第九十五話「光芒」
「何だ。これは」
ぼくは文字通り開いた口が塞がらなかった。
まるで映画か何かの――CGのようだった。
天を裂くような、巨大なひと筋の閃光が、降り注いだ。
それは森を焼き、地をえぐり、そして――
ステルスヘリの周囲を飛び交っていた、五十機もの戦闘機集団の大部分を、〈蒸発〉させてしまった。
一気に数を減らしたF35部隊の残りは、散開した無数の蜻蛉型ドローンが放つレーザー光線によって叩き落され、全滅。
『エネルギー残量六パーセント。充填開始。第二波発射までの所要時間、十二分』
人工知能による合成音声が、ヘリのスピーカーから冷たく響き渡った。
おそらく、白金機関が極秘に開発していた衛星兵器か何かだろう。
日本がヒヅルによって乗っ取られてから、ヤツはJAXとかいう宇宙開発機関を立ちあげ、巨額の予算を注ぎこんでいた。大方宇宙軍でも創設するのが狙いだとは思っていたが、こんな秘密兵器を隠していやがったとは!
無論我がアメリカも数年前に宇宙軍を創設し、衛星攻撃兵器の開発には成功している。宇宙に軍事兵器など打ちあげようものなら黙っていないはずだが、そこはおそらくこのずる賢い女狐のことだ、気象衛星か何かにこっそりレーザー兵器でも仕込んでいたにちがいない。
こんな暴挙を、我がアメリカ宇宙軍が、国際社会が、許すものか。
地球の周回軌道上に網目状に展開する偵察衛星によって攻撃位置はただちに特定され、撃墜されるのも時間の問題であろう!
しかし六十機以上もの戦闘機を撃墜され、慎重になったのか、数分経ってもF35の増援は来なかった。
何をやってる。さっさと援軍を送ってくれ!
と、言いたいところだが、来たところでヒヅルの衛星兵器の餌食にされる可能性が高い以上、むやみにパイロットを死なせる特攻作戦をとるのは下の下であった。
結局ぼくらを乗せたステルスヘリは衛星兵器によって焼かれた火の海の上をゆうゆうと飛行し、海中に待機させていた潜水艦の中に帰還。
ぼくとサリーは、それぞれ無骨な独房の如き部屋に別々に放りこまれ、一夜を過ごすこととなった。
* *
眼を開ける。
薄暗い群青の、生温かいガラス張りの海の中に、ぼくはいる。
ガラスの向こうからこちらを見ている女性がいる。
ここがどこなのか、彼女が誰なのかぼくにはわからないが、ぼくの知っている人に、よく似ている気がした。
とても寂しそうな顔で、こちらを見ている。
涙を流しながら、無骨な銀色のパネルを、誰かと一緒に操作している。
あっ。とうとう号泣しだして、どこかへ消えてしまった。




