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Beyond the world,  作者: Mr.deception
2/5

召喚

目の前に広がる光景に、綾一は呆気にとられていた。

木々が鬱蒼と生い茂り、吹きつける風でカサカサと音を立てている。

空を見上げると、照りつける太陽と、純白の雲が浮かんでいるのが見える。


一体、これは何なのか?


一つ前の行動を思い出してみる。

自分は家のトイレにいて、ドアノブを下げ、ドアを思いっきり開いた。

それだけだ。

なのに、目の前に広がるのは明らかに家の中とは違う光景だ。


そうか、これは夢だ。

そうに違いない。

そうでなければ説明がつかない。こんなことはありえない。


今見ている光景を夢と断定し、お決まりの動作である頬をつねろうとした、その時。

後ろからガラガラと音がするのが聞こえた。

しかもどんどん大きくなる。


何だ、と後ろを振り向くと、


「うおお、どいてくれー!」


野太い男性の声とともに、大きな馬車がとんでもない早さで近づいてきたのが見えた。



猛スピードで向かってきた馬車を、綾一は間一髪で避けた。

幸い、あたり一面に生い茂る草花がクッション代わりになり、身体を痛めることはなかった。

ただ一点、綾一にとって不都合なことがあった。

馬車を避けた際、「痛み」を感じたことだ。


痛みを明確に感じるということ、これはすなわち「今」が「現実」であることの証拠になる。

つまり今、目の前に広がる光景、そして向かってきた馬車は、全て現実の産物なのだ。

綾一は半ば呆れ顔で

「冗談だろ……」

と、通り過ぎていく馬車を見送りながら呟いた。



綾一は、自分が置かれた状況の整理を始めた。


ここはどこだ? わからない。

どうやったら家に帰れる? わからない。

目の前に広がる光景は夢じゃない? 現実だ。


整理すればするほど事態がややこしくなると考え、そこで整理することを止めた。


「……とにかく、帰る方法を見つけないと」


ふと、自分の立っている場所を見下げると、まるで荒れ地のように草木が生えていなかった。

視線を前に移してみる。

未整備の道路のような道は、先までずっと続いているようだった。


「とりあえず、歩いてみるか」


綾一はポツリと呟くと、道に沿って歩き始めた。



歩き始めて10分ほどで、目の前に複数の建物が見えてきた。

どうやら街のようだ。

ただし、自分の知っている「街」とは程遠い。

とりあえず、外から一旦様子を伺うことにした。


外観は、いかにも海外ドラマやゲームで見るような、中世ヨーロッパ風。

街の入口には大きな門があり、兵士とおぼしき屈強な男が2人、両端に立っているのが見える。

馬車で門に近づく人、徒歩で門に近づく人がいるが、どちらも兵士に何かを見せてから街の中に入っている。

恐らく、街に入るためには通行証のようなものが必要なのだろう。

となると、少なくとも今のままでは街に入ることは難しそうだ。

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