【4】 教室 ~ケイの世界~
「こうこう、は、ここか?」
この世界のしきたりは一通り調べた。「こども」は、この「制服」に着替えて、「学校」に行くのが普通らしい。
どんな世界にも言えることだが、まずは、「ふつう」に合わせる。どんなに理不尽だと思っても、そこから得られるものは何かあるはずだ。
まずは、「教室」を探さないと・・・、その前に「下駄箱」か?
昇降口でうろうろしているテオは、制服を着ていなかったら、完全に不審者だ。
「ねえ、ケイ。邪魔なんだけど。」
腕を組んで立っている彼女には、激しく見覚えがあった。
「へ、ヘレン?」
「ちがーう。私はヘ・レ・ナ!ほら、邪魔だからどきなさい?」
見た目の可愛さをその性格で完全に台無しにするところ、完全にヘレンだ。金髪のくるくるも、身長がやけに低いことも、全部、完全にヘレナだ。転生してまで彼女と一緒とは、なんと不運な。あいつといると、いつもトラブルに巻き込まれる・・・
ともかく、「教室」に行くには、彼女についていくのがいいだろう。彼女は私の名前を知っていたし、何せ、ヘレンだ。いろいろ質問もできるだろう。
「すまないが、ヘレン」
「だから、ヘ、レ、ナ!」
小さいのがぴょんぴょんしながら異議を唱えている。かわいい。
「ヘレナ、私は記憶を失ったようだ。私を、教室、に連れて行ってくれないか。」
「何よ、にやにやしてると思ったら、そんなことなのね。私を騙そうったって、そうはいかないんだから。」
完全に勘違いをされている。もしヘレンだったら、このまま続けても、どうせ信用してくれまい。無言でついていくことにする。
「ねえ、宿題やってきた?」
ヘレン、じゃない、ヘレナが質問してくる。
「宿題、とはなんだ。」
階段をのぼりながら聞く。質問に質問で返すのは、私の常套手段だ。
「なるほどね、まあ、私もやってないんだけど。」
完全に、違う方向に理解されている。そうしているうちに、ヘレナは、部屋に入っていった。なるほど、ここが教室、か。
たくさんの人間が、あるものはすわり、また、あるものは歩き回り、思い思いに過ごしている。
見た目は、元の世界と同じだ。10代の若者の見た目を保っている。しかし、彼らは、根本的に、違う。
「魔力が、感じられない・・・」