【12】 寓話と魔法 〜ケイの世界〜
「いってきます」
「あれ? お兄ちゃん今日は早いね、何かあるの?」
この人間、花でたとえるなら、黄色いガーベラだろう。とても親しみやすい性格をしているが、自分の趣味に対しては・・・。とにかく、彼女の名前は「ひな」という。昨日の夜、はじめて彼女と、「兄妹」としての会話をした。予想通りだったことも、予想外だったことも、たくさんあったが、それはまた別の機会に記しておこうと思う。
「森、に行ってくる」
「森!? 学校は!」
彼女の目の大きさが面積比にして3倍ほどになる。
はて、そんなに「学校」は重要なのだろうか・・・。
ともかく、ヘレナとの約束の地に転移する。先日、ヘレナの魔力は奪ってしまったので、まずはヘレナの家だ。
「遅い! 何やってたの!」
足をじたばた、地団駄を踏んでいるようにしか見えない。そんなに悔しいことでもあったのだろうか。
しかしこれもいつものことだ。あったのは二回目のはずなのに、なぜか懐かしい。
「それで、どこへ行くんだ」
「ヨーロッパの方よ」
ヨーロッパ、あそこの方には確かに森がある。
「具体的に?」
「昔のお話に、泉の女神が出てくる話があってね、その舞台がヨーロッパの方なのよ」
どうだ!と言わんばかりに腕を組むヘレナ。なるほど、それは期待できる。が、
「つまり、時空移動が必要、と?」
「いや、とりあえずは転移魔法でいいんじゃない? 私も細かいことは知らないんだけどね」
なるほど
「では、飛ぶぞ」