第四十話「平壌」
二〇一七年九月三日。朝鮮民主主義人民共和国咸鏡北道吉州郡豊渓里付近を震源とした、自然地震とは異なるマグニチュード六・八の大きな揺れを、日本の気象庁が観測した。すぐさま朝鮮国営放送が六回目の核実験を断行、四百キロトンもの破壊力を誇る小型の水爆弾頭を開発する実験を成功させた、と、報じた。同国はさらにここ数カ月で大陸間弾道ミサイルの開発にも力を入れており、今年に入ってからすでに二十五回もの発射実験を行い、その性能を飛躍的に高めていた。
翌日未明。ぼくたちは白金機関が極秘に開発した最新鋭ステルス機《忍》に乗って北朝鮮平壌郊外の上空四千メートルから降下、潜入に成功した。周囲には荒れ果てた田畑と、「党と国土を決死防護する鋼鉄の盾、赤き猛獣であれ!」というスローガンの書かれた派手な看板(朝鮮語だったが一応ぼくには読めた)が聳え立つのみで、明かりはほとんどなく、隠密活動にはうってつけの環境だった。それは周囲に敵が潜んでいてもわかりにくいということでもあるが、そこは白金エレクトロニクス製サーマル・ゴーグル、つまり人体の熱を感知して映像化する装置と、一キロ以上離れた場所でのヒソヒソ話すら聞き取れるという真茶の超が三つくらいつく地獄耳によって、少なくともこのあたりに敵は潜んでいないことがわかった。
「街まで結構距離があるな。適当な車を《ヒッチハイク》しないか」
ぼくより少し後に降り立った彼女、緑野真茶は、ロボットのような無表情のまま、てきぱきと黒一色のパラシュートを切り離して言った。
「構わないが、殺すなよ。無闇矢鱈と無関係の人間を巻きこむのは《我々》の理想に反する」
ぼくが釘を刺すように真茶にそう言うと、彼女は一瞬だけ間を置いて頷いた。
「心配するな。任せておけ」
「おい。今の間は何だ。やはり殺す気だったんじゃ」
ぼくは表情を歪め、真茶を詰問する。犠牲もなしに世界征服を成し遂げられると思うほど夢見る女装男子じゃないけれど、暴力ですべて解決するようではヘリオスの連中と何も変わらない。我々白金機関が重視するのはあくまでも戦術、戦略。頭脳を駆使して戦わずに勝つことこそ我々の理想。経費も損失もゼロで相手を制するのが一番である。
「心配するなと言っているだろう。ヒヅル様からも無駄な殺しはするなと言われている。依頼の内容は『ヒデルの敵と、指定された標的を消せ』。それだけだ」
真茶はそう言って背中に背負った黒いギターケースを下ろし、ジッパーを開けた。そして中から出てきたギター……ではなく、愛用のロシア製特殊消音ライフルVSSにマガジンをセットすると、遠方で点々と輝いている街灯目指してそのまま歩きだした。平壌からだいぶ離れているとはいえ首都へ至る道はいくつもあって、早朝でも数分に一度くらいは車が通る。ぼくが農道に置いてあったリヤカーを道路のど真ん中に移動すると、しばらくして一台の古びた赤い車(八十年代のマツダ・ファミリアと思われる)が通りかかり、立ち往生した。
「くそ。誰だ。こんなところに」
……という感じの朝鮮語でぼやく中年の小太りな男は、心底鬱陶しそうにリヤカーをどけようとしたところで、背後から接近していた真茶にライフルの銃床で頭を殴られ、昏倒した。
「なあ。こいつどこに隠すんだ。やっぱり殺して近くの川に沈めた方が早くないか」真茶は面倒くさそうに眉を寄せて言った。
「真茶。君には一度我々の理想について小一時間講義する必要があるみたいだね」
ぼくの怒りが伝わったのか、真茶はため息混じりに肩を竦め、「冗談だ」とだけ言った。腕は立つようだが、素行に問題がある。彼女は簡単に人を殺しすぎる。姉さんが真茶をぼくのサポート役に選んだ意味がよくわからなかった。あの完璧超人の姉さんでも采配ミスはするのか。それとも単に人材が不足しているのか。まあぼくが何とかしてみせるけど。
ぼくたちは名も知らぬ中年男を近くの山林の中に放置して、乗っ取った車で北朝鮮の首都・平壌へ向かった。北朝鮮には信号機がなく、代わりに警察官が手信号で誘導を行っている。しかし今はまだ夜明け前で、交差点には誰も立っていなかった。
平壌に着いたらぼくたちがまずやるべきことは、すでに先行して潜伏している白金機関の工作員および買収した北朝鮮の内通者と接触し、情報を得ること。今までは無津呂という白金機関のベテランエージェントが北朝鮮工作活動の指揮をとっていたのだが、つい先日北朝鮮の国家保安省にスパイ容疑で拘束されてしまったという。彼は潜入工作のプロで、身分登録証の偽造も抜かりはない。白金機関には潜入工作のための公文書を偽造する《特殊工作課》が存在するが、彼らの仕事は常に完璧だった。姉さんは《協力者》による造反を疑っている。白金機関のエージェントになるには能力も重要だが、何より機関の理想に共鳴する筋金入りの《白金主義者》であることが大前提で、その素養は姉さんという最高の面接官によって直接鑑定される。それですべてのスパイはその本性を見透かされ、門前払いとなるのだ。対して《協力者》は何らかの対価と引換えにエージェントの仕事に協力する言わばお手伝いさんである。真茶も白金機関のエージェントではなくあくまでも多額の報酬で雇われた《協力者》であるが、裏の世界では百パーセント標的を抹殺する腕利きの殺し屋として有名だったらしく、何より姉さんが直接スカウトしたと言っていたから大丈夫だろう。
ぼくに与えられた任務は三つ。北朝鮮当局に捕らえられた無津呂の捜索および救出と、造反した《協力者》を探しだして粛清すること。そしてもし無津呂が死亡あるいは捜索不可能となった場合、彼の仕事を引き継ぎ、対北朝鮮秘密工作部隊の指揮をとること、である。
「そう言えばこいつを忘れていたな」
ぼくは胸ポケットの中からふたつの小さな赤いバッジを取りだし、片方を真茶に差し出した。
「何だそれは」真茶は怪訝そうに眉をひそめた。
「北朝鮮国民なら誰もが左胸に着けている、偉大なる建国の父《金勇浚バッジ》だよ。心臓の上に着けて忠誠を示すらしい」
そう。このバッジ、朝鮮共産党の真っ赤な下地と左上に黄色い金槌、鎌、星のシルエットが描かれた党旗の中央には、お洒落な眼鏡とマフラーが印象的な若かりし頃の北朝鮮初代最高指導者・金勇浚の顔が描かれていた。北朝鮮の協力者から借りたものを、《特殊工作課》が複製したものだ。
「虫唾が走る」真茶は汚物でも見るような眼で受取を拒んだ。
「平壌にはいたるところに監視カメラが仕掛けられている。金勇浚バッジをつけてない人間はそれだけで不敬罪で逮捕される。そうすればぼくたちが侵入者であることもすぐにバレ、任務どころか人生終了となるだろうね」
「ち。まったく。めんどくさい国だな」
真茶は不承不承バッジを身につけてぼやいた。以前は無表情でロボットのようなやつだと思っていたが、こうやって行動を共にしてみると実際はかなりマイペースというかふてぶてしく、すぐに感情が表に出る自己中心的なやつだとわかった。ネオ夕張で出会った時はたまたま眠かったのかもしれない。
「それもしばらくの辛抱さ。《我々》がこの国を乗っとれば、すべては思うがまま。朝鮮民主主義人民共和国は日本領朝鮮として開国され、本当の民主主義が齎される」
「民主制の植民地とは、斬新だな」
真茶は皮肉な笑みを浮かべて言った。
「植民地ではない。悪の独裁国家北朝鮮を解体し、姉さんがこの地に自由と平和と安定の光を、与えるのだ」
拳を掲げて熱弁するぼくを、冷ややかな眼で見つめながらくすくすと、真茶は嗤っていた。その態度に苛立ったぼくは、彼女を睨みつけながら低い声で言った。
「何がおかしいんだ」
「いや。素晴らしい理想だなと思っただけさ」
真茶の人を小馬鹿にしたような態度にぼくはさらに激昂……しかけたが、押さえた。ぼくはこいつに、一体何を期待しているのだろう。こいつは《我々》の同志ではない。あくまで金目当てで仕事を手伝う外部協力者にすぎない。任務が終わればそれでお別れ。《我々》の理想に共鳴などするはずもない。
北朝鮮の首都・平壌は高層ビルが立ち並ぶ、東京と比較しても遜色ない大都市であったが、様々なプロパガンダが書きこまれた巨大な看板や、建国の父である金勇浚とその長男であり二代目最高指導者の金東建の肖像画や銅像があちこちに点在しており、異質な雰囲気が漂っていた。現在政権を牛耳っている金暻秀党委員長がその任期を全うすれば、彼の肖像画や銅像が国内のあちこちに追加されるだろう。
平壌は十九の区と四つの群に分けられている。今回ぼくたちが目指すのは恩情区にあるマンション(正式名称は「勝利マンション」というらしい)の、101号室。本来なら平壌にあるマンションはそのほとんどが朝鮮共産党の監視下、具体的には盗聴器や監視カメラが仕掛けられているのだが、人民保安省つまり北朝鮮の警察組織内にいる《協力者》のおかげでここだけは監視を免れているという。
姉さんから任務を言い渡された時に記された地図が示す勝利マンションは、十階建てほどもある比較的大きな、しかし無骨な灰色の素朴な外観を持つ、古びた病院のような鉄筋マンションだった。その一階部分の一番隅っこにある、金と書かれた銀色の表札。これはぼくの偽名である金日出の姓である。部屋には鍵がかかっていたが、部屋の主であるぼくは予め鍵を持っており、何食わぬ顔で鍵を開け、真茶とともに中へと入った。
「お待ちしておりました。金日出さん」
扉の前でスーツ姿の、髭面にオールバックといった出立ちのダンディな中年男が、ぼくたちを出迎えた。
「《我々の手で》」
ぼくは唐突に、男に向かって言った。
「《完全世界を》」
男はすかさず言葉を返した。彼が本物の《協力者》であるかを確認するための合言葉である。
「さあ、中へどうぞ」
男に招かれ、ぼくと真茶はマンションの中へと入っていく。玄関の先には日本の一般的な2LDKのマンションに比べてだいぶ、無駄とも言えるくらい広い廊下に、これまた大家族で住むことを想定しているように巨大なキッチンが設置されていたが、調理道具や食器などは一切なく、空き部屋同然で閑散としていた。照明は電気の節約のためか、それぞれ二本ずつあるはずの蛍光管が片方抜き取られており、薄暗く陰鬱な雰囲気を醸し出していた。とはいえ、ぼくたちの到着とほぼ同時に昇ってきた朝日が窓から差しこみ、徐々に照度を上げていく。
さらにその奥のリビングまで行くと、壁の上部に北朝鮮の初代最高指導者・金勇浚と、二代目最高指導者・金東建の巨大な肖像画が飾られていた。その下のソファには三人の女性が座っており、そのうちの一番背の高い女性が立ちあがり、こちらへ歩み寄ってきた。女性にしては大柄で、背はぼくよりも五センチ程度高く、百七十五センチ前後ある。浅黒い肌に黒髪のおかっぱ、その後頭部から覗く漫画みたいに巨大な紅いリボンが印象的なその女性は、軽いノリでぼくと真茶にわざとらしく敬礼した。
「初めまして。任務お疲れ様っす。うちは《対外情報部》の東雲忍美。しのみんって呼んでくれていいっすよ」
まだ白金機関に入って間もない頃のぼくならば、彼女の二十歳前後の若々しい外見と軽そうなノリの仮面の裏に潜む蛇蝎のごとき狡猾さと残忍さを、見抜くことはできなかったであろう。真茶と同じく、その眼の奥では裏世界で長年生きてきた者特有の歪で禍々しい邪悪な光が、爛々と輝き続けている。東雲忍美の所属する《対外情報部》は日本のCIAと呼ばれる国家統合情報局の一部署で、主に海外での諜報や工作活動を担当している部署だ。そして、彼女もまた白金機関のエージェントである。実際に対面するのは初めてだが、棗から聞いた話によると四百年近く続く忍者の一族の末裔であり、彼らの伝統的な忍術と現代兵器を融合させた《現代忍術》を使うという。
ぼくは彼女の見せかけだけの軽いノリに付きあうこともなく、事務的に挨拶をする。
「初めまして。東雲さん。ぼくは《秘密情報部》の白金ヒデル。こちらは《協力者》の」
「緑野真茶だ。まあよろしく頼む」
ぼくの言葉を遮り、真茶は忍美にさして興味もないという風な適当さで名乗った。
「殺し屋っすか。こりゃ総帥もいよいよ本気ってことっすね」
忍美は邪悪な笑みを浮かべてそう言った。彼女も裏社会に生きる者として、真茶が堅気の人間でないことは一瞬で見抜いたようだった。
「それは無津呂さん次第だよ」
ぼくは忍美とは対照的に、天使のように慈愛に満ちた優しい笑顔で言った。
「何でもいいが、報酬は満額きっちり払ってもらうぞ」真茶が仏頂面でそう言った。
「それは大丈夫だよ。姉さんは人件費を削るようなせせこましい真似はしない」
ぼくがそう言うと、真茶はただ「そうだな」とだけ呟いた。ヒヅル姉さんが真茶をどのようにしてスカウトしたかは知らないが、姉さんは個々の才能を大変重要視しており、その才能を自らの陣営に確保するためならば莫大な投資を惜しまない人だ。今やひとつの独立国家とも言える経済圏を持つ白金グループの財力の礎を築いた白金重工や白金エレクトロニクス、プラチナソフトといった巨大企業も、経営の神々と呼ばれる創業者たちと、彼らを下支えする数百万の優秀な人材あってのもの。《企業は人である》と宣う経営者は数あれど、実際に彼らに充分な待遇を与えている者がどれだけいることだろう。そして「この方なら本当に世界を変えてしまうかもしれない」と思わせるだけの何か、生まれ持っての支配者、統率者としてのオーラのようなものが、姉さんにはあるのだ。このふてぶてしい一匹狼真茶にしても、姉さんに対してだけは奇妙な信頼感というか、充分以上の報酬が約束されているという確信を持っているように思えた。
「そろそろ本題に入りましょう。立ち話も何なので、どうぞおかけください。星蓮、彼らに何か飲み物を」
オールバックの《協力者》の男がそう言うと、ソファに座っていた妙齢の女性が立ちあがり、「はい、あなた」とだけ短い返事をして無駄に広い閑散としたキッチンへと向かった。おそらく妻だろう。
「我が国の公民証をお持ちですか」男がぼくに訊ねた。
「もちろん」
ぼくは《特殊工作課》が偽造した北朝鮮の公民証を取りだし、彼に提示した。そこには姓名、性別、民族、生年月日、住所と言った情報と、北朝鮮人民ひとりひとりに割り振られた十一桁の番号が印字されていた。ぼくの名前は金日出、真茶の名前は茶緑、忍美は東忍美ということになっており、外ではお互いにこの名前で呼びあう必要がある。
男も自身の公民証を取りだし、ぼくたちに提示した。
「人民保安省の羅勝元です。こちらは娘の美煐、あちらは妻の星蓮」
彼の隣に座っていた高校生くらいの大人しそうな少女美煐が、「よろしくお願いします」と、ぼくたちに頭を深々と下げた。
「密約の内容はご存知ですか」
羅勝元がぼくにそう訊ねたところで、真茶が眉を寄せながら遮った。
「おい。さっきから何を話してるんだ。私にもわかるように通訳しろ」
実は、先ほどからぼくも羅勝元も朝鮮語で話している。この場では読者諸君にもわかりやすく、《人工全能》のぼくが完璧かつ自然な日本語にリアルタイムで翻訳してお伝えしているのである。朝鮮語のわからない真茶には、ぼくたちが何を話しているかさっぱりであろう。白金機関には優秀な人材が揃っているとはいえ、完全に朝鮮語を話せる人材は限られている。白金機関に入って早四年、世界征服の野望実現のためには世界各地の言語や文化に精通しておかなければならぬと各国の語学教師を招いて勉強し続けた結果、今やぼくは二十四の言語を自在に操れるようになっていた。流暢な朝鮮語が話せるというのも、ぼくがここに派遣された理由のひとつだった。
「ふふん。不勉強だな、真茶。人に物を教えてもらう態度じゃないね。ふふふん。まあ、後で必要なことは教えてあげるよ。あまり時間もないから、今は引っこんでてくれないかね」
ぼくが得意げに言うと、真茶は露骨に表情を歪め、ぼくの胸倉を掴んだ。
「調子に乗るなよ、このもやし野郎。ヒヅル様の依頼じゃなきゃこの場でぶっ殺してるところだ」
吐き捨てるようにそう言い、彼女はふんと悪態をついてソファに居丈高に足を組んで座ると、テレビのスイッチを入れた。『偉大なる金暻秀将軍、縮地術をお使いになる』という朝鮮共産党の戦争プロパガンダ映画が放映されていて、朝鮮語のわからない真茶は退屈そうにしていた。
話を戻そう。今回《我々》が羅勝元から協力を得る代わりに、彼の身に何かあった場合(スパイ行為がばれて《党》に拘束される、殺されるなど)に、彼の妻子をぼくたちが保護し、《朝鮮人民解放戦線》、つまり金政権打倒を目論むレジスタンスのアジトまで無事に送り届ける、という約束になっている。羅勝元の我々への協力は言うまでもなく朝鮮共産党に対する重大な反逆であり、見つかれば彼だけでなく、その妻子も銃殺刑になるだろう。
「無論、ご家族の保護については存じていますよ、羅さん。すべて我々にお任せください。白金機関の優秀なエージェントが、おふたりの身の安全を保障します」
ぼくは柔和な笑顔を浮かべてそう言った。
が、実を言うと羅勝元を百パーセント信頼しているわけではなかった。
前任者である無津呂が《党》によって捕らえられたのは、現地住民《協力者》の誰かが情報を洩らしたからである可能性が高い。
当然、眼の前の彼も白とは限らない。
妻子を保護するのは単なる見返りではなく、羅勝元の潔白を証明するための踏み絵でもある。我々を裏切ったら妻子の命の保証はない、と(もっとも実際ここに彼女らを連れてのこのこと現れた以上、彼が《党》側に寝返った可能性は低いが)。
「妻と娘をお願いします」
羅勝元は、ぼくに手を伸ばした。
握手を求めている。
ぼくは彼の手を握ろうとしたところで……
「敵襲だ」
真茶が、突然叫んだ。
がががが、という眼の前で道路工事でもしているような喧々たる騒音とともに、部屋の壁のあちこちに、無数の穴が開いた。
ぼくは《全能反射》により、瞬時に眼前の羅勝元と美煐に向かって飛びこみ、彼らを強引にソファごと、床に押し倒した。