【7】 ルナ ~テオの世界~
「連れてきたの」広い空間に声が響く。
「ハイ!」
「わかった。なら、そこに置いておいて。あなたたちは帰って。」
「ハイ!」
この状況、めちゃくちゃ怖い。さっき僕が寝ようとしたところ、ふと、甲高い、小さな声が聞こえた。そのまま目をつぶっていると、急に地面が動いたような感覚に襲われて、終わったと思ったら、この会話だ。
「これは、起きるべきか・・・」
きっと目の前には長身で怖いお姉さんが立っているんだろうな。誘拐されたときのマニュアルとか、無いか…
とりあえず、小さく目を開いてみる。
あれ、いないや。
少し首を曲げて、左右を
「動かないで!」
前方から甲高い声。
「さっきからこそこそしてるの。知ってるんだからね!」
お姉さん、というより、小っちゃい子って感じの声。まあ、この世界常識通じないし。
「何をしにきたの、私知ってるんだからね!あなたは、ルナに、いじわるに来たんでしょ!」
喋り方がいちいち可愛い。
「え、えっと。」
予想外の出来事。目を前に向ける。フクロウのぬいぐるみを持った少女が、こちらをにらんでいた。
「なんとか言いなさいよ!いまさら、何しに!この魔道学園に来たの!」
彼女なりの大声で叫んでいるのが、皮肉なことに、すごくかわいい
「僕はケイ、ここの学長さんに会いに・・・」
「だから、ルナが学長なの!」
「いやいや、学長は七千歳って聞いたけ・・・」
背筋に嫌な汗が垂れる。いま、目の前にいる少女は。体全体で小さな敵意をむき出しにしている、この『少女』は。この、常識の通じない、バカみたいな世界なら・・・。
「もしかして、あなたが、学長さん・・」
「だーかーらー! 私が学長なの!」