【17】新たな日常 ~テオの世界~
「なるほどなぁ、転生しようとして、入れ替わっちゃった、ってわけねぇ」
調理台の前でヘレンがぶつぶつとしゃべっている。
「でもさ、ふつう気づくと思わない?いくらテオでも、ねぇ、スー?」
「ピィピィ!」
こたえるようにして鳴いたのは、ペットの小鳥、スー。ケイの世界で言うところの、スズメ目、それ以上はよくわからない。
「ルナもびっくりするだろうなぁ」
ヘレンは、引きこもりの小さな少女を思い浮かべる。
「大丈夫、だといいんだけど」
フライパンの中身を慣れた手つきで皿に移すヘレン。中身は・・・
「チャーハン!?」
「なんだい! 誰かいるのかい?」
「やべっ」
焦った僕は、隠れ身の魔法を解いてしまい、ヘレンの目の前に現れる。
「なんだ! ケイか! 驚かさないでくれよ、まったく」
ヘレンの顔が、怒りと笑いをミックスしたような風になる。
「でも、よかったよ。ちゃんとルナと話せたんだね」
「あれ?ヘレンさんはルナちゃんのこと知ってるんですか? 確か、ルナちゃん、最後の友達は、5000年前って・・・」
ヘレンの顔に、困った表情が追加される。
「察しのいい子は嫌いだよ、それに・・・」
ヘレナが両手を挙げて、何かを唱える。
「バンッ」
小さな爆発音のあと、空間が少し明るさを取り戻す。
「あんまりあの子を舐めないほうがいいよ。あれは、今も私たちのことを見てたんだからね」
「この世界の日常、控えめに言って危なすぎる」