【18】 新たな日常 ~ケイの世界~
「なぜだ、まさか・・?」
床に寝転がった少女「ひな」に、手をかざすテオ
「魔法回路が、閉じている?」
支離滅裂な言葉をつぶやきながら、目の前の少女のあちこちに手をかざすテオ。
「まずい、そろそろ時間が!」
魔法の効き目は長くて残り3分、もう起きていてもおかしくはない。
「魔法回路の、解析、整備。ただこれだけだというのに!」
はたから見れば、妹の体を舐めまわすように観察している変態だということに、当人は気がついていない。
少女の手が彼女の頭へと動く
「くっ、ここまでか」
テオは、彼女の記憶を改ざんし、いすに座らせ、頭を勉強中のノートの上に乗せる。
「はっ!」
一瞬だけ時が動いたように頭をあげ、硬直するひな。
「はぁ~」
頭を掻きながら勉強を再開したひな。テオは、さっきの状況について考察を始めていた。
この世界では、大気中に漂う魔力がない。ほかの人間からも、まったく、魔力が感じられない。しかも、あの魔法回路だ。完全に閉じきっていて、見つけることすら困難だった。
ふと、隣にいるひなをみる。
肩のあたりで切りそろえられた髪、白い鳥の羽のような寝間着に包まれたその体と、真面目に宿題に取り組むそのまなざし
「元の世界と、変わらない」
その普遍的な魅力からは、この子の魔法回路が使われていないだなんて、信じられない。いや、むしろ、使われていなくても構わない、と思えるほどだ。
この世界の日常を、もっと知りたい そう思った。