【6】 雷起こし ~ケイの世界~
「魔力が、感じられない・・・」
原因はいくつか考えられる。
私の転生障害で、私の魔力が失われた。
同じく転生障害で、魔力、という感覚を忘れた。
後者なら思い出せる可能性はある。が、前者だった時には、一巻の終わりだ。
そうだ、手始めに何か魔法を使ってみよう。前者だった時には魔力の無駄遣いにもなるが、仕方あるまい。
詠唱を始める。声を出しているせいか、周囲の目が集まる。
「ちょっと、あんた大丈夫?」
ヘレナが何か言っている。ふと、教室の反対側がざわめき始める。
「く、雲が!」
「うわー、ゲリラ豪雨かよ」
違う。ゲリラ豪雨はただの「夕立」。朝のこの時間に起きるはずがない。
ケイの姿をしたテオは、叫ぶように詠唱する。
次の瞬間、耳を裂く轟音と、失明させるかのような光とともに、雷が校庭に突き刺さった。
「どうやら、魔力は残っているようだ。では、彼らは、本当に魔力を持たないのだろうか。悩まs」
「ねえ!ケイ、なにしたの!」
独り言にも割り込んでくる。ヘレン、いや、ヘレナらしいな。
「さっきのか?見ての通りだが。」
ヘレナの顔は、少しひきつっているように見える。
「雷くらいで大騒ぎするんじゃない、もう高校生だろ~」
大人、だろうか。若返り魔法も使わないなんて、変わった文化だ。
「あ、先生。」悔しそうなヘレナ。なるほど、あれが先生か
「とにかく、放課後。屋上に来なさい。絶対よ。」