとて、人々も愚かな儘ではいられない。
對處しなければならない、其の有樣に。食らいつかねばならない、此の慘狀に。
そして、――
嗚呼、
――作られた。
其れが、彼の“學園”。
――レベンスボルン・ハイリヒトゥーム。
聖命の泉、と呼ばれる同盟國で作られた形式の敎育機關。
人類が人類として生き存え、其の尊嚴を守る爲に。
密かに、祕めやかに、蕭條に、息を潛め、牙を磨き、 峻嚴に、嚴格に、虎視眈々と。
今、こそ!
彼の“樂園”を取り戾す……
……きっと。