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白金記 - Unify the World  作者: 富士見永人
第四章「中国編」
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第百一話「指令」

「白金総統、(シー)主席。三国同盟の破棄は、我々の破滅を意味する」

「ベーチン大統領」ヒヅル姉さんは歓喜に満ちた黄色い声をあげ、一方的にベーチンの手を握りしめた。「あなたは話のわかる方だと信じておりました。もちろん私も日中の対立は望んでいません。が、習主席が話を聞いてくれなくて。あなたの方からも、習主席に同盟に留まるように説得してはいただけませんか。しくしく」

 姉さんは眼元をハンカチで拭いながら、ベーチンに懇願した。

 そんな姉さんを(無礼にも!)無視して、習はベーチンに警告する。

「ベーチン君。君も一国の指導者なら、わかっているだろうね。祖国のためにどうするべきか」

 ベーチンはしばらく無言のまま、考えこんでいた。そして、意を決したように、その口を開く。

「私の答えは――」


 その時、テーブルの上に置かれたぼくのスマートフォンが計ったかのようなタイミングでショスタコーヴィチ交響曲第五番〈革命〉を奏で、ぼくの意識は現実へと引き戻された。

 ヒヅル姉さんからのDM(ダイレクトメッセージ)だ。なおぼくのスマートフォンは白金エレクトロニクス製であり、白金機関の人間だけが使える特殊な暗号化チャットアプリを使用している。

 姉さんに呼び出されたぼくは、〈東京バベルタワー〉こと日本一高い建造物新白金タワーの最上階の会長室まで漆黒のブガッティ・シロンで駆けつけた。

「仕事かい。姉さん」

 会長室で優雅にハーブ・ティーを飲むヒヅル姉さんの神秘的な黄金の瞳が、ぼくの方へと向けられた。

大嶽(おおたけ)総理から、京都会談のことは聞いていますか」

「ああ」

月人(つきひと)。懸命な説得を試みましたが、大変残念なことに習錦濤(シー・ジンタオ)は〈完全世界〉の理想に渾なす敵となりました」

 ぼくには姉さんの次の言葉が読めた。


「真の日中友好、ひいては世界平和のために、彼にはこのあたりで退場していただくことにしましょう」


 ぼくの中国行きが決定したのだ。


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