【2】 妹 ~ケイの世界~
「それでは、転生する。あとのことは頼んだぞ。」
「はいよー、さっさと逝きな、来世で変なことやらかすんじゃないよ、テオ。」
「無用な心配だ。」
後のことをすべてヘレンに託すなんて、ここまで信用してよかったのだろうか。まあ、いいか。疲れた体では、それ以外に考えることがない。
ベッドの上に寝転がり、詠唱をはじめる。転生にも慣れてきた。持ち出す記憶は整理済みだ。準備は出来ている。来世は、そうだな、妹が欲しいな。
まぶたが下がってくるのを感じる。さようなら、現世。
「ケイ、また遅刻するよー」
目が覚めると、そこは知らない家だった。はて、転生障害か。
転生障害、転生するときに、記憶の一部が消えてしまう障害のことだ。しかし、よりによって、転生してからの記憶がないとは。幸運にも、言語は理解できるようだから、聞いてみるのが早いだろう。
階段を下りる。目の前には、少女がバックを背負って立っていた。
「ほら、遅刻するよ!鍵持って、着替えて!」
紺色のスカートに白いシャツ、なかなか可愛いじゃないか。これはもしや、妹!
「記憶が混濁しているようだ。今の状況と、取るべき行動を教えてはくれまいか?」
「何言ってんの!ケイくん今日も高校あるんでしょ、ふざけてるんなら先に行くよ!」
「こうこう、に行けばいいのだな。」
「あーもう間に合わない!戸締りよろしく、お兄ちゃん!」
どうやら、今回の転生運はなかなか良かったらしい!