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【まとめ版】タイミング良く精神が入れ替わる私と俺  作者: 氷見
第一章 始めての入れ替わり
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第九話㋜ 軟禁されても魔法開発

 しばらくは闘気を使うために体を鍛えていたが、ある日起きると見える天井が変わりびっくりする。

 入れ替わりはいつも意識がなくなった時だ、覚醒すると変わってるわけで、身構え用が無い。

 部屋の中を見ると軟禁部屋のままだが、体は痛くない、毒殺されずに済んでいるようだが、部屋に漂うこの臭いはなんだろう。


 発生源を特定しようと部屋を歩き回るがわからない。

 ん~と考えていると、エカルラトゥの体が臭い事に気付く。

 なんでこんな事にと考えると、もしかしたら体を拭く為のお湯すら毒が混ぜているのかもしれない。


 見ると扉の近くに水が入った桶が見える。

 溜息を吐きながらトイレに、桶の中の水を捨てると魔法で水を生み出す。

 さすがに男の体がとか言ってられないくらい臭い。

 ごしごしと体を無心で拭く、ひたすら臭いが消えるまで拭く。

 服の洗い方は知らないが、水でひたすらかき回していたらなんとかなるだろう。


 そういえばあれから五日くらい立っている、もしかたらここに入れられてからずっと体を拭いてないんじゃないのだろうか。

 たしか私が来た時点であと二日で、軟禁部屋から出られるはずだった記憶があるが、何かあったのだろうかと思い出す。


 何やら憎たらしい顔が浮かぶ、第三王子のトラビスだ。感情が入ってるわけじゃない実際に憎たらしい顔をしているのだ。

 こいつが原因だろうと思うが、普通はさからえる相手では無いのも確かだ。

 それなのに、エカルラトゥはトラビスを怒らせ軟禁延長になっていた。

 何をしているのだと、エカルラトゥに怒りを覚えるが、エカルラトゥの母の事が思い浮かび何も言えなくなる。


「まあ仕方が無いわね」


 そう言いながら携帯食を口の中にいれるが、よく考えるとこの体は水分をほぼ取っていない。

 携帯食が喉にへばりつきせき込む、急いで水を水筒に出して一気に飲む。


「ふぅ……死ぬかと思った」


 さすがにこの体で死ぬのはごめんだ。

 せめて自分の体で死にたいと思うのは異常だろうか。


 ここから出るまで後二日ある、今の所一日以上入れ替わりは無いが、今後無い保証なんてどこにもない。

 それに最初は半日だった、しかし……。


「ふふふふふ」


 思わず笑いが込み上げてくる。

 エカルラトゥの体、じゃない……能力を存分に調べるいい機会だ。

 正直武者震いで体が震える、未知が未知じゃなくなる感覚は何時でも心が躍る。


「まずはナタリーが見たという現象を私でも出せるかよね」


 わくわくしながら体に身を任せると、エカルラトゥの体に炎が纏わりつき揺らめいている。


「出たわ、おーほっほっほ」 


 思わず高笑いが出てしまう。

 扉の外で何かを落とす音が聞こえるが些末なことだ。


 能力検証を半日かけて終わらせて結論が出る。

 闘気に魔力をまぜているだけっぽい、だが魔法が使えて闘気も使える人は少ないがいる。

 その人たちが気づかない訳が無い。

 両方を手に入れるほどの自己研鑽をする人達が、そこへ至らない訳が無い。

 感情の高揚なども影響を受けているみたいだし、もしかしたらまだ別の条件があるのかもしれない。


 あとは私の体で闘気を使えれば、この闘気の炎も私の物になるわけだ。

 今からすでにわくわくしてくる。

 ハイテンションな状態が収まってくると体の匂いが気になってくる。


 さすがに水だけじゃ完全には落ちないらしい。

 もう散々こいつのあれを触ったんだ、お風呂でも作って入るか、と魔法を使って外壁の石を元に箱を作る。

 箱に使った分、壁に穴が開いてるが、まあ見られなければ問題は何も無い。

 しかも穴のお陰で景色が良い。


 魔法でお湯を浴槽に溜めると、服をぱぱっと脱ぎ捨てて湯船に入る。


「あ~やっぱりお風呂は良いわね」


 あまりエカルラトゥの体を見ずにお風呂を堪能する、慣れたとは言っても見るのはちょっときつい。

 体を、ぱぱっと拭き、着替え終わると、浴槽の水を開いている穴に吹き飛ばす。

 ここは地上から数十メートル上の階だ、何階なのかは知らない。


 さて浴槽に使った壁成分を、魔法で外壁に戻そうとすると、水を落とした下の方から叫び声が聞こえる。

 気になって顔を出して下を見ると、トラビスがびしょぬれになって叫んでいた。

 見られる前に顔を引っ込める。


 まあ事故だよ事故、そう思いながら壁を元に戻す。

 ひと段落すると、男の体に順応してるよな~乙女なのに、と考えてしまい若干へこむ。

 しばらく落ち込んでいたのだが、段々と怒りが込み上げてくる。


 悪いのは誰なのだろうエカルラトゥか? 違うだろうが絶対良い思いをしているのはエカルラトゥだ。

 今もきっとナタリーを見てニヤニヤしているのだろう。

 だが、ナタリーは入れ替わりを知っている。

 そう簡単には裸を見られないだろうと、軽い優越感が沸いてくる。


 しかし暇になってしまった。

 食料が少ないがまあ持つだろう、水は問題ない。

 我慢が出来ないなら、夜に外壁側の壁を壊して、こっそり外に出て食糧調達して帰ってくればいい。

 この部屋は意外に高いが、飛び降りても死なないだろう、それにこの体は私のじゃないし無茶し放題だ。


 私があまり気にする程の絶望的状況では無い。

 ならやる事は一つだ、魔法でも開発しよう。

 思いついたが、自分の体じゃできないから放置していた魔法もある。


 まずは理論を構築せねばと、部屋の中にある紙を出し、紐を探し簡単な本にする。

 私の記憶方法は、書いて読めば大体の事を記憶できる。

 そして魔法書は、魔法を使うために必要な理論や知識、魔力操作方法や効率的な使い方などをまとめたものだ。

 完全に理解できれば魔法として使える、内容を記憶できない者は本を手元に置き、読みながら行使する。


 机に座り魔法の内容を纏めていく。

 まずは瞬間的に移動できる、エカルラトゥの為の身体能力強化魔法。

 身体能力強化魔法は普通にあるのだが、エカルラトゥの身体能力を上げても、現状強すぎてただピーキーになるだけだ、それにエカルラトゥの保有魔力量からすると魔力消費量が多い。

 ならば必要な瞬間だけ強化するように最初から魔法を作りこむ。

 止まる為の魔法も組み込む、早く移動できるが止まれなくなると本末転倒だ、魔法を連動させ一つの魔法にする。


 机に座り込んで半日くらいたった。

 ようやく出来上がり、部屋の中で試してみようと家具を邪魔にならない場所に動かす。

 部屋の扉の前に立ち、外壁側を向く、壁の手前で止まるように動く。

 面白いくらい速く動き、止まる。

 連続で試そうと反復横跳びの要領で、扉から壁、壁から扉と連続で動く。

 めっちゃくちゃ速いが、まだまだ速く出来る、でも部屋の中じゃ無理だろう。


 一通り遊んだ後に、もう一つの魔法もまとめようと思う。

 思いついたが、自分の体じゃ使えないからと、投げ捨てた魔法だ。

 殴った場所に指向性の爆発魔法を叩き込む魔法。

 凄いロマンあふれる魔法だ、軽く叩くふりをして接触した瞬間に相手が吹き飛ぶ、思い浮かべるだけで凄い笑える。

 頑張ればどこの部位でも出来るだろう。

 含み笑いをしながら机に座り、紙に必要な情報を纏めていく。


 気が付くと朝になっていた。 

 徹夜でまとめてしまったようだ。


「ふぅ……やりきったわ、ではさっそく」


 外壁側の壁に軽く拳を叩き込む。

 パン! とでかい音が響き、外壁に穴が開く。

 やはり拳に結構な衝撃がある、自分の体だと痣ができるだろう。


「いけるわね」


 調子に乗って音を立てながら外壁に穴を空けて遊んでいると部屋の外が騒がしくなる。

 仕方が無いなと壁を直すが、壁が吹き飛んだ分薄くなる、まあ大丈夫でしょ。


「エカルラトゥ様、何をしているのですか!」


 名前を知らないが、顔は知っている騎士が部屋に飛び込んでくる。

 

「すまない少々鍛錬をしていてね」


 軽く頭を下げて謝る。

 騎士は部屋の中を見渡すが、部屋には壊れたものは一切ない。

 何も壊れていないと判断したのか、注意だけしてくる。


「出来れば静かにしてください、トラビス殿下に気付かれると処罰せざるを得なくなります」


 そう言って敬礼すると出ていく。

 出来た騎士だなと思いながらベッドに向かう。

 普段は徹夜しようとするとナタリーに強引に寝かされるから出来なかった。

 久しぶりに出来た徹夜は、達成感と心地よい疲れが全身に広がっている、私は無遠慮にベッドに倒れこむ、一瞬で意識が飛ぶ。

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