表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【まとめ版】タイミング良く精神が入れ替わる私と俺  作者: 氷見
第一章 始めての入れ替わり
1/52

第一話㋜ 近衛騎士エカルラトゥの体

一話ごとに視点が切り替わり、さらに精神も入れ替わっていきます。ずっと精神が入れ替わるわけではありません。


サブタイトルに書いてある㋜がスカーレットの回、㋓がエカルラトゥの回になります。

㋜→㋓→㋓→㋜→㋜→㋓という風に順番を変えました。

「きゃあああ」


 私はちから一杯叫んだが、その声はいつもの私の声では無く、野太く低い男の声だった。

 それと同時に叫んだ理由である、部屋にいたであろう見知らぬ男の方向へ魔法を繰り出す。

 爆炎魔法が、部屋の一部を吹き飛ばす。


 鏡台が壊れ、壁が崩れ、周囲に部屋が破壊される音が響き渡る。

 部屋中に粉塵が舞い、視界が妨げられ吹き飛ばした人物がどうなったかわからない。

 荒い呼吸をしながら粉塵が晴れるのをまつ。

 すると壊れた壁の向こうから、さらに知らない男がひょいっと顔を出してくる。


「おまえ、朝から何寝ぼけてんの?」


 誰だろう先ほど見た男とは違う……と思案した瞬間に頭に知らない知識が浮かんでくる。

 この男はジェレミー・ゴットバルト、近衛騎士団の副団長で年上の親友……よくわからない知識が頭に浮かぶ。

 なぜこの知らない人物の情報が頭に浮かぶのか思案する。

 本当は知り合いで、忘れていただけなのだろうか、と見つめていると、ジェレミーが近づいてくる。


「これ素手でやったのか? 良くわからんが、さすが暴虐の赤とか言われてるだけあるな、でもちょっとは他人への迷惑を考えろよ」


 そう言いながら、私が魔法でぶっ壊した壁や鏡台を調べている。

 取りあえず頭に浮かんだ知識が正しいのか確認しなければ……。


「貴方は誰? それに……あれ?」


 浮かんできた知識も良くわからないが、取りあえず隣の部屋は私の書庫だったはず、それに本当にジェレミーという人物なのか、そこで何をしていたかを聞こうと声を出すと、知らない声が、女性では絶対有りえない声が自分の口から聞こえる。

 いつもの声が出ていない、男性のような声、喉が潰れてしまったのだろうかと喉を触ろうと、手を喉へと動かすと筋肉質の腕が視界に入る。


「え?」


 自分の腕を見る、筋肉質でごつごつしている、堅そうだ、私の美しい曲線を描いていた腕と指は存在しない。

 体を見る、私の豊満な胸が無い、胸には胸筋が浮かび上がっている、力を入れるとぴくぴく動く。

 脚を見る、私の脚線美と言われた綺麗な脚が無く、なんか凄い筋肉質でごっつい脚が見える、凄い速く走れそう、それに誰かを蹴ればかなり吹き飛ばせそうだ。

 髪を触る、私の長いサラサラの髪が無く、短髪だがふわっふわの髪の感触がする。

 顔を触る、私のきめ細やかな肌の感触はせずに、顎にはざりざりと短い髭の感触がする。

 ここには私が私であるという体が存在していない。


「ええええ!」


 野太い声が、部屋の中を超え、宿舎の外にまで木霊する。


「お、おい大丈夫か?」


 心配そうにジェレミーが近づいてきて、肩に手を掛けようとする。


「ちょっ、触らないで!」


 やはり声は野太い、だが知らない男に乙女の柔肌に触られるのは許せない。

 ジェレミーの腕を弾き飛ばすと想像以上の速さで腕が動き、思った以上にジェレミーの腕を弾き飛ばす。


「お、おまっ、お前が本気でやると俺でも怪我するんだぞ、加減しろよ加減! この筋肉馬鹿」


「ご、ごめんなさい」


 謝ってしまった、当然声は野太い。

 それもしょうがない、想定以上に弾き飛ばしたジェレミーの腕は、赤く腫れているのが見えたからだ。

 ジェレミーは腕を擦りながら、こちらを見る。


「つーかお前その気色悪い言葉使いはなんなんだ? 酔っぱらってんのか?」


 ジェレミーが私の臭いを嗅ごうと、私の口元に鼻を近づけてくる。酒臭いかの確認の為だろう、クンカクンカしている。

 そんな事をするのも許したくないが、なによりジェレミーの男くさい臭いが鼻孔を突き抜ける。

 

「乙女の匂いを正面切って嗅がないでよ!」


 叫びながらジェレミーの頬に、神速のビンタをかます。

 ジェレミーはきりもみしながら、壁に叩きつけられ、床にずり落ちる。

 そんな力いれたつもりじゃないし、とっさに燃やさなかった自分を褒めたいくらいだ、と思いながら自分の手のひらを見るが、当然その手のひらは知らないものだ。

 ぴくりとも動かずに床に倒れているジェレミーに近づく、見ると頬は真っ赤に腫れあがり気絶している、息はあるようだ。


 どうしてこうなった、と倒れているジェレミーを茫然と眺めていると、部屋の外に人が集まって来ているようで、外が騒がしい。

 扉が叩かれる音と、エカルラトゥを呼ぶ声が外から聞こえる。


 どうしようかと考えていると、知らない知識がどんどん頭に流れ込んでくる。

 どうやらこの体は近衛騎士団所属エカルラトゥ・ルージュらしい、王の血を引いているが母親が妾且つ平民らしく王位継承権は無いみたいだ。


 これが夢や幻覚じゃなければ、私の身に起きた事は考えなくても分かる、私はエカルラトゥの体に精神が入っているのだと。

 起きた時に部屋の中にいた男とは、鏡に写った自分の姿だったと……。

 なぜこんな事に、と神を呪っていると外が騒がしくなる、神に呪いを送る気も失せる。


 そんな瑣末な事は棚に放り投げ、まずは状況確認をしたい。まずは割れた鏡を拾い、自分の顔を写し見る。

 まあイケメンと言えるだろう、少しカールした赤い髪に赤い瞳、私と同じ色だ。

 この入れ替わりには関係ないだろう、この世界に赤髪、赤目とか腐るほどいる。

 これが原因だったら、国中大混乱だ。


 倒れているジェレミーを見ながら、ジェレミーの事を考えると、考えた事に関しての知識が頭に流れ込んでくる。

 どうやら意識すると、エカルラトゥの知識が引き出されるみたいだ。

 その記憶からすると、ジェレミーは面倒見も良く凄く良い男だ。


 色々な意味で規格外であるエカルラトゥは、輪の中に入れず、若干ハブられている。

 しかも王家の血が無駄に入っている為、周りはどう扱って良いかわからず一定の距離を置かれている。

 だが、ジェレミーだけは騎士学校の頃から、話し相手になってくれている。

 きっとエカルラトゥはジェレミーに感謝しているに違いない。


 エカルラトゥの考え方に関して推測なのは、感情が読み取れないからだ。

 浮かぶ記憶はエカルラトゥの心情や考え方は出てこない、あくまでもエカルラトゥの目線から見た記憶と知識だけだ。

 エカウラトゥがどんな男なのかは、記憶を見て推測するしかない。


 そんな事を考えていると、部屋の扉が破られ数人が入ってくる。


「エカルラトゥさんどうしたんですか!」


 後輩のルイスだ。ジェレミーを慕っているおかげでエカルラトゥにも話しかけてくれる一人らしい。

 ルイスと他にもう一人が部屋に入ってきて、壁にでかい穴が開き、鏡台がバラバラになり散乱している部屋の状況を見て口を半開きにして驚いている。


「す、少し寝ぼけてしまったのよ」


 つい地が出て、野太い男の声で女性の言葉使いが出る。


「……のよ?」


 ルイスが固まってこちらを見つめてくる。

 しどろもどろになりながら訂正しようと声を出すがいい訳が思いつかない。


「違うんだ、なんかこう……ね?」


 そんなやり取りをしていると、ルイスと一緒に入って来た騎士仲間が、頬を腫らせて気絶しているジェレミーを見つける。


「じぇ、ジェレミーさん!」


 その騎士はジェレミーに近づき抱き起す。

 抱き起した騎士の顔は知ってるけど、名前が記憶から出てこない。

 エカルラトゥは、どうでもいい人は名前すら覚えない奴なのか……と呆れていると、ルイスがきつい目をこちらに向ける。


「……どうしてジェレミーさんが頬を腫らして気絶しているのですか?」


 若干怒っているのか睨まれる。

 それもそうかもしれない、現状から見ると私がジェレミーを気絶させたと推測してしまうのは避けられないだろうし……。

 

「わた……じゃない、俺に触ろうとしたからびんたして……ね?」


 頑張ってエカルラトゥの真似をしてみたが、やはり恥ずかしくてちゃんとできなかった。

 私の悲しいほど微妙な物真似を聞き、何言ってんだこいつ、という目で語っているかの様に睨んでくる。


「そ、そう、俺が寝ぼけてたんだ、すまなかった」


 体を九十度に曲げて謝罪する。

 そもそもこれは謝罪で終わるのだろうか、と考えながら頭を下げていた。

 それに驚いたのか、ルイスが逆に慌てて止める様に行って来る。


「エカルラトゥさんに頭下げられるとこちらが困ります」


「そうか……すまないな」


 こんな時は、王家の血筋が物を言うのかも知れない。

 そんな事を考えている内に、ルイスと名前を知らない騎士が二人でえっちらほっちらとジェレミーを何処かへ運ぶ。

 何処に持っていくのだろうと考えると、医務室が頭に浮かぶ、どうやら近くにあるみたいだ。


 二人が出ていくと、野次馬なのか部屋の外にいた同僚の騎士達は逃げるように去る。

 溜息を吐きながら部屋を見ると、めちゃくちゃになった部屋が目に入る。


「さすがに片付けないと駄目よね……」


 他人が聞いたら、鳥肌立てて逃げそうな言葉使いで呟いてしまう。

 自分の耳で聞くことになるわけだから、その声の気色悪さに鳥肌立てながら反省する。


「はぁ……これって夢じゃないよね……」


 取りあえず頬を抓ってみる、痛い。

 やっぱり夢じゃないようだ、現実は非情だ。


「戻れるのかしら……」


 そう独り言ちながら部屋を片付ける。

 壁は土壁だったので魔法で戻したが、木の家具はさすがに戻せない。

 扉は蝶番が外れただけのようで、釘を見つけて叩き込めば直った。

 部屋の隅に壊れた鏡台の残骸を寄せながら、鏡台に何を入れていたのかを考える。

 どうやら、たいしたものは入っていなかったようだ。

 エカルラトゥが鏡台を見る記憶が浮かぶ、やんごとなき血筋なだけあって、身だしなみには気を付けているらしい。


 取りあえず今日の事を考えると、予定が頭に浮かぶ。

 訓練して、午後から会議の様だ。

 ふむふむ、剣を使った鍛錬か、と記憶を引き出すが剣なんて使ったこともない事を思い出す、どうしようかと考えていると、扉が凄い勢いで開く。


 けたたましい音をたてながら入って来たのは、ジェレミーだった。

 回復魔法を使ってもらったのか、頬は腫れていなかった。

 そういえば回復してあげればよかったなと思ったが、エカルラトゥは剣の人だ、いきなり魔法使うと何故使えるのか追求されるかもしれない。

 ジェレミーを見つめていると、仁王のような顔をしながら、足に力を入れ一歩一歩踏み込みながら近づいてくる。


「さすがにあれはなくね? めっちゃ痛かったんだぞ! ……まあアリアちゃんに癒してもらえたが」


 仁王の顔のまま言うが、アリアちゃんの所で至福の顔に変わる。

 アリアちゃんとは、回復魔法が使えるかわいい子だ、実家が名門の侯爵家で、女騎士としてここに配属されているようだ。

 ジェレミーが懸想しているみたいだが、脈はなさそうな記憶が頭に浮かぶ。

 かわいそうだが、アリアちゃんはジェレミーが苦手のようだった。


「すまなかった、意識が混濁していたのか、夢でも見ていたのか、自分でも良くわからないんだ」


 今回も体を九十度に傾けて謝罪する。

 ジェレミーは溜息をしながら、いつもの調子に戻り部屋を見回し、壁が直っている事に驚く。


「あれ、なんで壁直ってんの?」


「ああ、魔法が使える奴が直して出ていった」


「えー誰?」


「知らない人」


「知らないって……いい加減他人と関わるように努力しろよ」

 

 ジェレミーは呆れながら言う。

 正直に言うと、いい訳を考えるのがめんどくさくなった。

 エカルラトゥの人生に嘘が一つ生まれただけだ。

 もし私が元に戻れなかったら、自分の国に帰ろう、だからこの国で何しようが関係ない。

 と考えていると、元に戻れなかったらどうなるのか、という可能性をリアルに考えすぎ、打ちのめされ蹲る。


「お、おい、いきなりどうしたんだよ」


 ジェレミーが心配して近づいてくる。

 さっきまでエカルラトゥに対して怒っていた人物が、こちらが傷心気味に蹲っただけで優しい声を掛けてくる。

 つくづくお人よしだなこの人と、現実逃避しながら答える。


「ああ、ちょっと人生について考えてて」


 ジェレミーがポンと手を叩くと、同情するかのように言う。


「まあ、お前は色々とめんどい人生してるもんな」


「……まあね」


 悩みの内容は違うが、おおむね悩み所は同じだ。


「そろそろ訓練の時間だぞ、遅れるなよ」


 急にキリっとジェレミーが言う。

 たしか副団長だったな、と思い出しながら準備に必要な物を記憶から引っ張る。


 準備をして訓練場へと向かう。

 部屋で剣を振ってみたが、どうやら肉体が剣の動きを記憶しているからなのか、凄く速く、力強く剣を振れる。

 この肉体に私の魔法があれば無敵じゃないだろうか、とか浮かれながら訓練場に着き、軽く汗を流す、運動も偶には悪くはない。

 しかもハブられているので、一人で記憶通り運動するだけだ。


 昼前に解放され部屋に帰り、汗をどうするか悩んでいると……催してくる。

 

 ついに来てしまった、男での排尿行為……思い描くと記憶はあった、どうすればいいかもわかる、だが私にとってはかなりショッキングな記憶でへこむ。

 私はまだ乙女だし、男のあれなんて見たことも無いし触ったことも無い。

 排尿感がどんどんと高まるが、どうしようかと部屋をウロウロしてしまう。


「ど、どうしよう……」


 そろそろ行かないと漏れるのは間違いない。

 そんな危機的状況に嫌な思考がよぎる。

 これって私の体どうなってんだろう、その事を考えると男のあれが、とか、排尿感、とかそんなのどうでも良くなる。

 私が死んでたら良いけど……いやだめでしょ私が戻れない、そもそも戻れるの? いや私の体にエカルラトゥが入っていたら、こいつに全裸を見られるって事じゃない、でもこれが夢なら何も問題は無い、と思考がぐちゃぐちゃになる。

 だが、エカルラトゥの記憶を見る限りじゃ、影のある他人と関わらない、女性の胸も見てはしまっているが、変な事はしていない自制のできる男だ。

 きっと……そう、きっと私の体に無下な事はしないだろうと、自分に言い聞かせていると、ジェレミーがノックも無く部屋に入ってくる。


「おい、昼飯食おうぜ……って顔が青いがどうした?」


「ちょ、ちょっとトイレに……」


 もじもじしながら答える。


「はよいけよ」


 若干引きながら言う。大の男が股を擦らせながらもじもじしているのが、気持ち悪かったのかもしれない。

 意を決してトイレへと向かい、個室に入るとズボンを降ろす。ここまでは勢いで出来た。

 震える手でパンツに手を掛け、一分くらい停止していると、便器を目の前にしているせいか我慢が出来なくなる。

 目を瞑って体が覚えているであろう動きに身を任せる。

 

「はぁ……」


 終わった、これはきついなと思いながら個室から出る。

 色々と未来の旦那に申し訳が立たない、今の所その予定はまったくないけど……

 そんな不毛な事を考えながらジェレミーが待つ食堂へと向かう。

 いつもの定食が頭に浮かぶので、それを頼みジェレミーの前へと座る。


「またその定食か」


「好きなので」


 正直好きなのかは分からないが、お昼は常にこの定食を食べている記憶がある。

 どうやら筋肉をつける為の定食のようだ、確かにこの体は筋肉で出来ている。


「昼からは軍の会議だから遅れんなよ」


「わかりました」


 私という存在を隠していた理由がこれだ、この国はアロガンシア王国。

 私はモデスティア王国のスカーレット・ヴァーミリオン、魔法開発に日々いそしんでいた。


 モデスティア王国とアロガンシア王国は隣り合っているが、最近揉めている。

 理由は色々あるのだろうが、現状は国境が封鎖されている。

 今後どうなるかわからないと言われていた。


 食事が終わり部屋へと戻る。

 また試練か……と溜息を吐きながら、着替えるべき服を準備する。

 さすがに訓練用の服で会議に行くわけにはいかない、しかも汗が染みこんだままだ。

 意を決して上着を脱ぎ目を瞑りながら服を着替えていく、案外見ずに出来るものだなと感心しながら着替え終わる。


 そろそろ時間なので、会議場へと向かう。

 エカルラトゥは何の役職も無い、エカルラトゥが出る必要は無いのだが、王家の血筋であるという理由と、強すぎるという理由で軍の会議に参加するよう要請されている。


 正直、今の私は剣と魔法が使える、アロガンシア王国の王都アファブレくらい落とせるような気がする。

 ただ剣と魔法が使える、じゃない、最高峰の剣と、最高峰の魔法が使える、いや少し誇張がすぎたかもしれない。

 だが朝の訓練の感じと、エカルラトゥの記憶の内容を考えると、私が元の体で戦ったとして拮抗した勝負が出来るかもしれない強さをエカルラトゥは持っていると思う。

 世界最高峰の魔法使いだと、誰にも負けないという自負があったが、伸びていた鼻をぽっきりと折られた気分だ。


 会議場へと入ると、お歴々が勢ぞろいだ、来るのが遅すぎたかもしれないが、まあ気にしない。

 主要貴族とエカルラトゥが所属している近衛騎士団団長リウトガルド・フランドルがいる。

 貴族の名前は知らない人がちらほらいる、エカルラトゥが知らないと言う事は知らなくても良い事だ、楽になっていいなと喜びながら席へ着く。

 しばらくすると全ての席が埋まり会議が始まる。


「では最初にモデスティア王国のコリナ砦を攻めるとして、どのタイミングで攻めるか、どう攻めるかの会議をしたいと思う」


 え、今なんて言った? コリナ砦を攻める? 混乱しているとエカルラトゥの記憶が浮かぶ、その記憶の意味を理解しようと考えている間にも会議は進んでいく。

 自分の中でモデスティア王国のコリデ砦を攻める、という言葉が理解出来たと同時に叫んでしまう。


「なんですって!」


 席を立ちながら野太い声で女言葉を発してしまう。

 席についている貴族や団長、副団長がこちらを見る、副団長であるジェレミーが手を顔に当て顔を隠し溜息を吐いている。

 が、立った時の立ち眩みなのかわかないが、目の前が段々と暗くなっていく、名前の知らない貴族達の訝しむ目だけは最後まで覚えていたが、何かが机に叩きつけられる音が頭に響くと意識が消える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ